お役立ち情報
採用活動のゴールは、自社が求める人材を採用し、活躍してもらうことです。
ゴールに向けてポイントとなるのが採用基準の設定です。適切な採用基準ができれば、スピーディーに採用活動を進められるだけでなく、入社後の採用ミスマッチの抑制にもつながります。
本記事では、採用基準の重要性の説明から、採用基準の項目や設定の手順までを解説します。
目次
採用基準とは
採用基準とは、自社の募集職種において最適な人材を採用するために必要とされる指標です。
指標の例としては、業務遂行に必要なスキル、自社のカルチャーに合った志向性や人柄などが挙げられ、選考通過や採用の可否を判断する基準として使われます。
ただし、採用基準は一度設定したら終わりではありません。設定した後は適切な採用基準かを判断するために、実際の選考を通じて改善点を洗い出し、アップデートしていくことでより最適な採用基準を設定していくことが重要です。
また、混同されやすい言葉として、「採用ターゲット」と「ジョブディスクリプション」があります。これらとの違いについても解説します。
採用ターゲットとの違い
採用ターゲットとは、自社が求める人物像です。年代、学歴、スキルや能力といった要素によって絞り込んだ層を指します
一方、採用基準は選考の通過可否を判断するためのものです。求められる要素を指標として具体的に示したものになります。
参考:採用ターゲット設定の重要性、設定にあたってのステップやポイントを解説
ジョブディスクリプションとの違い
ジョブディスクリプションとは、募集職種における業務内容、その業務が必要な背景、責任範囲、業務難易度、求められる資質、歓迎されるスキルなど、業務における情報を詳しく記載した書類を指します。
ジョブディスクリプションは、業務に関する具体的な情報として記載をし、それを評価や募集にも活用します。それに対して採用基準は、あくまで採用のための指標として設定するものです。
もともと日本企業ではあまり使われていませんでしたが、仕事に対して人材を割り当てていくジョブ型雇用の広がり、外国人雇用では必要となるため、近年広まりつつあります。
採用基準が必要とされる4つの理由
ここでは採用基準を設定する理由を解説します。
1. 採用ミスマッチの抑制につながるため
採用基準を設定することで、面接官による評価基準も明確なものとなり、採用の公平性や客観性が生まれます。
これによって選考通過や採用可否の偏りを減らすことにつながり、採用ミスマッチの抑制が期待できます。
また、採用基準を設定することで、募集要項や求人票に求めるスキルや経験、志向性を募集要項や求人票に明記できます。そのため、求職者側で応募するかどうかの判断ができ、採用ターゲット以外からの応募の抑制につながると言えるでしょう。
2. 採用コストの削減につながるため
採用基準の設定によって、適切な採用手法や媒体の選定に役立ちます。
同じ会社に属していても、採用担当者や現場、役員など立場によって視点が異なり、求める人材の認識にズレが生じることがあります。例えば、採用担当者が適任だと思った人材がいざ入社してみると戦力化できないケースや、現場に馴染めないといったケースが考えられます。
採用基準を設定していれば、このようなズレをなくすことにつながり、追加の採用活動にかかるコストを削減できます。
そのため、基準を設定する際は現場や役員など、各所と求める人材の認識をすり合わせておきましょう。
3. 選考通過率・採用率の適正化をはかるため
採用基準を定め、選考の結果をもとに採用基準を調整することで面接通過率や採用率の適正化が期待できます。
たとえば、通過率や採用率が高すぎる場合には、より優秀な人材を採用するために採用基準を上げるといった対応も検討できます。逆に、選考通過率が低すぎる場合、採用基準の緩和も検討した方がよいでしょう。
4. 選考のスピードを担保するため
採用基準を設定することで、選考通過可否の判断を進めやすくなります。
選考において評価するポイントが明確になり、選考通過の判断がスムーズにおこなえるため、採用活動全体の効率化にもつながります。
採用基準を設定する際のポイント
採用基準には大きく分けて、スキルフィットとカルチャーフィットの2つのポイントがあります。
1. スキルフィット
スキルフィットとは、「募集職種で活躍できるだけのスキルがあるか」、「業務内容とスキルの親和性があるか」などの能力の適合を見極めるものです。入社した人材がスキルを活かして活躍できるか、期待通りの業務を遂行ができるかを左右する重要なポイントです。
スキルとは、求職者が業務を通じて身につけてきた要素を指します。具体的には業界知識や職種ごとの専門知識、ノウハウなどが挙げられます。過去に成果を出していても外部の環境によるものであれば、求職者のスキルとは言えません。
スキルフィットの判断には、自社の業務において再現性があるかがポイントです。
過去に出した成果を深掘りし、「どのような環境・役割だったのか」、「成果を出すためにどのような工夫をしたのか」など、環境や役割、プロセスを具体的にヒアリングしましょう。
2. カルチャーフィット
カルチャーフィットとは、求職者の価値観や人柄が自社のカルチャーにマッチしているかどうかを見極めるものです。高い能力をもっていても、自社が大切にしている価値観や既存社員との雰囲気と合わない場合には、入社をしても期待していたパフォーマンスを発揮できないケースがあります。
そのため、求職者の価値観や人柄が自社のカルチャーに合っているかどうかは、採用基準の設定にあたり重要なポイントです。
カルチャーフィットの見極めには、仕事のやりがい、仕事の進め方やチームワークの在り方など求職者のパーソナリティを確認するためのヒアリングをおこないましょう。
新卒採用と中途採用の採用基準の違い
採用活動には大きく分けて、新卒採用と中途採用の2種類があります。
採用の目的や求める要素が異なるため、採用基準も別の観点で設定が必要です。それぞれの採用基準のポイントを解説します。
新卒採用の採用基準
新卒採用は職務経歴がないため、スキルや能力よりも、カルチャーフィットや成長意欲、主体性があるかどうかの見極めが重要です。
価値観は簡単には変えられない要素のため、入社時点で自社のカルチャーにフィットしている方が望ましいと言えるでしょう。
また、成長意欲や主体性といった人間性は、スキルや経験に比べて入社後にすぐ変わる可能性は低く、入社時点で一定の基準を満たしているのが望ましいです。
中途採用の採用基準
中途採用は、即戦力となる人材を求める場合が一般的です。
そのため、カルチャーフィットに加えてこれまでの経験から培ったスキルや知見、ノウハウを自社の業務にどう活かせるかが重要です。
採用基準には「募集職種で求められるスキルはなにか」、「そのスキルはどのレベルで必要なのか」を具体的に設定しましょう。
選考時に求職者のスキルや経験を適切に見極めることで、入社後の活躍が期待できます。
採用基準設定のステップ
採用基準の設定方法には組織や事業のフェーズ、募集職種によってさまざまな手順があるため、ここでは基本的な流れを紹介します。
1. 求める人物像を明確にする
まずは、自社で求める人物像を具体化します。下記3つの観点から人物像を掘り下げていくとよいでしょう。
求める人物像を明確にすることで、スキルフィット、カルチャーフィットの見極めに役立ちます。
1-1. 採用目的を確認する
前提として、採用活動は企業が設定した事業目標や経営戦略を実現するためのひとつの手段です。
はじめに自社の募集背景を確認し、採用に取り組む意義や目的を明確にすることが必要です。
事業目標を達成するために、自社にどのような課題があるのか、その課題を解決するためにどのような人材が必要なのかを確認しましょう。
1-2. 現場にヒアリングをする
募集する現場にヒアリングをおこない、業務内容、必要なスキルや知識、求める人柄などを洗い出します。
同じ社内でも、部署や職種、役職によって求める人材像は異なるため、ヒアリングをおこなう際は募集ポジションごとに進めましょう。
1-3. コンピテンシーモデルを作成する
コンピテンシーとは、自社で活躍する人材が共通して持っている行動特性や傾向を指します。コンピテンシーモデルとは、先述の活躍する人材が共通して持っている特性をモデル化したものです。
コンピテンシーモデルを作成することで、自社で活躍する社員の行動特性がわかるため、採用活動において、どのような人材が自社にマッチするのかを定義でき、採用基準を設定する際に役立ちます。
コンピテンシーモデルは下記のステップで作成します。作成や項目には、さまざまありますが、ここでは設定方法の一例として紹介します。
- 各部門で活躍している社員にヒアリングをおこない、 パフォーマンスを発揮するために「どう思考したか」を深掘りします。
- ヒアリング後に、該当の社員の行動特性のなかで、成果に結びついている理由を調査します。
- 洗い出した理由をもとに、成果につながった思考のパターンや傾向を言語化します。
- 共通している傾向や特性をコンピテンシー項目に落とし込みます。コンピテンシー項目には下記のような項目例があります。
コンピテンシー項目の例
・課題解決(ヒアリング力/課題設定力/仮説思考力)
・実行(迅速性、コミットメント、決断力)
・チャレンジ(目標達成意欲/成長意欲)
・組織(リーダーシップ、チームワーク)
・業務遂行(計画性/コミュニケーション/安定運用) - 設定したコンピテンシー項目が自社の経営理念やカルチャーにマッチするかを確認し、コンピテンシーモデルを作成します。
2. 評価項目を設定する
自社が求める人物像が明確になったら、評価項目を洗い出します。
作成したコンピテンシーモデルをもとに、評価項目を選定します。評価項目は多すぎると該当者が少なくなってしまう、少なすぎると自社が求める人材とズレた条件の人も該当してしまうため、優先順位をつけておくとよいでしょう。優先順位づけにあたっては「MUST条件(必須条件)」「WANT条件(関係条件)」に分けましょう。
また、思考力や人間性といった定性的な要素も加えることで多面的に判断ができます。
コンピテンシーモデルの設定が難しい場合は、経済産業省が提唱している「社会人基礎力」から評価項目を選定するのも一つの方法です。
- 考え抜く力(シンキング)
・課題発見力:現状を分析し目的や課題を明らかにする力
・計画力:課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力
・創造力:新しい価値を生み出す力
- チームで働く力(チームワーク)
・発信力:自身の意見をわかりやすく伝える力
・傾聴力:相手の意見を聴く力
・柔軟性:意見の違いや立場の違いを理解する力
・情況把握力:自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力
・規律性:社会のルールや人との約束を守る力
・ストレスコントロール力:ストレスの発生源に対応する力
- 前に踏み出す力(アクション)
・主体性:物事に進んで取り組む力
・働きかけ力:他人に働きかけ巻き込む力
・実行力:目的を設定し確実に行動する力
3. 採用基準を設定する
評価項目ごとに尺度となる評価基準を設定し、採用基準が完成します。
尺度を明確化するために、評価方法としてルーブリックを活用すると定量的な判断ができ、採用基準の精度を高められます。
ルーブリックとは、各項目に対し【(不足)1・2・3(満たしている)】といったレベルごとに尺度で評価を行う方法です。
各尺度に対して「なにを満たしていればよいか」を定義することで、面接官の質問に対する回答、を数字で評価できます。
項目の具体例として下記が挙げられます。
- チームワークやマネジメント力
1:誠実なコミュニケーションがとれる
2:傾聴・共感の姿勢があり、場の雰囲気をよくできる
3:相手に気づきを促し、共通の目的を見いだせる
- 主体性
1:これまでの自身の取り組みを伝えられる
2:これまでのコミットメントに対して振り返り、独自の視点や解釈が持てている
3:これまで培った能力・経験を自身で分析し、自社で再現するための意欲が見られる
採用基準を設定する際の注意点
厚生労働省の「公正な採用選考の基本」では、採用選考について「応募者の基本的な人権を尊重し、適性や能力のみを基準としておこなうこと」という指標を提示しています。
そのため、採用基準に本人に責任のない事項や、本来自由である事項を入れることは、不公平性を招くため、避けなければなりません。応募者の適性や能力に関係のない項目について、応募用紙に記入させる、面接で質問するなどしないよう注意が必要です。
ここでは、採用基準として避けるべき項目を具体的に見ていきましょう。
本人に責任のない事項
下記の事項は本人に責任のない事項として、避けなければなりません。
- 本籍・出生地に関すること
- 家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)
- 住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
- 生活環境・家庭環境などに関すること
本来自由であるべき事項
下記の本来自由であるべき事項として、避けなければなりません。
- 宗教に関すること
- 支持政党に関すること
- 人生観、生活信条に関すること
- 尊敬する人物に関すること
- 思想に関すること
- 労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
- 購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
自社に合った採用基準を設定し、採用活動の質を担保しましょう
採用基準は、採用活動全体の質を担保し、採用した人材の活躍を促すうえで欠かせません。
採用基準を設定することで、採用選考の公平性や客観性が生まれ、面接官ごとの評価のズレから発生する、採用ミスマッチを抑制できます。また、選考通過や採用可否の判断をスムーズにおこなえるため、CX(候補者体験)の向上も期待できます。
ぜひ本記事で紹介したポイントを踏まえて自社に合った採用基準を設定し、採用した人材の活躍につなげましょう。
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