採用・労務・経理に関するお役立ち情報

2025.06.10 更新日:2025.07.18
この記事の監修者:今 啓亮

この記事の監修者:今 啓亮

第1回 建設業界の採用危機と「人財」経営の時代へ【特別企画:建設業界採用ガイドブック解説】

人手不足と高齢化の現実(統計・背景)

人手不足と高齢化の現実(統計・背景)

日本の建設業界は、今まさに深刻な採用危機に直面しています。国土交通省の統計によれば、建設業の就業者数は1997年の685万人をピークに年々減少し、2023年時点ではおよそ492万人にまで減っています。約30年で200万人近い労働力が減少した計算になり、その影響は現場の生産性や安全性にまで及んでいます。

さらに注目すべきは就業者の年齢構成です。総務省「労働力調査」によると、55歳以上の就業者が全体の約36%を占めており、29歳以下はわずか12%にとどまっています。これは技能の継承において、世代間の“橋渡し”が極めて困難であることを意味します。ベテラン職人が一線を退く一方で、若手人材がその技術を学ぶ機会が少なくなっており、業界全体としての持続可能性が危ぶまれている状況です。

このような人材の不足は、特に地方圏で顕著です。都市部への人口集中により、地方ではそもそも募集母数が少なく、求人を出しても一件も応募が来ないといった「採用不能地帯」も発生しています。このままでは、建設需要があっても人手が足りず、地域インフラの維持さえままならないといった事態に直面しかねません。

しかし一方で、希望が見える動きもあります。2025年の公共工事設計労務単価は全職種平均で24,852円と13年連続で上昇しており、建設業における待遇の改善が進んでいます。また、女性や外国人労働者の就業も徐々に増えており、多様性のある職場づくりへの関心も高まってきました。こうした前向きな変化を一過性のものに終わらせず、持続可能な制度や文化として根づかせていくことが重要です。

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新3K」への転換と構造改革

新3K

建設業界に根強く残る「3K(きつい・汚い・危険)」のイメージは、採用における最大の障壁の一つです。かつては高度経済成長を支える重要な職業であったにもかかわらず、長時間労働や現場至上主義、職人気質による指導文化などが若年層の参入を妨げてきました。

こうした状況を変えるため、業界をあげて「新3K(給料が良い・休暇が取れる・希望が持てる)」への転換が図られています。国土交通省では週休2日制建設現場の導入や、勤務間インターバル制度の普及を支援しており、現場の働き方改革が本格化しています。また、ICT施工や遠隔臨場といったテクノロジーの導入も進み、現場の効率化と負担軽減が期待されています。

しかし、制度が整ったからといって、それがすぐに働きやすさや定着率の向上につながるとは限りません。たとえば、設計変更や工程の遅れによって突発的な対応を求められることが多い建設現場では、長時間労働や休日出勤が依然として常態化しています。また、発注者との力関係によって現場の裁量が限定されているケースも多く、現実と理想のギャップに悩む企業は少なくありません。

だからこそ、現場マネジメントの力を高めること、発注者との関係性を見直すこと、そして会社として「新3K」を本気で目指しているというメッセージを社内外に発信することが不可欠です。これは単なるイメージ戦略ではなく、組織文化そのものを再設計する取り組みといえます。

採用とは“補充”ではなく“戦略”

採用というと、多くの企業では「人が辞めたから」「現場が足りないから」といった“対症療法”的な発想から始まりがちです。しかし、少子高齢化が不可逆的に進む日本社会において、もはや人材を「補充」するだけでは持続的な成長は望めません。

本来、採用とは組織の未来像から逆算して設計されるべき「戦略行為」です。たとえば、今後3年で支店を2つ増やす計画がある場合、必要となる人材は施工管理者だけでなく、営業、事務、管理部門まで多岐にわたります。それらの役割をどのように配置し、どのように育成し、どのようなタイミングで採用するか――この全体設計がなければ、いざ増員が必要になったときに即応できません。

また、採用活動は単体で成立するものではありません。人事制度、育成計画、評価制度、組織図の設計、さらには企業理念やビジョンとも密接に関わっています。採用とは、組織がどのように成長したいのか、その未来に対してどのような“人の形”を求めているのかを言語化し、行動に落とし込む営みです。

採用における成功とは、単に「人が入った」ことではありません。むしろ「人が辞めず、成長し、次世代を育てるようになった」段階でようやく成功といえるのではないでしょうか。こうした好循環を生むためにも、今こそ採用を“戦略”として捉え直すことが求められています。

次回予告

次回予告

次回は、建設業における採用フロー全体を俯瞰しながら、各フェーズで起こりがちな“つまずきトラップ”について詳しく解説します。
採用活動がうまくいかない本当の理由を、構造的に紐解いていきます。

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この記事の監修者:今 啓亮
この記事の監修者:今 啓亮

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2015年に東京でマルゴト株式会社(旧社名:株式会社ビーグローバル)を創業。
スタートアップから大手企業まで幅広く採用関連のプロジェクトに携わった後、2017年に月額制の採用代行”まるごと人事”の提供を開始。
2021年にバックオフィス代行”まるごと労務””まるごと経理”も開始。
「理想のサービスと理想の職場を同時実現する」を経営理念に掲げ、全員がフルリモートで働くユニークな組織運営を行う。
2022年に本社住所を東京から札幌に移転し、自身も関東から札幌に移住。

出演イメージ

2024年11月、ABEMAの報道番組「ABEMA Prime」に
採用のプロフェッショナルとして出演。
> 出演した番組はこちら

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