採用お役立ち情報

営業やマーケティングの世界でよく用いられるKPI・KGI。人材採用においても、活動指標としてKPI・KGIを設定することは一般的になりつつあります。採用の成功率を高めるためには、KPIに基づいた応募や面接の評価が有効です。そこで今回は、採用におけるKPI・KGIの定義、目標設定、および運用方法について解説します。

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採用KPIについて
採用KPIとは
採用KPIとは、採用活動を成功に導くための具体的な数字で示す指標です。
KPIは「Key Performance Indicator」の略であり、日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。
例えば、営業組織では、売上目標とは別に、訪問件数、商談件数、新規受注件数などがKPIとして設定されることがあります。これらのKPIの進捗が順調であれば、売上目標の達成にもつながると考えられています。逆に、KPIの進捗が芳しくない場合は、売上目標の達成が困難になる可能性を示唆します。
つまり、KPIとは最終目標を達成するための中間目標と言えます。採用活動に当てはめると、最終目標である「人材の採用(入社)」を達成するための中間指標として、応募数、書類合格数、面接数などが代表的なKPIとして挙げられます。
採用におけるKPIとKGIの違い
KPIと似た言葉にKGIがありますが、こちらは「Key Goal Indicator=重要目標達成指標」を意味します。Goal(目標)を示すため、KPIはKGIを達成するための中間指標という関係性になります。採用KGIとは、一般的に「いつまでに・どのような人材を・何名採用するか」という最終的な採用目標を指します。
採用KPIを設定するメリット
採用KPIを設定する主なメリットは、以下の4つが考えられます。
1.採用の進捗をリアルタイムで把握できる
採用KPIを設定する最大のメリットの一つは、採用の進捗をリアルタイムで把握できる点です。
採用活動は複数のプロセスで構成されており、各工程における現状把握と目標達成度の確認が不可欠です。
KPIは、前述の通り「応募者数」「書類選考通過率」「面接通過率」「最終採用率」など、採用プロセスの各段階におけるパフォーマンスを数値化します。これにより、企業は採用活動の進捗状況を一目で把握し、改善点を特定しやすくなります。
また、KPIを用いて採用活動の達成度合いを可視化することで、採用戦略の見直しや、次回の採用活動への改善にもつながります。具体的なKPIに基づいた採用戦略を立てることで、採用活動をより効果的に展開することが可能となります。
2.採用における各ポジションの業務内容が明確になる
採用KPIを設定することで、採用担当者や関係者の役割が明確になるというメリットもあります。
採用活動は、企業の採用担当者だけでなく、面接官、外部の求人代理店、協力会社など、多くの関係者が連携して行うため、各々が特定の役割を担っています。KPIを設定することで、各プロセスにおける各ポジションの業務内容が明確になり、KPI達成に向けて各関係者が主体的に行動しやすくなります。
さらに、KPIを設定することで、採用活動の成果を公平に評価することが可能になります。具体的な数値に基づいた昇給などの評価制度を導入することで、採用担当者の努力が適切に評価され、モチベーション向上にもつながるでしょう。
3.採用活動の効率が上がる
採用KPIを詳細に設定することで、採用活動の効率性が向上します。KPIは採用プロセスごとのパフォーマンスを数値化するため、どのプロセスがボトルネックになっているか、また、どのプロセスが最も効率的かを客観的に把握できるからです。
例えば、書類選考の通過率が目標値を下回る場合は、応募者の質が低いか、選考基準が厳しすぎる可能性があります。この場合、「採用チャネルの変更」「応募要項の修正」「選考基準の見直し」などの改善点が明確になります。
また、面接の通過率は高いものの、内定承諾率が低い場合には、「適切なターゲット層にはリーチできているが、内定後のフォローが不十分」と推測できます。
内定承諾率を向上させるためには、「採用したい候補者には選考中から積極的に自社の魅力を伝える」「内定後は職場見学や社員面談の機会を設ける」など、入社意欲を高めるための工夫が必要です。
このように、KPIを設定することで、企業は採用活動の効率性を向上させ、より質の高い人材の採用を実現できるのです。
4.採用計画改善のきっかけになる
採用KPIを策定することで、採用計画の改善につながります。
採用KPIの進捗管理を行うことで、ボトルネックの発見と改善策の実行が可能になります。これにより、採用戦略や計画を適宜修正することができます。

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採用KPIの項目におけるポイント
採用KPIの項目における重要なポイントは、以下の通りです。
KPIより先にKGIを決める
KPIを設定する前に、まず最終目標となるKGIを設定しましょう。前述の通り、KGIも具体的な数値と期限を設定することが重要です。採用活動全体にかかる時間やコストなどを考慮して、KGIを設定しましょう。
最も重要な最終目標から逆算し、その目標を達成するために必要な要素を検討することで、一貫性のある戦略を立てることができます。
歩留まり率に基づいて評価する
次に、各採用フローにおける進捗率を示す歩留まり率を設定しましょう。歩留まり率は、「選考通過者数」÷「選考対象者数」×100で算出できます。
例えば、書類選考通過者数が10名で、書類選考の応募者数が20名だった場合、書類選考の歩留まり率は50%となります。
目標とする歩留まり率を設定する際には、各採用チャネルの特徴を分析し、反映させることで、より効率的な選考が可能になります。
また、人材紹介エージェントやOB・OG紹介を利用する場合、一般的な求人広告からの応募と比較して、応募者の志望度や企業とのマッチング度合いが高い傾向が見られます。このような特徴を持つ採用チャネルでは、書類選考の歩留まり率を高めるなどの対策が効果的です。
関連記事:https://marugotoinc.jp/blog/recruitment-issues/
人事が採用KPIを使用する際の注意点
人事担当者が採用KPIを使用する際には、以下の4点に注意が必要です。
1.自社の採用方針を明確にする
まず、自社が採用活動において重視する要素を明確にすることが最も重要です。
例えば、即戦力を求めるのか、ポテンシャルを重視して入社後の育成に注力するのか、採用人数をどの程度にするのかなど、その方針は企業の状況や目指す方向性によって異なります。
採用方針を明確にすることで、効果的な採用チャネルの選定や採用KPIの設定が可能となり、採用活動を円滑に進めやすくなります。
2.ポイントとなる採用KPIを探る
数多く存在する設定項目(指標)の中から、自社にとって最も重要な採用KPIを選定しましょう。
その際、過去の採用活動データを分析することで、より適切なKPIを設定できます。過去の採用活動で効果的だった採用チャネルや、ボトルネックとなっていた選考プロセスを分析し、採用KPIの設定に活用すると良いでしょう。
3.採用KPIの達成期限を設ける
採用KPIの効果を最大限に発揮するためには、各KPIに期限を設定することが推奨されます。「〇月までに応募者△名を達成する」といったように、時間的な制約を設けることで、採用活動全体の見通しが立てやすくなります。特に、複数の採用チャネルを利用している場合、活動が複雑になりがちですが、期限を設定することで各チャネルのスケジュールを整理しやすくなります。
また、現実的に達成可能な適切なKPIの内容と期限を設定することで、採用活動に関わる人々のモチベーション維持にもつながります。
4.採用KPIの管理と定期的な見直しを行う
採用KPIの管理と見直しも大事なポイントです。これを効率的に行うためには、ExcelなどでKPIの運用情報を管理するためのテンプレート、いわゆる「KPIシート」を作成すると良いでしょう。KPIシートに記載する項目例は、以下の通りです。
関連記事:https://marugotoinc.jp/blog/saiyosenryaku/
- 採用方針(達成を目指す具体的な目標や最終的な効果)
- KPI(採用方針達成のための中間指標)
- 基準(各KPIの達成度合いを示す基準・ベンチマーク)
- 進捗(各KPIの現在の達成状況)
- 期限(各KPIおよび採用方針の達成期限)
- 責任者(各KPIの達成責任者)
KPIの管理を適切に行うことで、採用フローの可視化や社内外のコミュニケーション円滑化などの効果が期待できます。

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採用KPIの立て方
採用KPIの立て方について、ステップごとに解説します。主に以下の4つのステップが考えられます。
1.KGIの目標設定
『いつまでに、どのような人材を、どの程度確保するのか』という採用戦略や採用計画で明確化されたものが、採用KGIに位置付けられます。例えば、『営業人材を5名採用する』などが挙げられます。
2.選考フローを整理する
採用KPIを設定する前に、選考フローを整理しましょう。過去の実績データを用いて歩留まり率を算出し、ボトルネックとなっている箇所を特定することが重要です。
より詳細に分析する場合は、書類選考や一次面接、二次面接などに分解できますが、ここでは割愛します。
3.選考フローに歩留まり率を反映させる
歩留まり率とは、各選考ステップにおける通過者の割合を示し、「選考通過者数」÷「選考対象者数」×100で算出できます。
例を挙げると、「求人広告」において、以下のように選考が進んだと仮定します。
この場合の書類選考通過率は50%、面接通過率は40%、内定承諾率は50%と算出できます。
- 書類選考通過率=書類選考通過者数÷応募者数×100
- 面接通過率=面接合格者数÷面接参加者数×100
- 内定承諾率=内定承諾者数÷内定通知者数×100
歩留まり率の目標は、前年度の実績を参考にしつつ、採用チャネルごとの特性を踏まえて設定することが重要です。
例えば、リファラル採用の候補者はマッチング度が高い傾向にあるため、書類選考通過率は80〜100%と高めに設定してもよいでしょう。
一方、誰でも応募可能な求人広告媒体の場合、リファラル採用、ダイレクトリクルーティング、人材紹介などの他の採用チャネルと比較して、書類選考通過率は低めに設定する必要があります。
4.選考フローごとにKPIツリーを構築する
KPIは、ステップ1で設定したKGIから逆算して設定します。採用チャネルごとの採用人数を決定し、ステップ3で設定した歩留まり率を用いて、採用フローに数値を当てはめていきます。
- 採用チャネル別の採用人数比率を決定する
- 採用フローに数値を当てはめる
KGIを「10人採用=内定承諾」とし、チャネル1「求人媒体」の比率を10%とした場合、求人媒体での「内定承諾者数=1人」がKPIとなります。
採用フローに、ステップ3で決定した歩留まり率を適用します。「内定承諾者数=1人」に対し、内定承諾率が50%の場合、「内定者数=2人」が必要だとわかります。
同様に、面接から応募までの各段階の人数を算出します。
設定したKPIの運用方法と採用成功のためのポイント
1.採用フローごとの数字を正しく把握する
採用フローごとの数値を正確に把握することは、採用活動を成功に導く上で非常に大切です。そのため、少なくとも四半期ごと、できれば月次で振り返りを行うようにしましょう。集計に手間がかかり、後回しになりがちですが、定期的に採用KPIを可視化することで、採用成功の確率を効果的に高めることができます。
2.KPIの進捗に合わせてアクションを実行する
定期的に採用KPIをチェックする体制を構築したら、KPIの進捗状況に合わせて具体的なアクションを実行しましょう。まずは、実績と目標の差異を詳細に分析することがポイントです。その際、「気合が足りない」といった定性的な評価ではなく、KPIを構成する各数値のどの部分にボトルネックが存在するのかを定量的に分析する必要があります。
分析が完了し、ボトルネックを特定したら、効果的な改善策を策定しましょう。例えば、以下の計算式において内定辞退率が高い場合は、内定通知後のフォローアップを強化するなど、具体的な改善策を試みることが有効です。
- 入社数=内定者数(応募者数×面接通過率)-内定辞退者数(内定者数×内定辞退率)
3.KPIの見直しを検討する
採用活動においては、KPIを定期的に見直すことも重要です。
例えば、「応募者数1,000人を目標としたが、現状の予算やスケジュールでは達成が困難」といった状況が生じた場合、KPIを見直すことで、現実的な計画への修正が可能です。「今回は採用人数を優先するため、人材要件を見直して面接通過率を向上させる」「他の募集手段を検討して応募数を確保する」など、状況に応じて柔軟に計画を調整しましょう。
ただし、KPIの達成が困難だからといって、安易に数値を変更することは避けるべきです。単なる「数字合わせ」に終始してしまうと、採用の本来の目的から逸脱する危険性があります。採用活動の目的を再確認し、目標達成のために本当に必要な施策を検討しましょう。
4.KPIの数字にこだわりすぎない
採用活動において最も大切なのは、KPIを手段として活用し、自社が設定した目標・目的を達成することです。「手段」と「目的」を混同しないように、十分に注意する必要があります。KPIの数字にこだわりすぎると、本来のゴールに対する意識が薄れてしまう可能性があります。
例えば、KPIの達成を優先するあまり、採用基準を安易に緩和し、候補者の質を低下させてしまうのは、数字に翻弄される典型的な例です。また、KPIの数値に固執しすぎるあまり、新しいアイデアやアプローチを試すことが困難になるなど、組織の柔軟性や創造性を損なうリスクも考慮する必要があります。
まとめ
採用KPIは、現代の競争が激しい人材市場において、企業の成功を左右する不可欠な戦略です。定量的な数値目標を設定することで、採用活動の現状を客観的に把握し、ボトルネックを特定して改善策を実行するPDCAサイクルを効果的に回すことができます。
この記事で紹介した情報を活用することで、企業はより戦略的かつ効率的な採用活動を展開し、求める人材の獲得に繋げることができるでしょう。採用KPIを適切に設定し、運用することで、企業はより効果的な採用活動を展開し、求める人材を確実に獲得することができます。

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