お役立ち情報
決められた期間内で計画的な採用をおこなうために欠かせない採用計画。
企業が安定的に経営を続けるためには、人材の確保が欠かせません。採用計画は「何のために」、「いつまでに」、「どのような人材を」、「何人」採用するかを示し、採用活動を計画的におこなううえで重要です。
本記事では採用計画の必要性の解説や、立案にあたっての9つのステップなどを解説します。
目次
採用計画とは
採用計画とは、採用活動の指標となる計画を指します。
内容は「何のために」、「いつまでに」、「どのような人材を」、「何人」採用するかといった全体像に加えて、募集方法、選考フロー、採用基準といったプロセスも含みます。
採用計画は採用活動の設計図と言えるでしょう。
採用は企業の事業戦略を実現する手段のひとつのため、採用計画は事業戦略の方向性に合致していることが重要です。
採用計画が必要な理由
ここでは採用活動をおこなううえで、採用計画がなぜ必要なのかを解説します。
1. 関係者との連携をスムーズにおこなうため
採用活動をスムーズに進めるためには、採用担当者だけでなく、面接官や現場社員との連携が必要です。
採用計画を立てておくことで、「いつ」、「だれが」、「何をするか」が明確になり、関係者間で共通の認識をもて、連携がスムーズになります。
あらかじめ計画として共有されていれば、関係者間で採用活動にまつわるやり取りも削減できるでしょう。
2. 採用活動の課題を把握しやすくするため
採用計画があることによって、採用計画と実態に齟齬が出た際に、「どこがうまくいっていないのか」、「どのような課題があるのか」を把握しやすくなります。
たとえば、書類選考、面接の通過率や、内定承諾率で計画よりも低い数字が出ている場合には、該当の採用フローに改善の余地があるかもしれません。
改善を繰り返すことで、採用活動全体の質向上が期待できます。
採用計画を立てる前の準備
採用計画を立てる前に、情報収集をおこなうことで採用計画の実効性をより高めることができます。ここではあらかじめ把握しておくべき情報を紹介します。
1. 採用市況、トレンドを把握する
採用市況は日々変化をしています。最新の採用市況や採用のトレンド、求職者の傾向といった客観的な情報を把握し、採用計画に反映することで実効性を高められます。
採用市況や求職者の動向を把握することで、実態に即した計画が立てられたり、トレンドの採用手法や新たな知見を得たりでき、求職者に効果的なアプローチが見込めます。
最新の採用市況の把握には、人材紹介会社や求人媒体などの会社がおこなっている調査データやアンケートを参照するのが有効です。
2. 競合他社の募集状況を把握する
他社と差別化を図るためには競合他社の洗い出しが必要です。
売り手市場の近年、求職者は多くの求人から応募するかどうか、選考に進むかどうかの判断をおこなっています。そのため、求職者に自社を選んでもらうためには、他社との差別化を図り、自社の魅力を訴求することがポイントです。
競合となる企業とは、同業の他社はもちろんですが、自社が求める人材を同じくターゲットとしている企業も含み、これを採用競合と呼びます。
どの企業が自社にとって採用競合となるのかは、下記の方法を参考に情報収集をし、状況を把握するとよいでしょう。
2-1. 社員にヒアリングする
中途で入社した社員に選考時についてヒアリングをするのがおすすめです。
たとえば、転職活動時に受けていた企業や応募時に重要視したポイント、自社への入社を決めた理由などをヒアリングすることで採用競合の絞り込みに役立ちます。
2-2. 外部のパートナーに相談する
外部のパートナーに相談してみるのも選択肢の一つです。
採用媒体や人材紹介会社の担当者は採用に関する知見を持っており、自社の採用競合がどの企業になるのか、求職者が自社と同時に応募するのはどの企業か、といった情報を把握している可能性があります。
2-3. 口コミサイトを参照する
口コミサイトでは現職者や退職者、応募を検討している人材の情報が確認できます。
自社が求める人材や、それに近しい人材がエントリーを検討している理由や入社の決め手、入社前後のギャップなどを確認し、採用競合の情報を把握しましょう。
採用計画を立案する際の9つのステップ
ここでは採用計画を立案する際の9つのステップを紹介します。
1. 事業戦略を把握する
採用計画を立てる際は、事業戦略を把握し、「何のため」の採用なのかを確認しましょう。
採用活動は、企業の事業戦略を実現するための一つの手段です。そのため、採用計画も事業戦略が目指す方向性と合っていなければいけません。
事業戦略を把握し、それをもとに「どのようなスキルをもった人材が必要か」、「その人材をいつまでに何人採用すべきか」を考えていきましょう。
2. 現場のニーズを把握する
社員が入社後に期待していた活躍ができなかったり、早期の離職につながってしまったりすると、大きな損失となります。
このようなことにならないためには、現場のニーズを把握して採用計画を立てることが重要です。
採用計画は事業戦略に合致していることが前提ですが、入社した社員が現場で働く以上、現場のニーズを反映することも必要です。現場の担当者に採用計画を確認してもらい、現場とのニーズに齟齬がないかをすり合わせましょう。
3. 人材要件を設定する
採用計画を立てるうえで、人材要件の設定も重要なステップのひとつです。
人材要件とは、自社が求める人材を言語化したものです。項目としては、募集職種において業務遂行に必要なスキル、自社にマッチした人柄や志向性などが挙げられます。
人材要件を設定することで、求職者へ自社の魅力を訴求しやすくなり、採用ミスマッチの抑制につながります。また、適した採用ツールの選定にもつながり、自社が求める人材へアプローチにも役立ちます。
人材要件の項目の洗い出しにあたっては、下記を参考に整理してみましょう。
- 能力(学力、思考力)
- スキル(技術、知識、資格)
- 経験(企画、実務、マネジメント)
- パーソナリティ(志向性、価値観、性格)
- 属性(性別、年齢、居住地域)
項目を洗い出したら、「MUST条件」「WANT条件」を用いて項目ごとに優先順位を設定します。
MUST条件とは:必須条件。業務に欠かせない、絶対に外せない条件
WANT条件とは:歓迎条件。できればあったほうがよい条件
優先順位をつけることで、募集が集まらなければ要件を緩和したり、応募者に自社が求める人材とのズレがあれば要件を見直したりすることで、応募の数と質の調整がしやすくなります。
人材要件の設定方法については、下記の記事も参考にしてみてください。
参考:採用ターゲット設定の重要性、設定にあたってのステップやポイントを解説
4. 採用人数を算出する
事業戦略をもとに、必要な採用人数を洗い出します。算出方法はいくつかありますが、事業戦略によって最適な算出方法は異なります。
ここでは代表的な2つの算出方法を紹介します。
マクロ的算定方法(トップダウン式)
マクロ的算定方法とは、事業計画に基づいて採用予算を算出し、採用人数を決める方法です。売上高、労働分配率や損益分岐点などから人件費を算出し、採用人数を決めます。
マクロ的算定方法は最初に決めた予算に合わせて採用活動をおこなうため、予算内で採用を進められる点が特徴です。一方で予算を気にしすぎるあまり、必要な人数を確保できなかったという事態になるリスクもあります。
予算内に収めることだけでなく、現場の実態に即した採用活動ができているかといった視点をもつことが重要です。
ミクロ的算定方法(ボトムアップ式)
各部署から必要となる人数を報告してもらい、現場の情報をもとに採用人数を算出する方法です。
実際の業務に合わせて必要な人数を決めるため、実態に即した採用人数の計画が立てられます。
しかし、現場からの要望すべてに応えようとすると、必要な人数が増えてしまいがちな点に注意が必要です。採用予算を超過してしまう可能性もあるため、必要な人数を確保することだけでなく、採用予算とのバランスを考慮することがポイントです。
5. 採用手法・サービスを選定する
採用手法は、人材紹介、求人広告、ダイレクトリクルーティング、リファラル採用などさまざまです。さらに手法ごとの採用サービスもWebやSNSの広がりを背景に、多様化が進んでいます。
最適な採用手法は募集職種や採用予算、自社のカルチャーによって異なります。それぞれの手法の特徴を把握し、自社にとって最適な採用手法・サービスを選ぶことが重要です。
採用手法・サービスの選定には、採用のトレンドや最新の採用手法、求職者の動向も参考にしましょう。手法ごとの特徴、メリットやデメリットは下記の記事も参考にしてみてください。
参考:人材募集の方法11選!方法ごとのメリット・デメリット、ケース別の選び方を解説
また、最適な採用手法・サービス選びでお困りの場合は、採用に関して知見のある採用代行サービス(RPO)にアドバイスをもらうのもおすすめです。
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6. 採用スケジュールを策定する
事業戦略や現場のニーズ、予定採用人数が把握できたら、ゴールを設定しましょう。
採用活動のゴールは、採用した人材に自社で活躍してもらうことです。そのため、入社してオンボーディングが終わるタイミングで「何人」が入社し、活躍している状態が望ましいかをゴールとして考えましょう。
設定したゴールから逆算して、それぞれのアクションをいつ実行するか、計画を立てていきます。オンボーディングが完了するまでに必要なアクションは、下記の通りです。
- 採用計画の立案
- 募集
- 応募
- 選考
- 合否の判断
- 入社準備
- 入社・オンボーディング
採用活動全体にかかる時間については、中途採用の場合は募集から入社まで1〜3ヶ月ほどが目安です。応募や選考にかかる時間は、採用難易度や採用市況によって変動するため、余裕をもたせておくと安心です。
7. 採用基準を設定する
採用基準は、選考の通過可否を判断する重要な基準です。
人材要件を設定する際に洗い出した業務遂行に必要なスキル、人柄や志向性といった項目ごとに評価基準を設定します。
評価基準の設定は、尺度の可視化がポイントです。ルーブリックを活用することで、面接官ごとの選考通過基準のバラつきを抑え、選考の質を担保できます。
ルーブリックは、「どのレベルを満たしていればよいか」を数字で定義する方法が一般的です。各項目に対し【(不足)1・2・3(満たしている)】といったレベルを明記し、評価をおこないます。
項目の具体例として下記が挙げられます。
- チームワークやマネジメント力
1:誠実なコミュニケーションがとれる
2:傾聴・共感の姿勢があり、場の雰囲気を良くできる
3:相手に気づきを促し、共通の目的を見いだせる
- 主体性
1:これまでの自身の取り組みを伝えられる
2:これまでのコミットメントに対して振り返り、独自の視点や解釈が持てている
3:これまで培った能力・経験を自身で分析し、自社で再現するための意欲が見られる
採用基準の設定方法は、下記の記事も参考にしてみてください。
8.選考方法を決める
採用基準が決まったら、選考方法を決めていきましょう。
選考方法には、面接の他、書類選考や適性検査などさまざまな方法があります。採用可否を判断するために、選考の各段階で「だれが」、「何を」、「どのように」判断するのかを整理し、選考の方法や面接での質問項目を決定していきます。
選考通過の連絡や内定通知に時間がかかりすぎると、応募者の選考辞退のリスクを高めてしまいます。スムーズに合否の判断をおこない、選考全体のスピードを担保することも重要です。
各段階で判断する項目を整理し、面接の回数を適正化したり、書類選考や適性検査の実施を検討したりして、採用基準の抜け漏れをなくし、スピード感をもって選考をおこないましょう。
9.内定後から入社後のフォロー
採用計画通りに採用が進んでも、内定辞退や早期離職につながってしまうと成功とは言えません。そうした事態を防ぐために、内定後から入社後までのフォローは欠かせません。
内定から入社までの期間は、たとえば、内定者と適宜コミュニケーションを取って状況を把握したり、社内の情報や事業や組織に関する情報を提供したりして、自社理解を深めてもらうための働きかけが有効です。
また、早期離職を防ぐためには、入社者がパフォーマンスを発揮できるよう職場に慣れてもらったり、業務を把握してもらったりするための工夫が必要です。
オリエンテーションの実施によって、事業や組織への理解を深めてもらったり、1on1の実施によって適宜状況を把握し、何か懸念がある場合にはフォローをおこなったりといった対応をしましょう。
内定後、入社後のフォローについてより詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてみてください。
参考:採用ミスマッチの影響と原因。選考時と入社後にとるべき対策を解説
採用の成功に向けて、効果的な採用計画を立てましょう
採用活動を効率的に進め、採用活動全体の質を上げるために採用計画の策定は重要です。
採用計画によって採用活動全体が可視化され、関係者とのコミュニケーションを円滑に進められるだけでなく、抱えている課題を把握でき、改善につなげることができます。
自社や事業の成長に向けて、事業戦略を進めていくためには人員の確保が欠かせません。採用は人員確保に向けた大切な取り組みだからこそ、採用計画を立てて計画的に進めましょう。
本記事で解説したステップを参考に採用計画を立てて、採用活動を成功につなげてください。
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