お役立ち情報
売り手市場の近年、優秀な人材を確保するために採用力の強化が求められています。採用力の強化には、自社の採用課題を把握し、適切な対応策をおこなうことが重要です。
しかし、「応募が集まらない」、「選考の通過率が低い」といった課題への対応策がわからない場合や、そもそもの課題自体が見つけられない場合など、企業によっても悩みもさまざまでしょう。
本記事では採用課題の見つけ方や、ケース別の課題とその対応方法を紹介します。
目次
採用課題とは
採用課題とは、応募が集まらなかったり、選考辞退が多かったりなど、採用目標に対して採用活動がうまくいかない現状とのギャップを指します。
ギャップを解消し、採用活動を成功させるには、選考の「どのステップ」に問題があり、「なぜ」うまくいかないのかという課題を把握し、適切に対策をおこなうことが重要です。
採用市場の動向と採用課題
労働人口の減少によって売り手市場が続いています。優秀な人材確保に向けた企業間の競争はますます熾烈になると言えるでしょう。
とくにエンジニアやIT人材へのニーズは高く、2019年に経済産業省が発表した『IT人材需給に関する調査』によると、2030年には約44.9 万人のIT人材が不足すると言われており、優秀なIT人材確保の争奪戦は激化が予想されます。
自社が求める人材の採用には、採用力の強化が求められていくでしょう。採用力を強化するためにも自社が抱えている採用課題の把握し、対策と改善を続けていくことが必要です。
採用課題の見つけ方
採用活動がうまくいっていない場合、はじめに「選考のどのステップで課題が発生しているのか」を把握しましょう。
課題の把握には、母集団形成から選考、内定、入社に至るまで、採用フローにおける各ステップの「歩留まり率」を算出することが重要です。
歩留まり率とは、選考において次のステップに進んだ人数の割合を指します。
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(計算式)
「選考通過数」÷「選考対象数」×100=「歩留まり率(%)」
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歩留まり率の具体的な例としては、書類通過率、面接通過率、内定率や内定承諾率などが挙げられます。
それぞれの歩留まりは下記で算出できます。
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- 書類通過率:書類通過者数 ÷ 応募者数 × 100
- 面接通過率:面接通過者数 ÷ 面接者数 × 100
- 内定率:内定者数 ÷ 面接者数 × 100
- 内定承諾率:内定承諾者数 ÷ 内定者数 × 100
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それぞれの歩留まり率を算出し、特定の数値が想定より低いステップには課題を抱えている場合があります。
たとえば、下記の場合では二次面接の通過率が低いため、一次面接、あるいは二次面接において課題がある、といった仮説が立てられます。
仮説が立てられたら、課題の分析と改善策を検討していきます。
【ケース別】中途採用の課題と対応方法
ここでは中途採用で起こりがちな採用課題とその対応方法をケース別に解説していきます。
1. 母集団形成:応募数が少ない
求人を出しても応募なかったり、極端に少なかったりすると、選考活動を実施することができないため、採用成功には母集団形成が欠かせません。
ここでは応募数が少ない場合の要因と対応方法を解説します。
1-1. 求人票・募集文で魅力が伝わっていない
募集がうまくいっていない要因として、募集文や求人票がわかりづらい、自社の魅力を適切に伝えきれていないなどの可能性があります。
応募につなげるためには、求職者が魅力的に感じ、自社で働くイメージが持てるような情報提供が重要です。
たとえば、募集文や求人票では「何をおこなっている会社か」、「どのようなメンバーがいるのか」、「どのような業務をするのか」といった情報を具体的に伝えましょう。
また、自社が求める人材に向けて、効果的に魅力を訴求するためには採用ペルソナを設定がおすすめです。
採用ペルソナを設定することで、自社が求める人材の志向性や価値観、人柄を詳細に想定でき、自社の魅力をより的確に訴求しやすくなります。
採用ペルソナについて、詳しく知りたい方は下記の記事も参考にしてください。
関連記事:採用ペルソナ設計のステップと項目、採用活動に役立てる方法を解説
1-2. 採用チャネルが適切ではない
求人を掲載しているにも関わらず応募が見込めない場合は、採用チャネルの見直しも検討しましょう。
採用チャネルには、求人広告、人材紹介、ダイレクトリクルーティングなど、さまざまな取り組みがありますが、採用チャネルが自社の求める人材に合っていないと、母集団形成につながりにくいものです。
魅力的な求人であっても、掲載した媒体に自社が求める人材が少ない場合には期待していた効果が見込めません。
たとえば、媒体にはエンジニアに特化した媒体、第二新卒・若手に特化したサービスといった特性があり、自社が求める人材に合った採用チャネルを選ぶことがポイントです。
1-3. 人材要件が厳しい
人材要件とは自社が求める人材のスキルや人柄、志向性を具体的に言語化したものです。
応募が少ない理由のひとつに、人材要件が厳しく、採用市場に該当する人材がいないケースも考えられます。
自社が求める理想の要件だけでなく、MUST条件(必須条件)、WANT条件(歓迎条件)、NEGATIVE条件(不要条件)の3つの優先順位を設け、要件をより具体的にしておきましょう。
優先順位を設けておくことで、人材要件を設定した後も応募状況、採用市場や競合他社の状況も踏まえて要件を調整していくことができます。応募数が少ない場合には、優先順位を見直し、条件を緩和することも検討しましょう。
1-4. 採用媒体をうまく活用できていない
ここでは多くの企業が活用している、求人広告、ダイレクトリクルーティング、人材紹介のそれぞれにおいて、応募が少ない場合の要因と対策を解説します。
■求人広告で応募が少ない場合
求人広告は企業の求人を求人媒体に掲載し、応募を集める方法です。
媒体に登録している幅広い求職者に対してアプローチが可能ですが、多くの企業が利用しており、自社の求人が埋もれてしまうこともあります。求職者の目に触れる機会が減ることで応募数が少なくなっている可能性があります。
応募につなげるためには、他社の求人と差別化し、求職者に興味をもってもらうことが重要です。
興味をもってもらうためには、求人票や募集文で自社ならではの魅力を端的にわかりやすく伝えましょう。オリジナルのエピソードや数字など具体的な情報や写真や図、イラストなどで視覚的に魅力を訴求するなどの工夫がポイントです。
また、多くの求職者の目に触れるよう、有料のオプションを使って掲載期間、場所やサイズを調整するのも、求人広告ならではの活用方法です。
■ダイレクトリクルーティングで応募が少ない場合
ダイレクトリクルーティングは、スカウト媒体を通じて企業が求職者に直接スカウトメールを送信し、応募を促す方法です。
応募数が少ない場合には、課題として下記が考えられます。
- スカウトメールの送信数を担保できていない
- スカウトメール文で自社の魅力が伝わっていない
ダイレクトリクルーティングで応募を促すためには、前提としてスカウトメールの送信数を担保する必要があります。適切な送信数は、必要な応募数から逆算し、返信率をもとに算出しましょう。
スカウトメールの送信数を担保できない要因としては、採用担当者のリソース不足が要因のひとつとして挙げられます。そのため、社内の体制を見直したり、採用代行サービスを活用したりするなどの対応を検討しましょう。
また、応募につなげるためには、スカウトメール文で自社の具体的な魅力や、スカウトした背景を伝えることも重要です。自社で働くとどのようなメリットがあるのか、なぜスカウトメールを送ったのかを伝えましょう。
受け取り手に納得感をもってもらう、自社を魅力的な会社だと思ってもらうことは、応募につなげるための最初のステップです。
ダイレクトリクルーティングの活用について、詳しく知りたい方は下記の記事も参考にしてみてください。
関連記事:スカウト型採用とは?ツールの選定のポイントやメリット・デメリットを解説
■人材紹介で応募が少ない場合
人材紹介は、専任の担当者が企業から求人の依頼を受け、求人内容に合った人材を紹介するサービスです。
求職者は自身で求人票を確認するほか、担当者を経由して求人の紹介を受け、応募検討する場合がほとんどなため、担当者に自社の魅力について理解してもらい、求職者に紹介してもらうことがポイントです。
そのため、担当者と良好な関係を築き、自社の魅力を理解してもらうために情報提供をおこなったり、応募者の動向をヒアリングして、求人票を改善したりするなどの対応を検討しましょう。
2. 母集団形成:求める人材からの応募が少ない
応募数を確保できても、自社が求める人材と人材要件が合わなければ採用にはつながりません。
ここでは自社が求める人材からの応募が少ない場合の要因と対応方法を紹介します。
2-1. 自社が求める人材と求人票や募集文にズレがある
自社が求める人材と、求人票や募集文に記載内容にズレがあると、求める人材からの応募も減ってしまうでしょう。
たとえば、書類選考の通過率が低いといった場合には、自社が求める人物像をあらためて洗い出し、必要な要件を追加したりなど、人材要件の見直しが必要な可能性があります。
2-2. 訴求すべき魅力にズレがある
自社が求める人物像の属性・志向性と、訴求している自社の魅力にズレが生じていることも要因のひとつです。
たとえば、第二新卒や若手を募集しているにも関わらず、採用広告の写真がベテラン社員ばかりだったり、意欲的な人材を求めているのに、募集文で福利厚生の充実を訴求していたりする場合には、自社が求める人物像と訴求すべき魅力にズレが生じていると言えるでしょう。
本来応募してほしい人材からの応募を遠ざけてしまうため、整合性をとることが重要です。
自社が求める人材の志向性と、求人票や募集文で訴求している魅力が合致しているか、あらためて確認しましょう。
3. 選考:選考辞退率が高い
応募に至ったものの選考段階で辞退されてしまうケースも少なくありません。
ここでは、選考辞退につながる要因とその対策について解説します。
3-1. 志望意欲の醸成ができていない
選考段階で志望意欲を高められず、選考辞退につながるケースです。
選考は企業が求職者を見極める場であると同時に、求職者も企業への見極めをおこなう場です。
とくに売り手市場の昨今では、求職者は複数の企業の選考を同時に受けていることが多く、他社との比較をおこなっています。
そのため、選考においては求職者に自社への魅力を伝え、志望意欲を高めてもらうことが重要です。あらかじめ自社の魅力を言語化し、選考時に伝えられるようにしておきましょう。
面接官が体系的に説明できるよう、会社説明資料や採用ピッチ資料などの活用や、採用広報記事で自社理解を深めてもらうのもよいでしょう。
3-2. 通過連絡に時間がかかっている
求職者は複数企業の選考を受けている場合が多いため、求職者への対応が遅れると、他社の選考を優先的に進めてしまい、自社の選考辞退に至る場合があります。二次選考通過の連絡を早めにおこなうことで、選考辞退のリスクを軽減できます。
求職者への対応が遅れる要因のひとつとして、採用活動へのリソース不足が挙げられます。
たとえば、リソース不足を補うために採用代行サービスに一部業務を委託したり、採用管理システム(ATS)で選考状況を把握しやすくしたりするなど、求職者への対応を迅速におこなえる体制を整えることも検討しましょう。
3-3. 面接回数が多い
面接回数が多く、選考に時間がかかることで、求職者が他社の選考を優先的に進めてしまい、選考辞退に至るケースもあります。
一般的に中途採用の面接は、3回以内が適切と言われています。面接回数が4回以上に及ぶ場合には、回数の妥当性を確認しましょう。面接と面接の間は、必然的に期間が空いてしまうため、面接回数が多いほど選考にかかる時間が長くなってしまいます。
対応策として、面接の回数を調整できないか検討する、面接と面接の間をできるだけ短くできるよう日程調整する、といった対応が必要です。
4. 選考:選考通過率が低い
選考に進んでもなかなか合格者が出ないといった課題もあります。ここでは選考通過率が低い要因と対応を解説します。
4-1. 選考基準が明確になっていない
選考の不通過が多い場合には、選考基準が適切でない可能性があります。
選考基準には「項目」と、項目ごとの到達度を計る「尺度」の2つがあります。
たとえば、人材要件で設定した必須条件以外の項目も選考基準に入れてしまっていたり、尺度の基準が高すぎたりすると通過の難易度は上がります。
項目の見直しにあたっては「必ずしも必須条件に入れるべき項目かどうか」、「必須条件以外の項目も選考基準に入れていないか」を確認しましょう。
また、尺度を適正化するためには、ルーブリックを活用するとよいでしょう。
一般的なルーブリックとは、各項目に対し【(不足)1・2・3(満たしている)】といったレベルごとの尺度で評価をおこなう方法です。項目ごとの「何を満たしていればよいか」を定義することで定量的な評価できます。
選考基準を見直した後は関係者に情報を共有し、通過率の改善につながっているかどうかを確認しましょう。選考基準の設定方法や見直し方については、下記の記事も参考にしてみてください。
4-2. 求める人物像を共有できていない
社内の関係者間で求める人物像を共有できていないことも、選考通過率を下げている要因のひとつです。
採用活動には、面接官として管理職や現場の担当者など多くの人が関わります。
関係者間で求める人物像にバラつきがあると、本来通過させるべき人材を不通過にしてしまう可能性が高まるため、求める人物像を言語化し、関係者と共有しておくことが重要です。
スキルや能力だけではなく、思考力や人間性などの定性面も含んだものにすると、より精度が上がるでしょう。
4-3. 要件が厳しい
面接官が採用市場を理解できておらず、要件が厳しくなっているケースもあります。
面接官に求める人物像を共有する際には、採用市場や競合他社の状況、採用目標や期日も合わせて共有することがポイントです。そのうえで現場担当者が求める要件とすり合わせをおこない、適切な要件になるよう調整することが重要です。
すり合わせ後も、選考を通過しない場合には、緩和できる要件はないか、基準を調整できないかなど、調整をおこないましょう。
5. 内定:内定辞退率が高い
内定を出しても求職者から内定承諾がもらえないと、採用にはつながりません。
ここでは内定辞退率が高い場合の要因と対応方法を解説します。
5-1. 第一志望になっていない
就職先として選ばれるためには内定者にとって、自社が第一志望になることが必要です。
内定者の自社への志望意欲が高まっていなければ、他社に内定を決めてしまうこともあります。
選考では自社の魅力づけだけではなく、求職者の選考状況や他社から提示されている条件、職場選びにおいて重要視するポイントをヒアリングしましょう。
求職者に、自社の検討を優位的に進めてもらえるようなアプローチを検討しましょう。
5-2. 入社への不安の払拭ができていない
内定者が抱える入社後の不安を払拭できていないことも内定辞退の要因のひとつです。
内定者は入社にあたって「期待されているパフォーマンスを発揮できるのだろうか」、「人間関係を構築できるのだろうか」などといった不安を抱えることが多いものです。
内定辞退を防ぐためには、選考を通じて自社で働くイメージをもってもらうことと、内定後のフォローが重要です。
たとえば、選考要素のない、相互理解を深めることを目的としたカジュアル面談をおこなって自社への理解を深めてもらう、一緒に働く社員と会話する機会をもうけるなどの対応が挙げられます。
また、内定者と適宜コミュニケーションをとり、入社にあたっての不安がないか、ある場合はどのような不安があるのかを明確にし、不安を払拭することが重要です。
内定者フォローについて詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてみてください。
関連記事:内定者フォローの目的や流れ、内定辞退を防ぐためのポイントを解説
5-3. 内定通知に時間がかかっている
選考の通過連絡が遅くなってしまうと選考辞退が発生するのと同様に、内定通知も時間をかけてしまうと内定辞退の可能性が高まります。
求職者が複数企業の選考を受けている場合に、先に内定を出した企業に決めてしまうこともあるため、内定通知のスピードを担保することも重要です。
こちらの要因も採用活動へのリソース不足や社内が挙げられるため、採用代行サービスや、採用管理システム(ATS)の導入など、体制を整えることを検討しましょう。
6. 入社:早期離職率が高い
入社したにも関わらず早期で離職をしてしまう場合は、下記の要因が挙げられます。
6-1. 入社前後でギャップがある
入社前のイメージと入社後の実態にズレが生じていると早期離職につながりやすくなります。
早期退職は企業にとって大きな損失です。採用コスト面での損失だけでなく、既存社員へのモチベーションにも影響を与えかねません。
ギャップが生じないよう、選考段階では自社のよい面だけでなく、事業や組織の課題といった実態を伝えて自社理解を深めてもらうことが重要です。
また、Webでの発信や面接だけでは伝えきれない、自社のカルチャーや雰囲気を理解してもらうためには、採用ピッチ資料による会社説明や、カジュアル面談の実施、一緒に働くメンバーとの面談などが有効です。
下記の記事では採用ミスマッチについて、解説をしています。より詳しく知りたい方は確認してみてください。
関連記事:採用ミスマッチの影響と原因。選考時と入社後にとるべき対策を解説
6-2. オンボーディングがうまくいっていない
入社後のフォロー体制が不十分な場合も、早期退職につながりやすいと言えます。
ほとんどの入社者は新しい環境に不安を感じています。入社後のフォローを強化することで、不安を軽減し、職場に慣れてもらうことが重要です。
たとえば、入社後にオリエンテーションや研修をおこなうことで会社や事業、組織に関する理解を深めてもらう、既存社員との懇親の場を設けることで人間関係の構築をしてもらうといった取り組みが挙げられます。
また、定期的に1on1を実施することで、入社者が抱えている不安や懸念を把握し、必要な対策を講じやすくなるため、早期離職の抑制に有効です。
採用成功に向けて、採用課題の把握と対策がポイント
本記事では採用課題の見つけ方、ケース別の課題やその対応方法について解説しました。
採用成功に向けては、「どこが、なぜうまくいっていないのか」といった課題の把握と、課題に応じた適切な対応が必要です。母集団形成から入社まで、どこに課題があるかを見つけ、対応策を立てていきましょう。
ぜひ、本記事で解説した課題の例を参考に、採用課題の解決に役立ててください。
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