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年の目覚ましいテクノロジーの進歩は、働き方や組織のあり方を根本から変えつつあります。このような変化の時代において、「スキルベース採用」への注目が急速に高まっています。
これは、単なる採用手法に留まらず、給与体系や組織の労働力戦略全体を再構築する可能性を秘めたアプローチです。スキルベース採用の導入は、即戦力となる優秀な人材の獲得や、組織の多様性の向上といったメリットをもたらします。激しい競争の中で持続的な成長を目指す企業にとって、この戦略は大きな武器となるでしょう。
本記事では、スキルベース採用の意味から、そのメリット・デメリット、そして成功のためのポイントまでを詳しく解説します。

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目次
スキルベース採用とは
スキルベース採用とは、学歴や職種にとらわれず、候補者の持つスキルや能力を重視する採用手法です。
スキルテストや適性検査などを活用して個人の実力や適性を客観的に評価し、最適なポジションに配置することを目的とします。
雇用形態や働き方が多様化する現代において、スキルベース採用は、新卒・キャリア採用を問わず、あらゆる採用シーンで有効なアプローチです。
スキルベース採用の背景
現代の多様化した人材市場において、スキルベース採用は、労働者が柔軟な働き方を求めるようになった背景から生まれた採用手法です。
特に、人手不足が深刻化する日本企業では、デジタル化や多様な働き方を推進する上で、この採用手法が重要な役割を果たしています。
スキルベース採用で求められる「スキル」の定義
スキルベース採用において企業が明確にすべきなのは、特定のポジションや業務に求められるスキルを定義し、それを客観的に評価することです。
業務遂行に必要なスキルは多岐にわたり、主に以下のカテゴリに分類できます。
1. 業務遂行に不可欠な「ハードスキル」
専門知識:特定の分野や業界に関する知識。(例:人事、営業、マーケティング、法律、医学など)
技術的スキル:ITやプログラミング、デザインなど、特定の技術やツールを扱う能力。
2. チームで活きる「ソフトスキル」
コミュニケーション能力:言葉で伝える「バーバルコミュニケーション」や、表情・ジェスチャーで意思疎通を図る「ノンバーバルコミュニケーション」など、円滑な人間関係を築く能力。
リーダーシップ:チームを効果的に導き、目標達成に向けた戦略やビジョンを策定できる能力。
3. 課題解決に役立つ「思考スキル」
論理的思考:問題を分析し、論理的なアプローチで解決策を導き出す能力。
クリティカルシンキング:情報を客観的に評価し、偏見を排除して適切な意思決定を行う能力。
4. 変化に対応する「柔軟性スキル」
適応力:新しい状況や環境に柔軟に対応する能力。
学習意欲:新しいスキルや知識を自ら積極的に習得しようとする姿勢。
.5. 効率を高める「管理スキル」
時間管理・タスク管理:複数のタスクの優先順位をつけ、スケジュールを効率的に管理して確実に実行する能力。
スキルベース採用とジョブ型採用の違い
「スキルベース採用」と「ジョブ型採用」は、しばしば混同されがちな言葉です。
両者とも、従来の学歴や職歴だけでなく、業務遂行に必要なスキルや適性を重視する点で共通しています。
しかし、両者には明確な違いがあります。
スキルベース採用は、人材のスキルを基準に広範なポジションへ適用できる採用手法を指します。
一方、ジョブ型採用は、職務記述書(ジョブディスクリプション)で職務内容を明確に定義し、その職務や役割に特化した人材を採用する「雇用システム」そのものを指すのです。
以下の記事では、「ジョブ型採用」について詳しく紹介しています。

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スキルベース採用のメリット
スキルベース採用の最大のメリットは、定量的な判断が可能になることです。ただし、採用を成功させるためには、適切なスキルテストや評価基準の設定、組織全体での共通理解と取り組みが必要になるため注意が必要です。
1. 優秀な人材の獲得とミスマッチの防止
従来の学歴や経歴ではなく、個人の持つ実力や適性を客観的に評価することで、本当に優秀な人材を効率的に見極めることができます。スキルに応じた適切なポジションに配置できるため、入社後のミスマッチを防ぐことにもつながります。
2. 即戦力の見極めとコスト削減
あらかじめ一定のスキルを有しているか判断できるため、新入社員でも即戦力として活躍できる可能性が高まります。これにより、長期的な研修期間や採用プロセスにかかる時間・コストを大幅に削減し、組織の生産性向上に貢献します。
3. 組織の多様性と柔軟性の向上
人材のスキルに焦点を当てることで、さまざまなバックグラウンドを持つ人材を幅広く採用できます。これにより、組織の多様性が増し、新しい視点やアイデアが生まれやすくなります。変化に柔軟に対応できる人材を確保することで、企業の競争力強化にもつながるでしょう。
4. 従業員エンゲージメントの向上
個々のスキルを最大限に活かせるポジションに配置することで、従業員は仕事へのやりがいを感じやすくなります。これにより、モチベーションと生産性が向上し、結果として離職率の低下にもつながります。
スキルベース採用のデメリット
スキルベース採用には、以下の2つのデメリットが考えられます。
1. 求めるスキルの明確化が不可欠
スキルベース採用では、求職者に求めるスキルを明確に定義できていないと、かえってミスマッチにつながる恐れがあります。
スキルには、業務に関する専門知識から、リーダーシップ、柔軟な対応力まで多岐にわたるため、募集するポジションによって必要なスキルを詳細に洗い出すことが不可欠です。この作業は、採用活動の工数増加につながる可能性もありますが、採用の成否を分ける重要なプロセスとなります。
2. 社内への浸透と理解の促進が必要
これまでの学歴や職歴を重視した採用から、スキルベース採用に移行する場合、社内全体への浸透と理解を求める必要があります。
採用手法を急に変更すると、「高学歴の方が優秀だ」「職務経験がなければ通用しない」といった旧来の考えを持つ社員から不満が生じ、協力が得られない可能性があります。採用活動を円滑に進めるためにも、経営層が率先してスキルベース採用のメリットや必要性を社員に伝え、共通の理解を築くことが大切です。
スキルベース採用を成功に導くステップ
スキルベース採用は、以下の6つのステップで導入します。
ステップ1:必要な人材要件を洗い出す
まずは、自社に必要な人材要件を明確にすることから始めます。採用の目的や募集ポジション、企業のビジョンに基づいて、自社の成長につながる適性や志向性などの要件を定めていきましょう。
ステップ2:スキルを定義し、評価基準を設計する
評価するスキルの定義と、具体的な評価基準を設計します。基準を明確にすることで、求職者を公平に評価でき、採用担当者間での評価のブレを防ぐことができます。曖昧な評価によって優秀な人材を逃したり、ミスマッチな人材を採用したりすることを防ぐために、このステップは非常に重要です。
ステップ3:評価方法を策定する
スキルベース採用では、適性検査やスキルテストの導入が大事です。必要な検査やテストを検討し、自社で開発する、またはスキルテストを提供しているサービスを利用するなどして、評価方法を策定しましょう。
ステップ4:既存の選考プロセスを見直す
導入にあたり、既存の面接方法を見直す必要があります。学歴や職歴、ポテンシャルを問う従来の質問では、求職者のスキルを深く掘り下げることが難しいためです。スキルを的確に把握できるような質問に変更し、面接官のトレーニングも行いましょう。
ステップ5:スキルベース採用を社内に浸透させる
「学歴不問」といった新しい採用要件に変わることで、不公平感を抱く社員がいるかもしれません。採用活動をスムーズに進めるためにも、採用担当者だけでなく、経営層が率先してスキルベース採用のメリットや必要性を全社に周知し、理解と協力を得ることが大切です。
ステップ6:導入後のPDCAを回す
スキルベース採用を導入した後は、PDCAサイクルを回して結果を分析し、改善を続けます。この際、スキルテストの結果だけを重視しすぎないことが重要です。面接で評価できる人柄やコミュニケーション能力、柔軟性なども含め、スキルテストと面接の評価を総合的に見て、採用を判断しましょう。これにより、より精度の高い採用活動が実現できます。

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スキルベース採用の導入における課題と注意点
スキルベース採用は多くのメリットがある一方で、導入には注意点や課題も存在します。
スキルの客観的評価をどう行うか
スキルベース採用では、人材のスキルを客観的に評価することが重要です。しかし、コミュニケーション能力やリーダーシップといった数値化しにくい非認知能力の評価は容易ではありません。企業が求めるスキルによっては、適切なスキルテストや適性検査を導入し、客観的な評価を行うための手法を確立する必要があります。
非認知能力の評価方法を確立する
業務遂行には専門的な技術だけでなく、コミュニケーション能力や問題解決力、柔軟性といった非認知能力が不可欠です。これらは人材の成功や組織への適合度に大きく影響しますが、客観的な評価が難しいため、評価手法の確立が課題となります。
グローバルな採用基準をどう構築するか
多国籍企業や国際的な事業展開を考えている企業では、スキルベース採用をグローバルに適用する必要があります。異なる文化や言語圏でも公平な評価を行うためには、文化的な背景に依存しないスキルテストや評価基準を設けることが重要です。
既存のプロセスへの統合と偏りの防止
スキルベース採用を導入するには、従来の採用プロセスとの整合性を図り、新しい評価軸をスムーズに統合することが求められます。特に、採用担当者や面接官に対し、新しい理念や評価基準を理解させるためのトレーニングも必要です。また、特定のスキルを持つ人材に採用が偏らないよう、バランスの取れた仕組みを構築する必要もあります。
まとめ
スキルベース採用は、職務を限定しない日本型雇用にこそ適していると言えます。
北米企業においても、従業員はジョブディスクリプション(職務記述書)に限定されず、部門横断的なプロジェクトや臨時の業務に携わることが少なくありません。そのため、多くの企業が従来の固定的な人材管理に限界を感じ、ソフトスキルや潜在能力といったポテンシャルを重視する傾向にあります。
こうした背景を鑑みると、若手人材のポテンシャルを基盤とした採用や、職種転換を伴う異動を行う日本型雇用には、スキルベース採用を導入する土壌がすでに整っていると言えるでしょう。
現在、多くの日本企業が抱える人材課題に対し、スキルベース採用は有効な解決策となり得ます。自社の人材要件を「スキル」中心に再定義し、新たな採用戦略を構築する価値は十分にあるのではないでしょうか。
「まるごと人事」は、人材要件の再定義から、採用プロセスの最適化、そして適切な人材評価まで、貴社に合わせた採用戦略をトータルでサポートします。
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