採用・労務・経理に関するお役立ち情報
採用活動において、いくら自社の魅力を磨いても、求職者が「なぜ他社ではなく自社を選ぶのか」という視点が抜け落ちていれば、内定辞退や母集団不足という課題は解消されません。
採用における課題解消につながるのが「採用競合」の理解です。採用競合とは事業上のライバルとは異なり、同じターゲット人材をめぐって争う企業すべてを指します。
本記事では、採用競合の定義・調査方法・分析フレームワーク・ベンチマーク対象の決め方から差別化戦略まで、採用担当者がすぐに実践できる形で体系的に解説します。

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目次
採用競合とは

採用活動を成功に導くうえで「採用競合」という概念を正確に理解しておくことは欠かせません。自社の魅力をアピールするだけでなく、求職者が「どの企業と比較し、なぜ自社を選ぶのか」という相対的な視点を持つことが重要です。
採用競合の定義や事業競合との違い、業界を超えた競争が生じる背景、そして競合を放置した場合のリスクについて詳しく解説します。
採用競合の定義と事業競合との違い
採用競合とは、自社が採用したいターゲット人材を同じタイミングで奪い合う関係にある企業のことを指します。ビジネス上のライバル企業(事業競合)とは根本的に異なる概念であり「同じ求職者に対してオファーを競い合う相手」という、求職者視点で決まる存在です。
求職者は業界だけではなく職種・スキルを軸に転職先を探すため、事業競合と採用競合がまったく一致しないケースは珍しくありません。人事戦略において「どの企業と人材を奪い合っているか」を、事業ドメインとは切り離して考える視点が求められます。
業界を超えた採用競合が生まれる理由
業種の垣根を超えた採用競合が増加している背景には、デジタルトランスフォーメーション(DX)の急速な広がりがあります。業界を問わず、あらゆる産業がIT人材やデータ活用の専門家を必要とするようになった結果、エンジニアやデジタルマーケターをめぐる争奪戦が業界をまたいで激化しています。
加えて、リモートワークの定着が地理的な採用の垣根を大きく取り払いました。フルリモートを実現している企業であれば、地方の中堅企業が東京の上場スタートアップと同じ人材をめぐって競合するケースも珍しくありません。求職者が「業界よりも働き方や成長機会を重視する」傾向が強まったことも、業界横断の採用競合が生まれやすくなった大きな要因です。
採用競合を意識すべき市場背景
厚生労働省が公表するデータによると、令和6年度平均の有効求人倍率は1.25倍でした。近年は緩やかな低下傾向にありながらも、依然として求人数が求職者数を上回る水準が続いています。
また、求職者側の行動も大きく変化しています。新卒者のデータではありますが、マイナビの調査によると、2026年卒学生の就活における累計平均エントリー社数は28.5社と過去5年間で最多を記録しました。複数社を並行して選考し、条件や社風を比較したうえで入社先を選ぶスタイルが完全に定着しています。企業にとっては、内定を出しても他社との比較で辞退されるリスクが常につきまとう構造です。
さらに口コミサイトやSNSの普及により、求職者は企業の実態をリアルタイムで把握できるようになっています。得られる情報量が圧倒的に増えている今、採用競合を意識せず独自目線だけで採用活動を設計することは大きなリスクを伴います。市場の実態に即した競合理解は、採用担当者が持つべき視点として必須になりつつあるのです。
出典
厚生労働省|一般職業紹介状況(令和7年3月分及び令和6年度分)
マイナビ|2026年卒 大学生キャリア意向調査6月<就職活動・進路決定>
採用競合を放置するリスク
採用競合を把握せずに活動を続けることは、採用コストの増大と内定辞退率の高止まりという二重の損失を招きます。競合他社がどのような条件提示や訴求をしているか知らないまま内定を出しても、候補者から見れば「他社と比較したときに魅力が薄い企業」と映りやすく、承諾を得られないまま終わるケースが頻発しかねません。
さらに深刻なのが、採用ブランドの相対的な低下です。競合企業が自社の弱点を突くメッセージを発信している場合、何も手を打たなければ採用市場における自社の評判は静かに下がり続けます。母集団形成が年々困難になり、採用目標の未達が繰り返されると、事業計画の遂行にまで支障をきたす経営リスクへと発展する可能性もあります。

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採用競合を把握する5つのメリット

採用競合を把握することは、他社に勝つという目的だけに収まりません。自社の採用プロセス全体を客観的に見直し、根拠のある戦略へと昇華させる好機になります。感覚や属人的な判断に頼っていた採用活動が、データに基づく再現性の高い取り組みへと変わるのです。
採用競合の把握によって得られる具体的なメリットを、5つの視点から解説します。
採用市場における自社のポジションが明確になる
自社単独の視点だけで採用の訴求を考えると「成長できる環境」「働きやすい職場」といった抽象的な表現に終始しがちです。競合他社の給与水準・福利厚生・働き方・キャリアパスを横並びで比較することで「A社より給与は低いが、B社よりリモートワークの自由度が高い」「大手C社に知名度では劣るが、若手への裁量権は業界トップクラスだ」といった相対的な事実が浮かび上がるでしょう。
採用市場の中で自社がどの層の人材に対してどのような価値を提供できるポジションにいるかを把握することが、すべての採用戦略の土台となります。競合との比較があって初めて、自社の強みを具体的に言語化できるようになります。
候補者の離脱要因をつかみ先回りの対策ができる
ターゲット人材がどのような企業を併願しているかを事前に把握しておくと、選考途中の予期せぬ辞退を未然に防ぎやすくなります。例えば、自社の選考に進んでいる候補者が意思決定スピードの速い競合企業を併願していると分かっていれば、面接回数の削減や日程調整の優先化といった対応を先手で打てます。
競合が「高い基本給」を武器にしている場合には、面接の早い段階で手当の充実度や中長期の昇給率を丁寧に説明し、候補者の懸念を払拭しておく対応も有効です。競合の打ち手を知っているからこそ、プロアクティブな防衛策を講じられます。
自社の課題を構造的に把握し改善につなげられる
競合他社との比較分析は、採用担当者の努力だけではカバーしきれない根本的な人事課題を浮き彫りにする機会になります。「なぜ競合に比べて応募が集まらないのか」「なぜ最終面接で競り負けるのか」を深掘りしていくと、業界平均を下回る報酬や、時代のニーズに合っていない評価制度・福利厚生制度が原因であるケースも少なくありません。
競合のデータという客観的なエビデンスを示すと、経営層や関係部署に対して「この制度を改定しなければ採用市場で戦えない」という危機感を共有しやすくなります。採用担当者が孤軍奮闘するだけでなく、全社的な制度改革を推進する根拠として活用できます。
選考スケジュールの最適化に活かせる
優秀な人材の獲得競争では、選考スピードとタイミングが勝敗を左右する決定的な要素になります。競合他社がどのようなタイムラインで選考を進め、いつごろ内定を出しているかを把握することで、自社のスケジュール設計を戦略的に調整できるのです。
求職者は通常、すべての内定が出揃った時点で比較検討したいと考えます。競合の最終面接が終わる直前のタイミングでオファー面談を設定したり、競合の内定承諾期限に合わせて自社の回答期限を柔軟に調整したりと、候補者の心理に寄り添ったスケジューリングをすることが内定承諾率の向上につながります。
競合と直接バッティングしない採用チャネルを選べる
採用競合がどの求人媒体や採用手法をメインに活用しているかを把握すると、競合がひしめく激戦区を避けて独自の接点を開拓する戦略を立てられます。例えば資金力のある大手競合企業が大手ナビサイトへ大量の予算を投下している場合、同じ土俵で戦っても埋もれるリスクが高くなります。
競合の参入が少ないニッチな専門求人サイトを活用したり、社員のつながりを活かしたリファラル採用にリソースを集中させたりすることで、競合とぶつかることなく質の高い人材へアプローチできるでしょう。
【5ステップ】採用競合を調査する方法

採用競合を感覚や思い込みで設定すると本来戦うべき相手を見誤り、戦略全体がずれていきます。真の採用競合を特定するには、自社に蓄積されたデータと市場のリアルな声を多角的に収集し、統合するプロセスが必要です。
外部に目を向ける前に自社内から着手し、段階的に情報源を広げていく5つの調査ステップを解説します。
1. 自社の採用データを棚卸しして応募動機と離脱理由を整理する
採用競合調査の出発点は、外部ではなく自社の内部にあります。過去1〜2年分の応募者データや面接評価シートを振り返り「なぜ自社に応募してくれたのか」「なぜ途中で辞退したのか」を棚卸ししましょう。自社への応募動機と離脱理由の傾向をつかむと、次にどのような企業を調査対象にすべきかの見当がつきます。
例えば「成長環境を評価して応募したが、給与水準への不満で最終面接前に辞退した」というデータが集中している場合、給与が高く成長機会も提供している企業が採用競合として浮かび上がります。
2. 面接時に候補者へ併願先と比較軸をヒアリングする
候補者が現在まさに転職活動を行っている選考の場は、採用競合情報を収集する絶好の機会です。一次面接やカジュアル面談の中で「他にどのような業界や企業をご検討ですか」「企業選びで最も重視されている条件は何ですか」と率直に尋ねる手法が有効です。
ただし、尋問のような雰囲気にならないよう心理的安全性を確保する配慮が欠かせません。「採用活動の参考にさせていただきたいので」と目的を丁寧に伝えると、候補者も答えやすくなります。
3. 内定者・新入社員に「最後まで迷った企業」をアンケートする
内定承諾後の候補者や入社間もない新入社員は、自社と採用競合の「勝敗の分かれ目」を最もリアルに知っている情報源です。内定承諾直後や入社後のオンボーディング期間中に、アンケートや1on1インタビューを実施することを推奨します。
アンケートで聞いておくべき主な項目は、以下のとおりです。
- 最終的に比較・検討していた企業名
- 他社ではなく自社を選んだ決定的な理由
- 他社の方が優れていると感じた点・自社に不安を感じていた点
- 自社の選考体験を通じて印象に残ったこと
自社を選んでくれた人の声は、選考中の候補者よりも本音を引き出しやすいものです。自社が競合に打ち勝った具体的な強みと、ギリギリまでネックになっていた弱点を同時に把握できます。
4. 人材紹介会社・エージェントから市場情報を収集する
日々多くの求職者と面談し、複数の企業の求人を扱う転職エージェントは、採用市場のリアルタイム情報を豊富に持っています。自社を担当するエージェントに定期的なミーティングを依頼し、以下のような情報をヒアリングすることが有効です。
- 自社に応募してくる層が併願する企業の傾向
- 最近採用が好調な競合企業がどんな訴求をしているか
- 採用市場における自社の立ち位置
上記のような質問を通じて、自社内だけでは入手できない客観的な競合情報を収集できます。第三者の視点を加えることで、自社の思い込みを排除した精度の高い分析が可能になります。
5. 口コミサイトで応募理由・辞退理由の生の声を拾う
OpenWorkや転職会議などの企業口コミサイトには、求人広告には決して掲載されない候補者のリアルな声が蓄積されています。自社の分析としてはもちろん、候補者からヒアリングした併願先企業の分析にも有効です。「退職理由」「組織体制・文化」「面接・選考」といった項目をチェックしてみましょう。
特に注目すべきは、入社後数年以内に退職した社員の声や、選考体験に関する投稿です。「求人票の給与と実態が乖離していた」「リモートワーク制度が形骸化していた」といった不満は、競合の弱点を示す貴重な情報になります。
ただし、口コミサイトの情報は匿名性が高く投稿者の表現にもばらつきがあるため、あくまで大まかな傾向を把握するための材料として扱い、実際のヒアリングデータと照合しながら活用することが重要です。

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採用競合の分析で使いやすい2つのフレームワーク

収集した採用競合の情報を、戦略に落とし込むためには、情報を構造的に捉えるフレームワークの活用が有効です。感覚や思い込みで分析を進めると、課題の見落としや誤った方向への施策につながりやすくなります。
マーケティングの世界で実績を積んできた分析手法を採用活動に応用することで、複雑な情報をシンプルに可視化し、社内での共通認識を形成しやすくなるでしょう。採用競合分析において特に親和性が高く、現場でもすぐ活用できる2つのフレームワークを解説します。
3C分析|候補者ニーズ・競合の強み・自社の提供価値を整理する
3C分析とは、「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの視点から現状を客観的に把握し、戦略立案に活かすフレームワークです。採用活動においては、顧客を「求職者(候補者)」に置き換えて応用します。
採用における3C分析の観点と記入例は、以下のとおりです。
| 要素 | 分析の観点 | 記入例 |
|---|---|---|
| Customer(候補者) | ターゲット層の志向性・情報収集チャネル・転職動機・入社後への期待 | 20代中途層はリモートワークと柔軟な働き方を重視。キャリア成長を強く期待している |
| Competitor(競合) | 競合の採用手法・給与・福利厚生水準・採用ブランディング施策・選考体験 | 競合A社はスカウトに注力し、平均年収が高い。選考が2ステップで意思決定が早い |
| Company(自社) | 自社の採用課題・採用ブランド力・組織文化・制度・過去の採用実績 | エンジニア採用の母集団形成が難航。若手向け制度が手薄で訴求力に課題がある |
3C分析の最大の目的は「スイートスポット」を発見することです。候補者が強く求めており(Customerの視点)、競合他社が提供できておらず(Competitorの視点)、自社だけが提供できる価値(Companyの視点)が重なる領域を見つけ出せれば、採用ブランディングにおける最も強力なメッセージの軸になります。
まずは事実に基づいた情報を各項目に書き出し、3つの円が交差する部分を言語化する作業から始めるのが有効です。
SWOT分析|内部資源と外部環境を掛け合わせて戦略を導く
SWOT分析とは「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の4象限に情報を分類し、自社が置かれた状況を多面的に評価するフレームワークです。3C分析が外部環境を俯瞰するのに対し、SWOT分析は自社の内部資源と外部環境を掛け合わせて、具体的な打ち手を導き出すことに強みがあります。
採用活動においては、内部環境である以下を洗い出します。
| 内部環境 | 外部環境 |
|---|---|
|
|
さらに重要なのが、4つの象限を組み合わせる「クロスSWOT分析」です。「強み×機会」では攻めの施策を、「弱み×機会」では改善施策を、「強み×脅威」では守りの差別化を、「弱み×脅威」では損失を最小化する対策を導き出します。
3C分析で集めた事実情報をSWOT分析で解釈することで、分析が戦略の方向性を持った実行計画へと昇華されます。
採用競合に対するベンチマーク企業の決め方

競合調査で情報を集めても、分析対象となる企業の選び方を誤ると、戦略全体がずれていきます。自社の都合や思い込みではなく、採用市場の実態に基づいてベンチマーク先を絞り込むことが重要です。
候補者の行動データを起点に据え、優先順位を整理しながらベンチマーク先を決める方法を解説します。
「候補者の併願先」を起点にリストアップ・分類・整理する
ベンチマーク企業の選定で最も確実な出発点は、面接ヒアリングや内定者アンケートで得た「実際の併願先リスト」です。経営陣が想定しているライバルと、候補者が実際に比較している企業が一致しないケースは多くあります。直近1年間で候補者の口から挙がった企業名を採用ポジションごとにリスト化し、出現頻度の高い企業を特定しましょう。採用ポジションごとに候補者の併願先をリストアップしたあとは、それらの企業を、業界・規模・地域の3軸で整理します。採用ポジションとは異なる職種経験者をターゲットにしている場合や、異なる職種を併願している候補者が多い場合には、職種軸を追加して整理するのもよいでしょう。
ベンチマーク先は5〜10社に絞り比較項目を統一する
分析対象は5社から最大10社程度に絞り込みましょう。対象が多すぎると情報収集と分析に工数がかかりすぎ、採用活動への落とし込みが追いつかなくなります。
対象企業を絞った後は、各社を横並びで比較するための項目を社内で完全に統一しましょう。スプレッドシートの縦軸に企業名、横軸に比較項目を並べたマッピングシートを整備すると、誰が見ても一目で差異がわかる状態を作れます。
給与・福利厚生・選考スピード・ブランド力の4項目で比較する
押さえておくべき比較項目は、給与・福利厚生・選考スピード・ブランド力の4つです。給与は基本給だけでなく賞与・昇給率などを含めた実質年収ベースで、福利厚生はリモートワーク頻度や住宅手当など現代の求職者が重視する要素に絞って評価します。
選考スピードは応募から内定までの平均日数・面接回数など候補者体験に直結するプロセス全体を、ブランド力は採用サイトの質・SNS発信力・口コミ評点を総合的に比較しましょう。各項目を5段階評価で数値化すると、自社の強みと弱みが定量的に可視化されます。
定期的にベンチマーク先を見直し変化に対応する
採用市場は常に変化しており、一度決定したベンチマーク企業をそのまま使い続けることは危険です。競合の求人票・採用サイト・SNSを定点観測するほか、合同説明会や採用イベントに足を運んで競合が候補者にどのような訴求をしているかを直接観察する機会も有効です。
少なくとも半年に1回、採用振り返りのタイミングでベンチマーク先が現状の実態と合致しているかを確認し、頻出するようになった新たな競合はリストに追加します。定期的なチューニングによって、採用戦略の鮮度を維持し続けられます。

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採用競合と差別化するための5つの戦略

採用競合の分析で自社のポジションが明確になったら、次は具体的な打ち手に落とし込む段階です。競合との差を縮める・あるいは逆転するためには条件面だけでなく、候補者が感じる体験や情報の質を高める多面的なアプローチが求められます。
採用ブランディングの見直しで訴求に一貫性を持たせる
採用ブランディングとは、自社の価値観や強みを言語化し、求人票・採用サイト・SNS・説明会といった候補者との接点すべてで統一したメッセージを発信する取り組みです。競合分析で得た「競合が打ち出していない訴求軸」を起点に採用コンセプトを設計すると、候補者の記憶に残りやすい差別化が実現できます。また社員インタビューや内定者アンケートから「入社を決めた本当の理由」を収集し、それを経営ビジョンと結びつけてメッセージ化するなどの手段もおすすめです。
ただし接点ごとに語る内容がバラバラだと候補者の信頼を損なうため、こうした採用コンセプトや伝えるべきメッセージは採用に関わる全員正しく理解・発信する体制を整えておきましょう。
候補者体験を選考全体で最適化する
候補者体験(採用CX)とは、求職者が企業を認知してから入社するまでのすべての接点で得る体験の総称です。競合と条件が近接する状況では「人が魅力的だった」「選考を通じて企業への理解が深まった」という体験の質が、最終的な内定承諾を左右することが少なくありません。
選考スピードの見直し、面接官の質問・フィードバックの統一、オンライン面接の導入による候補者の負担軽減、内定直後の職場見学会の設定など、タッチポイントごとの体験を具体的に設計することが求められます。競合他社の選考期間や内定承諾期限を把握したうえで自社のスケジュールを調整すれば、承諾率の向上に直結するでしょう。
競合が使っていない採用チャネルに注力する
競合他社が大手求人媒体に集中している場合、同一媒体に予算を投下するだけでは母集団の奪い合いに陥ります。競合分析の結果をもとに、競合がカバーしていないチャネルにリソースをシフトすることで、接触コストを下げながら質の高い候補者との接点を増やすことが可能です。
採用チャネルの選択肢
| チャネル | 特徴 |
|---|---|
| ダイレクトリクルーティング | 潜在層にスカウトで直接アプローチ 大手依存を脱せるうえ、母集団の質をコントロールしやすい |
| リファラル採用 | 社員等の紹介経由のため、企業文化とのマッチ度が高い候補者が集まりやすく、採用単価も抑えられる |
| SNS・オウンドメディア | 企業の日常や文化を継続発信し、競合との違いをストーリーで伝えられるほか、採用単価も抑えられる |
| 合同説明会・採用イベント | 競合の訴求内容を直接観察しながら、自社の独自テーマで差別化できる場を設けられる |
チャネルを選ぶ際は、ターゲット人材の情報収集行動を先に調査し、候補者が実際に動いている場所に接点を設けることが前提となります。
求める人材像を明確にし訴求メッセージを研ぎ澄ます
採用競合との比較で自社が負けやすい場面の多くは、求める人材像が曖昧なまま広範に訴求し、結果として候補者に刺さらないメッセージを発信し続けているケースです。ターゲットを絞り込み、ペルソナに響く言葉で訴えることが、競合との質的な差別化につながります。
3C分析で明らかになった「候補者ニーズと自社強みが交わる領域」を訴求の核に据え、競合が語れない切り口を選ぶことが重要です。たとえば、競合が給与や福利厚生で優位であれば、成長機会・裁量・チームの雰囲気といった非金銭的価値を具体的なエピソードで伝えることで、条件比較ではなく価値観の共鳴で選ばれる構造をつくれるでしょう。
分析結果を面接官・現場に共有しカウンタートークを整備する
採用競合の分析結果が採用担当者の中にとどまっている限り、候補者との直接接点である面接官や現場社員には届きません。「A社と比べ給与が低い」「B社の方が働き方が柔軟そうだ」といった候補者の懸念に対し、面接の場で的確に応答するためのカウンタートークを整備し、関係者全員に共有することが不可欠です。
カウンタートークは「競合の弱点を攻撃する」ためのものではなく、「自社が提供できる価値を候補者視点で再定義する」ための素材として設計します。また、自社の弱みになりえる部分については隠さず率直に認めたうえで、改善に向けた取り組みや補完できる強みを誠実に伝える姿勢が、長期的な信頼と内定承諾につながるでしょう。
まとめ

本記事では、採用競合の定義から調査方法、分析フレームワーク、差別化戦略まで体系的に解説しました。
採用競合は事業上の競合とは異なり、候補者の志望軸やターゲット人材が重なるすべての企業が対象となります。有効求人倍率が高水準で推移し、求職者が複数社を並行して比較検討する現在の採用市場では、競合を正確に把握しないまま活動を続けることが内定辞退や採用コストの増大に直結しかねません。
採用競合の分析や差別化戦略の設計を自社のリソースだけで進めることが難しい場合は、外部の専門支援を活用することも一つの方法です。「まるごと人事」では、採用戦略の設計から媒体運用・スカウト送付・エージェントマネジメントまでを一貫して代行しており、640社以上の支援実績をもとにした採用ノウハウを提供しています。
採用競合対策を含む採用課題の解消を検討している場合は、ぜひ一度ご相談ください。

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