採用・労務・経理に関するお役立ち情報

2025.04.24 更新日:2025.12.12
この記事の監修者:今 啓亮

この記事の監修者:今 啓亮

採用KPI完全ガイド|設定から運用、4つのステップまで徹底解説!

営業やマーケティングの世界でよく用いられるKPI・KGI。人材採用においても、活動指標としてKPI・KGIを設定することは一般的になりつつあります。採用の成功率を高めるためには、KPIに基づいた応募や面接の評価が有効です。そこで今回は、採用におけるKPI・KGIの定義、目標設定、および運用方法について解説します。

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目次

採用KPIについて

採用KPIについて図解

採用KPIとは

採用KPIとは、採用活動を成功に導くための具体的な数字で示す指標です。

KPIは「Key Performance Indicator」の略であり、日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。

例えば、営業組織では、売上目標とは別に、訪問件数、商談件数、新規受注件数などがKPIとして設定されることがあります。これらのKPIの進捗が順調であれば、売上目標の達成にもつながると考えられています。逆に、KPIの進捗が芳しくない場合は、売上目標の達成が困難になる可能性を示唆します。

つまり、KPIとは最終目標を達成するための中間目標と言えます。採用活動に当てはめると、最終目標である「人材の採用(入社)」を達成するための中間指標として、応募数、書類合格数、面接数などが代表的なKPIとして挙げられます。

採用におけるKPIとKGIの違い

KPIと似た言葉にKGIがありますが、こちらは「Key Goal Indicator=重要目標達成指標」を意味します。Goal(目標)を示すため、KPIはKGIを達成するための中間指標という関係性になります。採用KGIとは、一般的に「いつまでに・どのような人材を・何名採用するか」という最終的な採用目標を指します。

採用KPIとKGIの連動性

採用活動を効果的に進めるには、KPIとKGIを適切に連動させる必要があります。

KGIが「最終目標」であるのに対し、KPIは「目標達成までのプロセスを測る指標」です。両者を連動させずに個別に管理すると、KPIを達成しても最終的な採用目標に到達できないという事態が発生します。

例えば、KGIを「3ヶ月で営業職5名を採用する」と設定した場合、逆算してKPIを設計します。過去の歩留まり率から「内定承諾率60%」「面接通過率40%」「書類選考通過率50%」というデータがあれば、最終的に必要な応募数を算出できます。

KGIを起点にKPIを設計し、各指標の進捗を定期的にモニタリングします。もし応募数が目標に達していなければ、採用チャネルの見直しや求人広告の改善など、早期に対策を講じられるでしょう。反対に、面接通過率が想定より低ければ、選考基準の見直しや面接官トレーニングが必要と判断できます。

採用KPIを設定する5つのメリット

採用KPIを設定するメリット図解

採用KPIを設定する主なメリットは、以下の5つが考えられます。

1.採用の進捗をリアルタイムで把握できる

採用KPIを設定する最大のメリットの一つは、採用の進捗をリアルタイムで把握できる点です。

採用活動は複数のプロセスで構成されており、各工程における現状把握と目標達成度の確認が不可欠です。

KPIは、前述の通り「応募者数」「書類選考通過率」「面接通過率」「最終採用率」など、採用プロセスの各段階におけるパフォーマンスを数値化します。これにより、企業は採用活動の進捗状況を一目で把握し、改善点を特定しやすくなります。

また、KPIを用いて採用活動の達成度合いを可視化することで、採用戦略の見直しや、次回の採用活動への改善にもつながります。具体的なKPIに基づいた採用戦略を立てることで、採用活動をより効果的に展開することが可能となります。

2.採用における各ポジションの業務内容が明確になる

採用KPIを設定することで、採用担当者や関係者の役割が明確になるというメリットもあります。

採用活動は、企業の採用担当者だけでなく、面接官、外部の求人代理店、協力会社など、多くの関係者が連携して行うため、各々が特定の役割を担っています。KPIを設定することで、各プロセスにおける各ポジションの業務内容が明確になり、KPI達成に向けて各関係者が主体的に行動しやすくなります。

さらに、KPIを設定することで、採用活動の成果を公平に評価することが可能になります。具体的な数値に基づいた昇給などの評価制度を導入することで、採用担当者の努力が適切に評価され、モチベーション向上にもつながるでしょう。

3.採用活動の効率が上がる

採用KPIを詳細に設定することで、採用活動の効率性が向上します。KPIは採用プロセスごとのパフォーマンスを数値化するため、どのプロセスがボトルネックになっているか、また、どのプロセスが最も効率的かを客観的に把握できるからです。

例えば、書類選考の通過率が目標値を下回る場合は、応募者の質が低いか、選考基準が厳しすぎる可能性があります。この場合、「採用チャネルの変更」「応募要項の修正」「選考基準の見直し」などの改善点が明確になります。

また、面接の通過率は高いものの、内定承諾率が低い場合には、「適切なターゲット層にはリーチできているが、内定後のフォローが不十分」と推測できます。

内定承諾率を向上させるためには、「採用したい候補者には選考中から積極的に自社の魅力を伝える」「内定後は職場見学や社員面談の機会を設ける」など、入社意欲を高めるための工夫が必要です。

このように、KPIを設定することで、企業は採用活動の効率性を向上させ、より質の高い人材の採用を実現できるのです。

4.採用計画改善のきっかけになる

採用KPIを策定することで、採用計画の改善につながります。

採用KPIの進捗管理を行うことで、ボトルネックの発見と改善策の実行が可能になります。これにより、採用戦略や計画を適宜修正することができます。

5.採用担当者のモチベーション向上につながる

採用KPIを設定すれば、採用担当者のモチベーション向上に大きく貢献します。

明確な数値目標があれば、担当者は自身の業務が採用全体にどう貢献しているかを具体的に理解できます。「今月は応募数を20件増やす」「書類選考通過率を5%向上させる」といった具体的な目標があれば、日々の業務に対する達成感も得やすくなるでしょう。

また、KPIによって成果が可視化されるため、努力や工夫が正当に評価される環境が整います。例えば、スカウトメールの返信率を改善した担当者や、面接設定率を大幅に向上させた担当者の貢献度が明確になり、適切な評価やフィードバックにつながるのです。

さらに、チーム全体でKPIを共有すれば、メンバー間での健全な競争意識も生まれます。「先月は応募数で目標を達成できた」「今月は面接通過率の改善に注力しよう」といった前向きな目標設定が可能になり、チーム全体の士気も向上するでしょう。

採用活動は成果が見えにくい業務ですが、KPIを通じて自身の取り組みが数値として反映されれば、担当者は自信を持って業務に取り組めるようになります。

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採用KPIの項目におけるポイント4選

採用KPIの項目におけるポイント図解

採用KPIの項目における重要なポイントは、以下の通りです。

KPIより先にKGIを決める

KPIを設定する前に、まず最終目標となるKGIを設定しましょう。前述の通り、KGIも具体的な数値と期限を設定することが重要です。採用活動全体にかかる時間やコストなどを考慮して、KGIを設定しましょう。

最も重要な最終目標から逆算し、その目標を達成するために必要な要素を検討することで、一貫性のある戦略を立てることができます。

歩留まり率に基づいて評価する

次に、各採用フローにおける進捗率を示す歩留まり率を設定しましょう。歩留まり率は、「選考通過者数」÷「選考対象者数」×100で算出できます。

例えば、書類選考通過者数が10名で、書類選考の応募者数が20名だった場合、書類選考の歩留まり率は50%となります。

目標とする歩留まり率を設定する際には、各採用チャネルの特徴を分析し、反映させることで、より効率的な選考が可能になります。

また、人材紹介エージェントやOB・OG紹介を利用する場合、一般的な求人広告からの応募と比較して、応募者の志望度や企業とのマッチング度合いが高い傾向が見られます。このような特徴を持つ採用チャネルでは、書類選考の歩留まり率を高めるなどの対策が効果的です。

SMARTの法則に沿って設定する

採用KPIを設定する際は、SMARTの法則に沿って指標を設計しましょう。

SMARTとは、以下の頭文字を取ったフレームワークです。

  • 「Specific(具体的)」
  • 「Measurable(測定可能)」
  • 「Achievable(達成可能)」
  • 「Relevant(関連性)」
  • 「Time-bound(期限)」

SMARTの法則に従えば、実効性の高いKPIを設定できます

例えば「応募数を増やす」という曖昧な目標ではなく、「3ヶ月以内に求人サイト経由の応募数を現状の月20件から月35件に増やす」と設定すれば、具体性と測定可能性が明確になります。また、過去のデータから達成可能な数値かを検証し、最終的な採用目標(KGI)との関連性も確認できるでしょう。

さらに、期限を明確にすれば、進捗管理のタイミングも自然と決まります。「今月末までに」「第2四半期終了時点で」といった具体的な期限があれば、担当者は計画的に行動しやすくなるでしょう。

重要指標に絞り込む

採用活動で測定できる指標は数多く存在しますが、すべてをKPIとして設定する必要はありません

指標を増やしすぎるとデータ管理の負担が増大し、本当に重要な数値を見落とす危険性があります。また、担当者が何を優先すべきか判断できず、採用活動の焦点がぼやけてしまうでしょう。

効果的なKPI運用のためには、自社の採用課題や目標に直結する3〜5個程度の重要指標に絞り込むべきです。例えば、応募数が不足している企業なら「応募数」と「応募率」を重点的に追跡し、内定辞退が多い企業なら「内定承諾率」と「選考期間」に注目します。

重要指標を絞り込む際は、KGI達成への影響度が高い指標改善の余地が大きい指標コントロール可能な指標という3つの観点で優先順位をつけましょう。限られたリソースを効果的に配分するためにも「選択と集中」の考え方が重要です。

人事が採用KPIを使用する際の注意点

人事が採用KPIを使用する際の注意点

人事担当者が採用KPIを使用する際には、以下の5点に注意が必要です。

1.自社の採用方針を明確にする

まず、自社が採用活動において重視する要素を明確にすることが最も重要です。

例えば、即戦力を求めるのか、ポテンシャルを重視して入社後の育成に注力するのか、採用人数をどの程度にするのかなど、その方針は企業の状況や目指す方向性によって異なります。

採用方針を明確にすることで、効果的な採用チャネルの選定や採用KPIの設定が可能となり、採用活動を円滑に進めやすくなります。

2.ポイントとなる採用KPIを探る

数多く存在する設定項目(指標)の中から、自社にとって最も重要な採用KPIを選定しましょう。

その際、過去の採用活動データを分析することで、より適切なKPIを設定できます。過去の採用活動で効果的だった採用チャネルや、ボトルネックとなっていた選考プロセスを分析し、採用KPIの設定に活用すると良いでしょう。

3.採用KPIの達成期限を設ける

採用KPIの効果を最大限に発揮するためには、各KPIに期限を設定することが推奨されます。「〇月までに応募者△名を達成する」といったように、時間的な制約を設けることで、採用活動全体の見通しが立てやすくなります。特に、複数の採用チャネルを利用している場合、活動が複雑になりがちですが、期限を設定することで各チャネルのスケジュールを整理しやすくなります。

また、現実的に達成可能な適切なKPIの内容と期限を設定することで、採用活動に関わる人々のモチベーション維持にもつながります。

4.採用KPIの管理と定期的な見直しを行う

採用KPIの管理と見直しも大事なポイントです。これを効率的に行うためには、ExcelなどでKPIの運用情報を管理するためのテンプレート、いわゆる「KPIシート」を作成すると良いでしょう。KPIシートに記載する項目例は、以下の通りです。

  • 採用方針(達成を目指す具体的な目標や最終的な効果)
  • KPI(採用方針達成のための中間指標)
  • 基準(各KPIの達成度合いを示す基準・ベンチマーク)
  • 進捗(各KPIの現在の達成状況)
  • 期限(各KPIおよび採用方針の達成期限)
  • 責任者(各KPIの達成責任者)

KPIの管理を適切に行うことで、採用フローの可視化や社内外のコミュニケーション円滑化などの効果が期待できます。

5.採用現場との認識を合わせる

採用KPIを設定する際は、人事部門だけでなく採用現場との認識を合わせる必要があります。

人事部門が独自にKPIを設定しても、実際に面接を担当する現場マネージャーや部門長が意図を理解していなければ、採用活動は効果的に機能しません。例えば人事が「面接通過率40%」というKPIを設定しても、現場が厳しすぎる基準で選考すれば目標達成は困難になるでしょう。

そのため、KPI設定の段階から現場を巻き込み、求める人材像や選考基準について丁寧にすり合わせを行いましょう。「どのようなスキルや経験を重視するか」「カルチャーフィットをどう評価するか」といった具体的な観点を共有すれば、人事と現場の認識のズレを防げます。

また、定期的に採用状況を共有する場を設け、KPIの進捗や課題について現場と対話を重ねることも重要です。「現在の面接通過率が目標を下回っている」「応募者の質に課題がある」といった情報を共有すれば、現場からも改善提案が生まれやすくなります。

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【5ステップ】採用KPIの立て方

採用KPIの立て方図解

採用KPIの立て方について、ステップごとに解説します。主に以下の5つのステップが考えられます。

1.KGIの目標設定

『いつまでに、どのような人材を、どの程度確保するのか』という採用戦略や採用計画で明確化されたものが、採用KGIに位置付けられます。例えば、『営業人材を5名採用する』などが挙げられます。

2.選考フローを整理する

採用KPIを設定する前に、選考フローを整理しましょう。過去の実績データを用いて歩留まり率を算出し、ボトルネックとなっている箇所を特定することが重要です。

より詳細に分析する場合は、書類選考や一次面接、二次面接などに分解できますが、ここでは割愛します。

3.採用チャネルごとの目標を明確化する

選考フローを整理した後は、採用チャネルごとに具体的な目標を設定しましょう。

複数の採用チャネルを活用している場合、それぞれの特性や費用対効果が異なるため、チャネルごとに適切な目標配分が必要です。

  • 求人サイト
  • 人材紹介
  • ダイレクトリクルーティング
  • リファラル採用

上記のような各チャネルから、何名ずつ採用するかを明確にします。

目標配分を決める際は、過去の実績データを参考にしましょう。前年度に「求人サイトから5名、人材紹介から3名、リファラル採用から2名」という実績があれば、比率を基準に今年度の目標を設定できます。ただし、新たに導入したチャネルや強化したいチャネルがあれば、戦略的に比率を調整する必要があるでしょう。

また、各チャネルの特性も考慮すべきです。人材紹介は採用単価が高い一方で質の高い候補者が期待でき、求人サイトは応募数を確保しやすいといった特徴があります。リファラル採用はマッチング度が高く定着率も良好な傾向にあるため、積極的に活用したいチャネルと言えます。

4.選考フローに歩留まり率を反映させる

歩留まり率とは、各選考ステップにおける通過者の割合を示し、「選考通過者数」÷「選考対象者数」×100で算出できます。

例を挙げると、「求人広告」において、以下のように選考が進んだと仮定します。

歩留まり率図解

この場合の書類選考通過率は50%、面接通過率は40%、内定承諾率は50%と算出できます。

  • 書類選考通過率=書類選考通過者数÷応募者数×100
  • 面接通過率=面接合格者数÷面接参加者数×100
  • 内定承諾率=内定承諾者数÷内定通知者数×100

歩留まり率の目標は、前年度の実績を参考にしつつ、採用チャネルごとの特性を踏まえて設定することが重要です。

例えば、リファラル採用の候補者はマッチング度が高い傾向にあるため、書類選考通過率は80〜100%と高めに設定してもよいでしょう。

一方、誰でも応募可能な求人広告媒体の場合、リファラル採用、ダイレクトリクルーティング、人材紹介などの他の採用チャネルと比較して、書類選考通過率は低めに設定する必要があります。

5.選考フローごとにKPIツリーを構築する

KPIは、ステップ1で設定したKGIから逆算して設定します。採用チャネルごとの採用人数を決定し、ステップ3で設定した歩留まり率を用いて、採用フローに数値を当てはめていきます。

  • 採用チャネル別の採用人数比率を決定する
  • KGIを「10人採用=内定承諾」とし、チャネル1「求人媒体」の比率を10%とした場合、求人媒体での「内定承諾者数=1人」がKPIとなります。

  • 採用フローに数値を当てはめる
  • 採用フローに、ステップ3で決定した歩留まり率を適用します。「内定承諾者数=1人」に対し、内定承諾率が50%の場合、「内定者数=2人」が必要だとわかります。

    同様に、面接から応募までの各段階の人数を算出します。

設定済みKPIを採用成功に活かす運用方法・ポイント

設定済みKPIを採用成功に活かす運用方法・ポイント

1.採用フローごとの数字を正しく把握する

採用フローごとの数値を正確に把握することは、採用活動を成功に導く上で非常に大切です。そのため、少なくとも四半期ごと、できれば月次で振り返りを行うようにしましょう。集計に手間がかかり、後回しになりがちですが、定期的に採用KPIを可視化することで、採用成功の確率を効果的に高めることができます。

2.KPIの進捗に合わせてアクションを実行する

定期的に採用KPIをチェックする体制を構築したら、KPIの進捗状況に合わせて具体的なアクションを実行しましょう。まずは、実績と目標の差異を詳細に分析することがポイントです。その際、「気合が足りない」といった定性的な評価ではなく、KPIを構成する各数値のどの部分にボトルネックが存在するのかを定量的に分析する必要があります。

分析が完了し、ボトルネックを特定したら、効果的な改善策を策定しましょう。例えば、以下の計算式において内定辞退率が高い場合は、内定通知後のフォローアップを強化するなど、具体的な改善策を試みることが有効です。

  • 入社数=内定者数(応募者数×面接通過率)-内定辞退者数(内定者数×内定辞退率)

3.KPIの見直しを検討する

採用活動においては、KPIを定期的に見直すことも重要です。

例えば、「応募者数1,000人を目標としたが、現状の予算やスケジュールでは達成が困難」といった状況が生じた場合、KPIを見直すことで、現実的な計画への修正が可能です。「今回は採用人数を優先するため、人材要件を見直して面接通過率を向上させる」「他の募集手段を検討して応募数を確保する」など、状況に応じて柔軟に計画を調整しましょう。

ただし、KPIの達成が困難だからといって、安易に数値を変更することは避けるべきです。単なる「数字合わせ」に終始してしまうと、採用の本来の目的から逸脱する危険性があります。採用活動の目的を再確認し、目標達成のために本当に必要な施策を検討しましょう。

4.KPIの数字にこだわりすぎない

採用活動において最も大切なのは、KPIを手段として活用し、自社が設定した目標・目的を達成することです。「手段」と「目的」を混同しないように、十分に注意する必要があります。KPIの数字にこだわりすぎると、本来のゴールに対する意識が薄れてしまう可能性があります。

例えば、KPIの達成を優先するあまり、採用基準を安易に緩和し、候補者の質を低下させてしまうのは、数字に翻弄される典型的な例です。また、KPIの数値に固執しすぎるあまり、新しいアイデアやアプローチを試すことが困難になるなど、組織の柔軟性や創造性を損なうリスクも考慮する必要があります。

採用KPI運用でよくある課題と解決策

採用KPI運用でよくある課題と解決策

採用KPIを導入しても、運用段階でさまざまな課題に直面する企業は少なくありません。ここでは、採用KPI運用における主要な課題と実践的な解決策を紹介します。

データ収集と管理の課題

採用活動におけるデータ収集と管理の不備は、KPI運用を妨げる最大の障壁となります。

多くの企業では、応募者情報がExcelや紙の履歴書、複数の採用媒体に分散しており、一元的な管理ができていません。採用担当者が各媒体から手作業でデータを集計する必要があり、膨大な時間と労力を要するだけでなく、入力ミスや集計ミスのリスクも高まります。

また、リアルタイムでの状況把握が困難なため、問題が発生しても迅速な対応ができません。

解決策としては、採用管理システム(ATS)の導入が効果的です。ATSを活用すればすべての応募者情報を一元管理でき、各選考段階の通過率や歩留まり率を自動で算出できます。

さらに、ダッシュボード機能によりKPIの進捗状況をリアルタイムで可視化できるため、データに基づいた迅速な意思決定が可能になるでしょう。初期投資は必要ですが、長期的には採用業務の効率化と精度向上により、十分な費用対効果が期待できます。

KGIと乖離したKPI設定の問題

KPIとKGIの連動性が弱いと、指標を達成しても最終目標に到達できない事態が発生します。

例えば「エンジニア10名採用」というKGIに対し「応募数100件」というKPIだけを設定した場合を考えてみましょう。応募数は達成できても、書類選考や面接の通過率が低ければ、最終的な採用目標は達成できません。

KPIが最終目標達成のプロセスを適切に反映していないため、採用活動の方向性がずれてしまうのです。また、特定のKPIばかりに注力した結果、他の重要な指標がおろそかになるケースも見られます。

主な課題となるもの問題パターンは、以下のとおりです。

  • 応募数のみを追求し、応募者の質が低下する
  • 面接実施数を重視するあまり、選考基準が曖昧になる
  • 内定数だけを見て、内定承諾率や定着率を軽視する
  • 採用スピードを優先し、人材の質が犠牲になる

KGIから逆算してKPIを設計し、各指標が最終目標達成にどう貢献するかを明確にする必要があります。定期的にKPIとKGIの関連性を検証し、乖離が見られる場合は速やかにKPIを見直しましょう。

また、複数のKPIをバランスよく設定し、一つの指標だけに偏らない運用を心がけるべきです。

短期成果への偏重リスク

採用KPIに注力するあまり、短期的な数値目標ばかりを追いかけてしまう企業が増えています。

「今月の応募数」「今期の採用人数」といった短期指標は確かに重要ですが、入社後の定着率や活躍度、長期的な採用ブランディングといった中長期的な視点を欠いてはいけません。短期的なKPI達成を優先した結果、採用基準を緩めて質の低い人材を採用してしまい、早期離職が増加するケースもあります。

また、強引なクロージングで内定承諾を得ても、入社後のミスマッチにつながれば、企業と候補者の双方にとって不幸な結果となるでしょう。

バランスの取れたKPI設計には、短期指標と中長期指標の両方を組み込む必要があります。例えば「応募数」「面接通過率」といった短期指標に加え、入社3ヶ月後の定着率」「入社1年後のパフォーマンス評価」「採用した人材の3年後の昇進率」といった中長期指標も設定しましょう。

また、採用ブランディングの効果を測る「自社認知度」「採用サイトの訪問数」「SNSでのエンゲージメント率」なども重要な指標です。短期的な成果と中長期的な成果のバランスを取りながら、持続可能な採用活動を目指すべきです。

データ分析スキル不足への対応

データを収集できても、適切に分析して改善策につなげるスキルが不足している企業は多く見られます。

採用担当者の多くは人事や労務の専門家であり、データ分析の専門的なトレーニングを受けていないケースがほとんどです。KPIの数値を眺めるだけで「なぜ目標に達しなかったのか」「どの施策が効果的だったのか」といった深い分析ができず、PDCAサイクルが回らない状況に陥ります。

また、複数のKPI間の相関関係を読み解けず、表面的な改善策しか立案できないという問題もあるでしょう。

社内でのデータ分析力向上には、段階的なアプローチが有効です。まず採用担当者向けにデータ分析の基礎研修を実施し、基本的な統計知識やExcelの活用方法を学ぶ機会を設けましょう。

次に、BIツールやダッシュボードツールを導入し、視覚的にデータを理解できる環境を整備します。グラフや図表で表現されたデータは、専門知識がなくても傾向や課題を把握しやすくなります。

さらに、外部の採用コンサルタントやデータアナリストの支援を受けるのも一つの方法です。専門家の視点から分析手法を学び、自社に合ったKPI運用の仕組みを構築できるでしょう。

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採用KPI管理を効率化するツールとシステム

採用KPI管理を効率化するツールとシステム

採用KPIを効果的に運用するには、適切なツールやシステムの活用が不可欠です。手作業でのデータ集計や管理には限界があり、リアルタイムな状況把握も困難になります。

ここでは、採用管理システムやデータ可視化ツールの特徴と、自社に最適なツールを選ぶ際のポイントを解説します。

採用管理システム(ATS)の活用

採用管理システム(ATS)は、応募者情報の一元管理からKPIの自動集計まで、採用業務全体を効率化するツールです。

複数の求人媒体や人材紹介会社からの応募を一つのプラットフォームで管理でき、選考状況の更新や面接日程の調整も簡単に行えます。応募から内定までの各段階における通過率や所要日数を自動で算出するため、手作業での集計作業が不要になるでしょう。

また、採用チャネルごとの費用対効果も可視化でき、どの媒体が最も効率的かを判断する材料となります。

さらに、レポート機能を使えば、経営層や現場への報告資料も簡単に作成できます。導入コストはかかりますが、採用担当者の工数削減と意思決定のスピード向上により、長期的には大きなリターンが期待できるでしょう。

データ可視化ツールの導入メリット

データ可視化ツールを導入すれば、複雑な採用データをグラフや図表で直感的に理解できるようになります。

数字の羅列だけでは見落としがちな傾向や課題も、視覚的に表現されれば一目で把握できます。例えば、月別の応募数推移を折れ線グラフで表示すれば、季節変動や施策の効果を簡単に確認できるでしょう。

また、採用チャネル別の費用対効果を円グラフで示せば、予算配分の最適化に役立ちます。ダッシュボード機能を活用すれば複数のKPIを一画面にまとめて表示でき、採用活動の全体像を瞬時に把握できます。

データ分析の専門知識がない担当者でも、視覚化されたデータなら容易に理解でき、改善提案もしやすくなるでしょう。さらに、チーム内での情報共有もスムーズになり、認識のズレを防げます。

ツール選定時のチェックポイント

採用管理ツールを選定する際は、自社の採用規模や課題に合った機能を持つかを慎重に見極める必要があります。

まず、既存の採用媒体や人材紹介会社との連携機能を確認しましょう。主要な求人サイトやエージェントとのデータ連携ができなければ、手作業での入力が残ってしまいます。

次に、必要なKPIを自動で集計・表示できるかをチェックします。自社が重視する指標に対応していなければ、ツールの価値は半減するでしょう。

また、操作性の良さも重要な判断基準です。複雑で使いにくいシステムは現場に定着せず、結局使われなくなってしまいます。さらに、サポート体制の充実度も確認すべきポイントです。導入時の設定支援や運用中のトラブル対応が手厚ければ、安心して活用できるでしょう。

まとめ

まとめ図解

採用KPIは、現代の競争が激しい人材市場において、企業の成功を左右する不可欠な戦略です。定量的な数値目標を設定することで、採用活動の現状を客観的に把握し、ボトルネックを特定して改善策を実行するPDCAサイクルを効果的に回すことができます。

この記事で紹介した情報を活用することで、企業はより戦略的かつ効率的な採用活動を展開し、求める人材の獲得に繋げることができるでしょう。採用KPIを適切に設定し、運用することで、企業はより効果的な採用活動を展開し、求める人材を確実に獲得することができます。

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この記事の監修者:今 啓亮
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まるごと人事として590社以上の企業の採用支援
書籍『「本当にほしい人材」が集まる中途採用の定石』好評発売中

2015年に東京でマルゴト株式会社(旧社名:株式会社ビーグローバル)を創業。
スタートアップから大手企業まで幅広く採用関連のプロジェクトに携わった後、2017年に月額制の採用代行”まるごと人事”の提供を開始。
2021年にバックオフィス代行”まるごと管理部”(労務プラン・経理プラン)も開始。
「理想のサービスと理想の職場を同時実現する」を経営理念に掲げ、全員がフルリモートで働くユニークな組織運営を行う。
2022年に本社住所を東京から札幌に移転し、自身も関東から札幌に移住。

出演イメージ

2024年11月、ABEMAの報道番組「ABEMA Prime」に
採用のプロフェッショナルとして出演。
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