お役立ち情報
売り手市場が続くなか、人手不足に悩む企業は少なくありません。事業の存続には人材が欠かせず、人手不足は深刻な経営課題にもつながります。
本記事では企業が人材確保に苦戦する理由、人手不足の解消に向けた自社の採用力強化、採用した人材の定着率向上やアウトソースの活用といった視点から、紹介していきます。
安定的に人材を確保するための方法として、参考にしていただけると幸いです。
目次
人手不足の背景と実態
人材の確保が求められる背景として、少子高齢化が挙げられます。ここでは人手不足の背景と実態を解説します。
背景|生産年齢人口が減少しているため
少子高齢化が進み、国内では1990年代以降、「生産年齢人口」が減少していることが人手不足の背景のひとつです。
生産年齢人口とは、国内の生産活動を中心となって支える年齢の人口層を指し、経済協力開発機構(OECD)では、15~64歳の人口と定義をしています。
今後も少子高齢化に伴い、生産年齢人口の減少傾向は続くと予想されるため、優秀な人材の確保に向けた企業間の採用競争はますます熾烈になると言えるでしょう。
実態|業界・企業規模によって異なる人手不足
厚生労働省の調査「人手不足の現状把握について」によると、人手不足の実態には企業規模や業界によって差があります。
2017年の産業別で比較をすると、とくに運輸業・郵便業、サービス業、医療・福祉、宿泊業・飲食サービス業、建設業においては人手不足が深刻と言えます。
またいずれの業界においても、従業員数が1,000人以上の大企業と比べて、1,000人未満の中小企業の方が、人手不足となっている実態が分かります。
企業が人材確保に苦戦する理由
ここでは企業が人材確保に苦戦する理由を解説します。
1. 効果的な採用活動ができていない
一つ目の理由として、効果的な採用活動ができていないことが挙げられます。
たとえば、応募者が集まらなければ採用活動を進めることはできず、選考でも自社の魅力を伝えきれなければ内定までつなげるのは難しいでしょう。
募集にあたっては採用ターゲットを明確にし、適切なアプローチができるよう事前の設計が必要です。また、選考では求職者の志望意欲を高めるために採用フローを見直したり、訴求する魅力を整理するなど、採用活動の見直しが必要です。
2. 今いる社員の離職を防げていない
二つ目の理由として、今いる社員の離職を防げていないことが挙げられます。
社員の離職は、採用・教育コスト面の損失だけでなく、知見やノウハウの喪失、他社員のモチベーション低下など影響は大きいものです。
そのため、社員のエンゲージメントを高め、離職を防ぐことも人材確保の重要な取り組みのひとつです。
日頃から社内でコミュニケーションを取ることで、離職の兆候を見つけられる可能性があり、離職の兆候があれば悩みをヒアリングするなどして解決できないかを考えていくことが必要です。
3. 離職する理由を把握できていない
三つ目の理由として、離職する理由を把握できておらず、職場環境の改善ができていないことが挙げられます。
退職する社員の離職理由を把握し、分析をもとに職場環境の改善策を立てることで今いる社員の離職の低減につながるでしょう。
離職理由には労働環境や人間関係、待遇などさまざまな理由が挙げられます。しかし、退職者が本当の理由を言いづらいケースや、企業から引き止められないよう建前としての理由を述べるケースもあり、本当の離職理由を把握しづらいと言えるでしょう。
そのため、日頃から社内でのコミュニケーションを通じて良好な人間関係を築き、社員が離職する場合でも、率直な離職理由を伝えられる関係性づくりが求められます。
採用力向上に向けた5つのポイント
採用力とは「組織に有益な採用活動を設計・実行する力」を指します。
人材確保には採用活動が欠かせません。下記のポイントを参考に、採用力を高めていきましょう。
1. 求める人物像を明確にする
採用活動を成功させるためには、自社が求める人材を明確にすることが重要です。
人材要件を設定し、自社が求める人材を言語化します。人材要件とは、業務に必要なスキル、自社のカルチャーに合った人柄や志向性を具体的に言語化したものです。採用選考において合否を判断する基準としても使用されます。
人材要件を設定することで、 面接の通過率や採用率を適正化でき、面接官による合否判断に一定の基準を設けることができるため、採用ミスマッチの抑制にもつながります。
人材要件の設定にあたっては、項目ごとに「MUST(必要条件)」、「WANT(十分条件)」を設定しましょう。
優先順位を決めることで、たとえば、そもそも市場に候補となる人材がいない、選考を進めるなかで求職者と自社間の条件が合わないといった場合には、要件を緩和したり、要件自体を見直したりといった調整ができるようになります。
2 適切な募集方法を選定する
自社が求める人材に合った人材を採用するためには、適切な募集方法を選ぶこともポイントです。
WebやSNSによる採用活動が広がり、近年では募集方法や採用ツールも多様化しています。
従来の求人広告や人材紹介以外にも、SNSを活用した「ソーシャルリクルーティング」や、企業側から自社が求める人材にアプローチする「ダイレクトリクルーティング」といった手法が挙げられます。
適切な募集方法を選ぶためには、それぞれの手法やサービスごとの特徴を把握することが重要です。募集方法の選定にあたっては採用の知見が豊富な採用代行サービス(RPO)に相談してみるのもおすすめです。
参考:人材募集の方法11選!方法ごとのメリット・デメリット、ケース別の選び方を解説
3. 自社の魅力を言語化する
求職者に自社の魅力を伝え、志望意欲を高める工夫も必要です。
求人票や募集文の作成、面接時に自社の魅力を、求職者へ的確に伝えるためには、採用担当者や面接官が自社の魅力を把握しておくことが重要です。
「どのような点が魅力になるのか」、「どのような魅力を特に訴求したらよいか」を把握するために、下記の項目を参考に、さまざまな観点から自社の魅力を洗い出し、言語化しましょう。
- 会社:理念・ミッション/ビジョン/経営陣の魅力
- 業界・事業:業界の成長性/事業の規模感・社会貢献性
- ポジション:管理職採用/ポジションアップを見据えた採用
- 仕事内容:やりがい/ 裁量の大きさ
- 社風:カルチャー/雰囲気/社内イベント
- 給与:年収/評価制度との連動性
- 福利厚生:オリジナルの制度/有給消化率/リモートワークの可否
また、これらを関係者間で共有しておくことで、求職者に伝えるメッセージに一貫性が生まれ、採用活動全体を通じて、求職者の志望意欲を高めることにつながります。
4. 採用フローを適正化する
採用フローを適正化することも採用力向上につながります。
たとえば、選考に時間がかかりすぎると求職者の選考辞退につながったり、先に内定が出た企業に入社を決めてしまったりする場合もあります。
そこで、選考ごとに「いつ・だれが・なにを」おこなうかを明確にし、書類選考の有無や面接回数を適正化にすることで、CX(候補者体験)の改善が期待できます。
採用フローを適正化し、スピード感があるスムーズな選考を実施しましょう。
5. 内定者フォローを実施する
内定辞退を防ぐためには、内定承諾後から入社までのフォローも重要です。
内定者が離職中でない場合は、現職との退職交渉もおこなっているため、引き止めの可能性もあり得ます。採用担当者がこまめにコミュニケーションを取り、状況を把握することで内定辞退につながりそうな要因を把握できるため、内定辞退を防ぐうえで有効です。
また、内定者と定期的にコミュニケーションをとることで親近感を与え、入社意欲を高める効果も期待できます。さらに内定者との面談をおこなうことで、入社後に働くイメージが湧くので、内定者フォローにおすすめです。
人材の定着・活躍をしてもらうため6つの取り組みの例
社員のエンゲージメントやモチベーションに考慮した人事施策によって、離職を防ぐ取り組みを実施することも人材確保において重要です。
ここでは取り組みの例を紹介します。
1. 入社者へのオンボーディングを整備する
オンボーディングとは、新しく入社した人材にいち早く職場に慣れてもらい、組織への定着・戦力化してもらうための取り組みです。
入社後にカルチャーや業務に対してギャップがあったり、人間関係をスムーズに構築できなかったりすると、入社した人材が本来の能力を発揮できずに離職につながる可能性が高まります。
オリエンテーションや研修の実施によって、会社の全体像や具体的な業務を把握してもらい、ギャップの解消につなげましょう。また、良好な人間関係を築いてもらうために、同僚や他部署のメンバーと交流する機会も設けるのもひとつの方法です。
2. 評価制度を改善する
評価制度に対する不満も離職につながる原因のひとつです。
日頃の業務に対して定期的に評価をおこない、給与や査定に反映させたり、適切なフィードバックを実施し、キャリアアップにつなげたりすることが不満を解消するうえで重要です。
たとえば、評価制度を運用しながら「社員にとって納得感のある評価基準になっているか」、「社員へのフィードバックが適切にされているか」、「昇進・昇格の基準は明確か」といった観点で、適宜見直しをおこないしょう。
評価が属人的にならないよう社員の能力や成果、評価の根拠を可視化できる評価基準を導入したり、評価者が適切に評価をおこなうための研修を実施したりするなど、評価の透明性や基準の明確化を促すことがポイントです。
3. キャリアパスを提供する
キャリアパスとは、仕事における最終的な目標を定め、目標に向かって進んでいくための道筋です。
離職する理由のひとつとして、社員が現状の環境では成長を感じられない場合、キャリアアップやスキルアップを求めて転職する場合もあります。
社員一人ひとりが仕事を通じてどのようなスキルを身につけたいか、どのようなキャリアを実現したいか、といった意向を把握し、社員に合ったキャリアパスを提供することが求められます。
キャリアプランを把握するために、上司との定期的な1on1やメンター制度などを導入し、対話の機会を設けるとよいでしょう。
社員の意向を人材配置に反映できれば、モチベーションの向上やキャリアに対する不満の解消にもつながります。
4. 労働時間を管理する
長時間労働による健康面への影響や、ワークライフバランスの悪化も離職につながる要因です。
長時間労働の要因として考えられるのは、人手不足による業務過多、マネジメント層または社員の残業削減への意識の低さ、残業を常態化させている社内風土などさまざまです。
長時間労働を削減するためにも原因を突き止め、関係者と対策を講じ、労働時間の管理をすることが求められます。
5. 柔軟な働き方ができる環境を構築する
柔軟で多様な働き方ができる職場環境づくりも重要です。
たとえば、出産、育児や介護といったライフスタイルの変化によって勤務する時間や場所に制限が発生した場合でも、リモートワークや時短勤務など働き方の選択肢を提供することで、仕事を辞めないで済むこともあります。
近年はリモートワークや業務委託も増えており、多様な働き方を容認する流れは今後ますます加速すると言えるでしょう。
6. 福利厚生を充実させる
福利厚生を充実させることも、社員の定着率を上げる要素のひとつです。
福利厚生とは、職場で働くことで得られる賃金以外の報酬、サービスを指します。住宅、健康・医療、慶弔、育児・介護、自己啓発、財産形成などさまざまな種類があり、企業によって内容は異なります。
社員のニーズにあった福利厚生を用意することで、エンゲージメントの向上やモチベーションアップが期待できます。
一方で福利厚生の拡充には、費用や運用の負担が発生します。導入にあたっては社員のニーズと負担のバランスを考慮しましょう。
人手不足解消のためにアウトソース活用する方法
人手不足の解消には、正社員の採用や社員の定着を図るだけでなく、派遣、業務委託、アウトソースなどの外部パートナーを活用することも選択肢のひとつです。
自社の状況に応じて、必要なタイミングで必要な業務量を依頼できるため、臨機応変に依頼できる点がメリットです。
アウトソースのサービスには毎月発生する定型業務を依頼できる場合や、専門性の高い業務を依頼できる場合などさまざまなパターンがあります。
たとえば、定型化できる業務でリソースが不足している場合には、一部業務を外部パートナーに委託することも可能です。定型業務を外部に委託することで、社員がコア業務に注力できるほか、新たな業務に着手できたり、残業の削減につながったりといった効果が見込めます。
また、エンジニアリングやデザイン、コンサルティングなどの特定の領域についてノウハウが不足している場合は、専門性をもった外部パートナーを活用するのがおすすめです。外部のパートナーと関係を築き、相談をすることで、有益なアドバイスをもらえたり、知見を共有してもらえたりといったメリットを期待できます。
採用業務におけるノウハウ不足、リソース不足でお困りの場合は、採用代行サービス(RPO)を活用するのがおすすめです。他にもバックオフィス専門の代行サービスや、デザイン専門の制作代行サービスなど、アウトソースできる業務は幅広く、さまざまな活用ができます。
自社に合った人材確保の方法を検討しましょう
本記事では人材確保の方法について、採用力の強化、社員の定着率向上やアウトソースの活用といった視点で紹介しました。
採用力の向上には、募集活動の事前設計や運用を続けるなかでの改善が重要です。また、採用した社員に定着してもらうためには、社員のエンゲージメントやモチベーションを高めるための工夫が必要です。
また、正社員の採用や社員の定着を図るだけでなく、業務委託やアウトソースを活用することも選択肢のひとつでしょう。
本記事で紹介した取り組みを参考に、ぜひ自社に合った方法の人材確保に役立ててください。
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