採用お役立ち情報
カムバック(アルムナイ)制度とは?ベンチャーにとってのメリットや導入のポイント

一度退職した社員を再度雇用する「カムバック(アルムナイ)制度」。
海外の企業をはじめとして導入されている制度ですが、国内ではまだ実施している企業は多くないようです。
カムバック(アルムナイ)制度とはどのような制度でしょうか。また、導入することでどのようなメリットがあるのでしょうか。
本記事では、カムバック(アルムナイ)制度の概要やメリット・デメリット、導入のポイントなどを解説します。
目次
カムバック(アルムナイ)制度とは?
「alumni(アルムナイ)」とは、「卒業生・同窓生」を意味する英語です。企業においては「退職した社員」を指します。
退職者を再度雇用するために、数年後も自社に戻ってこられる状態を整えておく制度を「アルムナイ制度」と呼び、「カムバック制度」も同じ意味で使用されます。
退職者は、他社に転職したり起業したりするなかで、さまざまな経験や知識を蓄積しています。
それらの豊富な知見を自社で生かしてもらえる点が、カムバック(アルムナイ)制度の大きな利点です。
また、育児や介護、配偶者の転勤などの事情でやむを得ず一度退職した社員が、落ち着いたタイミングで自社に戻り、キャリアを再形成できる点もカムバック(アルムナイ)制度の特徴です。
カムバック(アルムナイ)制度が注目される3つの背景
人材流動性の高まりとともに、企業と退職者の新たな関係構築が求められるようになっています。以下では、カムバック(アルムナイ)制度が注目を集める背景を3つの観点から解説します。
働き方の多様化
終身雇用から転職を前提としたキャリア設計へと価値観が変化し、働き方の選択肢も広がってきました。副業やフリーランスなど多様な働き方が一般化する中で、一度退職した企業に再び戻るというという選択肢もキャリアの一環として自然に受け入れられるようになっています。
キャリアの中で得た経験やスキルを持ち帰る形で復帰することは、企業にとっても有益です。カムバック(アルムナイ)制度は、こうした変化を前提にした柔軟な人材戦略として評価が高まりつつあります。
少子高齢化と労働力不足
人材確保が困難化している背景には、少子高齢化による生産年齢人口の減少も挙げられるでしょう。総務省の統計によれば、15〜64歳の人口は1995年をピークに減少傾向が続いており、2050年には5,275万人にまで落ち込むと予測されています。
この予測は、2021年と比較して約29.2%もの大幅な減少を意味しています。人口構造の変化に加えて、経済の長期停滞なども影響し、採用市場では引き続き売り手市場が続いています。
結果、自社が望む人材の採用が一層難しくなっており、社風や業務内容に精通した元社員に再び声をかける動きが強まりつつあります。
中途採用難易度の上昇
即戦力人材の獲得競争が激化し、特にスタートアップやベンチャー企業にとっては中途採用が容易ではなくなってきました。採用コストの増加やミスマッチのリスクを避けるために、既に自社文化を理解している元社員の再雇用が注目されています。
採用ハードルを下げつつ、短期間で戦力化できる点も企業側の大きなメリットです。こうした背景から、再入社を見据えた制度整備の重要性が企業の人材戦略において高まっています。
カムバック(アルムナイ)制度が適用される範囲
カムバック(アルムナイ)制度の対象範囲は企業や自治体によって異なりますが、近年はより柔軟な運用が広がっています。多くの組織では、結婚・出産・介護などやむを得ない理由で離職した人材が主な対象とされています。また一定の勤続年数や退職からの経過年数を適用要件とするケースも多く見られます。
転職やキャリアアップによる離職者にも門戸を開く企業も増えており、選考基準や対象職種を広げる傾向も見られます。また、再雇用時の年齢制限や待遇の明確化を通じて、公平な採用を意識するケースも増えてきました。
柔軟な制度設計により、多様な人材が再び活躍できる環境が整いつつあります。
カムバック(アルムナイ)制度の現状と課題
制度の導入が進む一方で、現場では運用上の課題も徐々に明らかになってきています。たとえば、再雇用時の処遇や評価基準が曖昧なままだと、既存社員との間に不公平感が生じかねません。
また、制度利用者に対する職場の理解が十分でない場合、職場での孤立や摩擦を招くリスクも指摘されています。
カムバック(アルムナイ)制度はあくまで再雇用の機会を提供するものであり、必ずしも再入社が保証されるわけではありません。現場では、透明性の確保や適正な選考プロセスの構築が求められるでしょう。今後は制度の浸透に伴い、利用者・既存社員双方にとって納得感のある運用体制の整備が一層重要になるでしょう。
カムバック(アルムナイ)制度のメリット
カムバック(アルムナイ)制度による元社員の再雇用には多くの利点があることから、人材戦略において注目される選択肢となっています。以下では、導入企業が感じているカムバック(アルムナイ)制度の主なメリットを5つの観点から解説します。
即戦力を採用できる
即戦力として早期に活躍できる人材を確保しやすくなるのが、カムバック(アルムナイ)制度の大きなメリットです。
元社員は業務の進め方や組織文化を理解しているため、現場への適応に時間がかかりません。過去の経験に加え、他社で得たスキルも活用できるため、配属直後から成果を出せる可能性が高く、即戦力としての活躍が見込めます。
再雇用にあたりスキルギャップが少なく、マネジメント側も安心して業務を任せられるのが魅力です。
採用・育成のコストを削減できる
採用活動や初期教育にかかるコストを抑えられる点も、カムバック(アルムナイ)制度のメリットです。
求人広告や選考にかかる費用だけでなく、新人研修やオンボーディングに必要な時間や人員も軽減できます。再雇用する側も業務習熟を見込めるため、教育投資の回収が早く、効率的な人材活用につながります。
結果として、限られた採用リソースを最大限に活用する仕組みとして機能します。
企業イメージの向上になる
カムバック(アルムナイ)制度は、柔軟で温かみのある企業風土を対外的にアピールできる点も評価されています。
一度退職した人に対しても再びチャンスを提供する姿勢は、働き方の多様化が進む現代において好印象を与えやすくなります。制度を広報や採用活動に活用すれば、応募者からの信頼を得やすくなり、ブランディングの強化にも寄与するでしょう。
ミスマッチが発生しづらい
再雇用により、採用後の齟齬や早期離職のリスクを抑えられる点がカムバック(アルムナイ)制度の特徴です。
既に組織に在籍していた経験があるため、社内の雰囲気や業務の進め方を理解したうえで復帰します。そのため、本人も企業側も期待値のズレが少なく、定着率の向上が期待できます。
人材の安定運用を重視する企業にとって、安心して採用できる仕組みとして有効です。
社内に新しい知見や価値観を取り入れられる
外部で得たスキルや視点を持ち帰ってもらえる点が、カムバック(アルムナイ)制度の隠れた強みです。
他企業で経験を積んだ元社員は、これまでにないアプローチや業界情報を吸収している可能性があります。再雇用を通じて元社員の知見が自社に還元されることで、業務改善や新しい企画の創出につながることもあるでしょう。
ベンチャーでのカムバック(アルムナイ)制度のメリット
ベンチャーは大企業に比べて、採用にかける費用や人事担当者のリソースなどが十分でないことも多いものです。
カムバック(アルムナイ)制度なら、入社後のミスマッチが生まれにくく、即戦力になりやすいので、採用コストに余裕が少ないベンチャーが導入するメリットは大きいといえるでしょう。
また、ベンチャーは大企業に比べて知名度が低いため、求人広告を出しても大企業に埋もれてしまいやすいでしょう。
その点、過去に接点のあるアルムナイならアプローチしやすいといえます。
自社にアルムナイ制度の成功事例が増えれば、「また戻りたくなる会社」として、魅力や働きやすさをアピールできます。
関連記事
カムバック(アルムナイ)制度は退職者側にもメリットがある
退職者側のメリットとしては、「入社したが、仕事内容や職場環境がイメージと異なっていた」といったミスマッチが起こる可能性が低いため、安心して入社できる点があります。
カムバック(アルムナイ)制度があることで、家庭の事情などやむを得ない理由で退職する際にも「落ち着いたらまたキャリアを継続できる」という点で安心感につながり、家庭との両立や将来のキャリアビジョンを描きやすいというメリットがあります。
カムバック(アルムナイ)制度のデメリット
一方で、カムバック(アルムナイ)制度にはデメリットもあります。
制度構築のための手間がかかる
アルムナイ制度を成功させるためには、退職者とのつながりを保つために、定期的にコンタクトを取ったり、イベントを開催したり、専用サイトで情報発信したりといった取り組みを行わなければなりません。また、退職者がまた自社に戻ってきたくなるように、自社の魅力づけや、社内理解の促進も欠かせません。
もちろん、元社員であれば無条件で再雇用するわけではありませんので、カムバック(アルムナイ)制度の対象者や採用フロー、労働条件などをしっかりと設定し、制度を構築する必要があります。
このように、カムバック(アルムナイ)制度を導入して成功させるためには、制度の構築や、対象者とコンタクトを取り続ける手間がかかります。
情報漏洩のリスクがある
一度辞めたアルムナイは、もともと自社にいた人材ではあるもの、今現在はあくまでも社外の人間です。カムバック(アルムナイ)制度では、アルムナイが戻ってくるための情報発信は重要ですが、社外秘の情報は必ず把握しておき、情報漏洩を起こさないように注意しましょう。
例えば社員の退職予定や、現在の事業内容、今後の事業プランなどが考えられます。
特に相手が元社員で顔見知りだと、つい気軽に情報を共有してしまいがちですが、今はまだ外の人間であることを意識しましょう。
従業員の不満につながる
カムバック(アルムナイ)制度によって再雇用された元社員への対応によって、既存社員のモチベーションが下がる懸念があります。
待遇面やポジションでの優遇があった場合、「なぜ一度退職した人が優遇されるのか」という不公平感を抱かれやすくなります。また、制度の意義や選考基準が社内に共有されていないと、現場に混乱を招くおそれもあります。
そのため、カムバック(アルムナイ)制度の導入時には丁寧な説明と配慮が必要です。
退職に対するハードルが下がりやすくなる
カムバック(アルムナイ)制度は、一度退職した会社に戻ることができるものであるため、「いつでも戻れる」という安心感が、安易な退職を助長する可能性も否定できません。
特にカムバック(アルムナイ)制度の存在を知った若手社員が、退職を軽く考えてしまうリスクが生じます。復帰を前提としたキャリア設計が常態化すれば、組織全体の安定性や一体感が損なわれる恐れもあります。
制度の主旨や位置づけを明確にし、誤解を招かない運用が求められるでしょう。
スキルギャップの可能性がある
再雇用後に、業務水準や期待とのギャップが判明することもあります。
退職から一定の期間が経過していると、社内ツールや業務フローが変化しており、復帰者が環境に適応できないケースもあります。また、外部での経験が必ずしも自社にフィットするとは限りません。
再雇用に際しては、スキルや適性の確認を丁寧に行うことが重要です。
カムバック(アルムナイ)制度の導入手順
カムバック(アルムナイ)制度の導入手順は、以下を参考にしてください。
導入ステップ | 具体的な内容 |
---|---|
1. 対象者の範囲を定める | 退職理由や勤続年数、退職後の経過年数などの要件を設定する |
2. 再雇用後の労働条件を決定する | 雇用形態・職位・給与・勤務形態・試用期間などを明文化する |
3. 就業規則へ制度を明記する | 制度の概要・対象者・手続き方法などを就業規則に記載する |
4. 制度の内容を社内で周知する | 従業員への説明会や文書配布などで制度の認知度を高める |
5. 復職前後のサポート体制を整備する | 面談・研修・相談窓口の設置など復職を支える仕組みを整える |
アルムナイネットワーク導入のポイント
カムバック(アルムナイ)制度では、「アルムナイネットワーク」とよばれる、アルムナイ専用のコミュニティを導入することが多いです。
ここからは、アルムナイネットワークを導入するポイントを解説します。
退職者と既存社員の情報交換の場を作る
アルムナイネットワークの目的は、退職者が現在の自社の現状を知って、「また戻りたい」と思えることです。
退職者が在籍していた当時と現在では、自社の制度や業務内容、働き方などが変化しているかもしれません。再雇用後のミスマッチを防ぐためにも、現在の自社の状況を、伝えられる範囲で発信することが大切です。
退職者としても、自分が退職した後の今の自社の現状は気になるもの。一方で既存社員は、退職者が他社で経験したことや新しいスキルなどについて気になっているものです。そこで、退職者と既存社員がお互いにコミュニケーションをとり、情報交換できる場にできるとよいでしょう。
制度の対象者を絞る
カムバック(アルムナイ)制度では、自社を退職した際の理由や、退職してからの期間などを踏まえて、再雇用の対象者を絞る必要があります。
例えば、「他の会社でもっと自分の可能性を広げたいと思った」「家庭の事情で仕方なかった」といった理由で退職した人は、「機会があればまた戻りたい」と感じている場合がありますので、カムバック(アルムナイ)制度の対象になり得るでしょう。
しかし、「社風が合わなかった」「働き方が合わなかった」といった理由で退職した社員を再度雇用したとしても、また同じ理由で退職してしまう可能性が高いでしょう。そもそも、自社のカルチャーや働き方を大きく変えられない場合、そのような元社員に対して、自社を魅力づけることは難しいため、アルムナイとして適していません。
このように、退職理由も考慮して対象者を絞っていくことが大切です。加えて、再雇用にあたって「元のポジションに戻るのか、新たなポジションを用意するのか」「給与は以前と同じなのか」といった条件面も定めておくことが重要です。
企業・退職者ともにメリットの多いカムバック(アルムナイ)制度
一度退職しても戻りやすい会社にすることは、退職者だけではなく企業にとってもメリットが多く、自社の魅力づくりにもつながります。
ベンチャー・成長企業向け採用代行の「まるごと人事」は、候補者ごとにカスタマイズした丁寧なオペレーションに定評があります。
こちらもぜひチェックしてください。
年間2,086名以上の内定実績を持つ採用のプロフェッショナルが
貴社に必要な人材を最短5日で集客します
まるごと人事なら、貴社の採用課題をお伺いした上で、
最適なご支援内容を一緒に検討させていただきます。

関連記事
CATEGORYカテゴリ
TAGタグ
関連記事

「Green(グリーン)」で ダイレクトリクルーティングを成功! 使い方や特徴を紹介
- 採用媒体・チャネル

ダイレクトリクルーティングの費用とは?料金形態と平均費用、導入時のポイントを解説
- 採用媒体・チャネル
- スカウト

スタクラ(旧Amateras)の使い方・特徴・メリット・注意点を解説
- 採用媒体・チャネル

「Forkwell Jobs」の使い方を紹介! エンジニア特化のスカウト媒体の特徴を解説
- 採用媒体・チャネル

ミドルの転職の使い方・特徴・メリット・注意点を解説
- 採用媒体・チャネル

【第1弾】スタートアップ採用ブック:優秀な人材を獲得するための完全ガイド(165ページ)解説
- 面接・面談
- 採用企画
- 採用媒体・チャネル
- 採用広報