採用・労務・経理に関するお役立ち情報

人材確保のために、ポジティブ・アクションに取り組む企業が増加しています。実際、ポジティブ・アクションを導入した企業では、人材確保だけでなく離職率低下にも成功しています。しかし、「導入時にはどのような課題があるのか」や「具体的にどのような施策が必要か」と悩む人事・採用担当者もいるのではないでしょうか。
本記事では、ポジティブ・アクションの基本概念から企業が得られる具体的なメリット、実際の取り組み方法など、網羅的に解説します。
実際の成功事例も交えながら、自社での効果的な導入方法を紹介しますのでお役立てください。

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目次
ポジティブ・アクションとは|企業の女性活躍推進が経営戦略となる理由

ポジティブ・アクションとは、“一般的には、社会的・構造的な差別によって不利益を被っている者に対して、一定の範囲で特別の機会を提供することなどにより、実質的な機会均等を実現することを目的として講じる暫定的な措置”を指します。
日本では特に、女性の社会進出と管理職登用を促進する取り組みがポジティブ・アクションに位置づけられています。実際、女性の参画は徐々に増加しているものの、他の先進諸国と比べて日本の水準は低いです。
労働政策研究・研修機構の調査によると、日本は管理職に占める女性の割合は約12%にとどまり、欧米諸国の30〜40%と比較して低いことがわかります。

この状況を改善し、多様な人材を活用することは、組織力を高め企業競争力を強化するうえで不可欠といえます。
こうした背景から、ポジティブ・アクションは人材確保と企業成長を実現する経営戦略として注目されています。
ポジティブ・アクションが起こす企業へのメリット3つ

ポジティブ・アクションに取り組むことで、企業は人材確保や組織力が強化されます。ここでは、ポジティブアクションが企業にもたらす3つのメリットを解説します。
企業イメージの向上により人材確保が容易
女性活躍推進に積極的に取り組む企業は、求職者から高く評価される傾向にあります。特に、ライフイベントによって働き方が左右されやすい女性にとって、柔軟な働き方ができる環境は企業選びで重要です。
内閣府の調査によると、働く女性の約6割が「仕事と子育ての両立が困難」と感じており、この課題に対応できる企業は競合他社との差別化が可能です。
時短勤務や在宅ワークなど働きやすい環境を整えると人材確保につながります。
既存社員の満足度向上による離職率低下
ポジティブ・アクションでは、実際に柔軟な働き方を実現したりキャリアサポートを充実させる取り組みが行われるため、既存社員の満足度も上がりやすいのが特徴です。
既存社員の満足度が上がれば離職率の低下につながります。離職率が低いと、給与水準や研修・サポート体制の充実さが評価されやすく候補者からの応募が集まりやすくなるでしょう。
資本市場や行政からの評価が高まる
女性推進への取り組みをしている企業は、投資家や行政機関から高い評価を受けやすくなります。
近年注目されているESG投資では、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)への配慮が重視されており、女性活躍推進は「社会」の重要な評価項目です。中長期的な企業成長を見据える機関投資家にとって、ダイバーシティ推進は投資判断の重要な指標となっています。
また、「共働き・共育てを可能にする性別を問わない両立支援」をしている企業が選定されるなでしこ銘柄は、募集されるごとに選定企業数も増えています。
他にも、女性が活躍する企業は「えるぼし認定」「くるみん認定」を取得できます。
上記の認定を受けた企業は、総合評価落札方式等による調達において加点評価されます。
ポジティブ・アクションの取り組みをした企業は助成金を受け取れるため、実行しない手はないでしょう。
参考:ポジティブ・アクション能力アップ助成金 -厚生労働省資料-

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ポジティブ・アクション導入時の注意点と課題

ポジティブ・アクションを適切に導入しなければ、期待する効果が得られないだけでなく、組織内の不満や混乱を招く可能性があります。
経営陣や管理職の理解が不十分なまま導入すると、制度だけが整備されて実態が伴わない「形式的な取り組み」になりかねません。特に、数値目標の達成のみが優先され、実際の職場環境や働きやすさが改善されないケースもあります。
また、施策を推進するメンバーに男性が多い場合、女性社員が直面している課題や本当のニーズを見落とす危険性があります。多様な視点から施策を検討するためには、推進チームに女性メンバーを積極的に含めることが不可欠です。
とはいえ、ポジティブ・アクション導入時に最も注意すべきは、既存社員から「逆差別ではないか」という批判が生まれる可能性です。特に、昇進や評価において性別が過度に考慮されていると感じられた場合、男性社員のモチベーション低下や組織内の不公平感につながります。
導入前に全社研修を実施し、ポジティブ・アクションの目的と必要性を正しく理解してもらいましょう。
ポジティブ・アクションの具体的な取り組み方法

ポジティブ・アクションを効果的に実行するには、計画的かつ段階的なアプローチが必要です。以下のステップに沿って取り組みましょう。
1.現状分析と課題の明確化
まず、自社における女性社員比率と管理職比率の現状を正確に把握します。単に数値を確認するだけでなく、部署別・職種別・年齢層別にデータを分析し、具体的な課題を抽出しましょう。
社内アンケートによる意識調査も実施し、女性社員が感じているキャリア形成上の障壁や職場環境の課題も洗い出します。既存女性社員のキャリアパスや昇進実績を分析することで、どの段階でキャリアが停滞しているのかを特定できます。
また、同業他社や競合企業との比較分析も有用です。業界平均と自社の状況を比較し、改善すべき優先順位を明確にしましょう。
2. 目標設定と推進体制の構築
各プロセスの進捗を把握するためにKPIを設定しましょう。現状分析に基づき、具体的な数値目標を設定します。
例えば、「3年後に女性管理職比率を20%にする」「5年後に新卒採用における女性比率を50%にする」といった、測定可能なKPIを設定しましょう。
経営層のコミットメントを得るためにも定期的に進捗を報告し、必要な予算やリソースを確保できる体制を整えましょう。
3. ポジティブ・アクションを実行
目標と体制が整ったら、具体的な施策を実行します。
女性社員向けのリーダーシップ研修やメンター制度を導入し、管理職候補となる女性社員に計画的に育成機会を提供し、キャリアパスを明確に示しましょう。
また、柔軟な働き方を実現する環境整備を行うだけでなく、実際に利用しやすい職場風土が必要です。育児や介護と仕事を両立する部下への適切な支援方法について、管理職向けにマネジメント研修を実施すると効果的です。

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ポジティブ・アクションを行っている企業からみる具体例

「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」にも参加している2つの企業から女性の活躍推進の具体的な取り組み内容を紹介します。いずれも、経営層が主体的に女性活躍推進に取り組んでいる企業ですので参考にしてください。
株式会社ぐるなび|ダイバーシティ推進部署の設立
株式会社ぐるなびは、2015年にダイバーシティ推進の部署を設立し、組織的に女性の活躍を推進しています。
同社の特徴は、ポジティブ・アクションの本来の目的である「社員が自らの能力を最大限発揮できる環境づくり」を重視している点です。性別やライフステージに関わらず、多様な人材が差別を受けることなくキャリアを築ける仕組みを整備しています。
定期的に数値も公表しています。
- 従業員女性比率 46%(2025年3月時点)
- 平均勤続年数 男性10年1ヶ月 女性9年11ヶ月(2025年)
- 管理職に占める女性比率 22%(2025年3月時点)
- 取締役に占める女性比率 11%(2025年3月時点)
定期的に進捗を可視化することで、持続的な女性活躍推進を実現しています。
ダイバーシティ採用について以下で詳しく解説しています。
日産自動車株式会社|キャリCaféで女性管理者登用を推進
日産自動車株式会社は、「性別によらず自分らしく活躍できる職場環境の整備と風土醸成」を方針に掲げ、多角的な取り組みを展開しています。
特に注目すべきは、以下の2023年の取り組みです。
- 育児中社員も参加しやすい短期型研修
- 部長職層・経営層候補を対象とした女性研修への派遣を開始
- 元女性役員と課長職候補者との少人数座談会「キャリCafé」を実施
「キャリCafé」では、オフラインで集まりリアルな悩みを共有することで女性社員が前向きに「リーダーになりたい」と思える気づきが得られます。
また、2023年は計25名の女性社員が、他企業のロールモデルとなる女性の講演や同じ階層の女性との意見交換にも参加しました。
両社に共通するのは、単なる数値目標の達成ではなく、女性社員が本当に活躍できる環境と風土づくりに注力している点です。
ポジティブ・アクションで企業イメージの向上と優秀な人材確保を

ポジティブ・アクションは、人材不足が深刻化する現代において、優秀な人材の確保から企業の持続的な成長の実現において重要な経営戦略です。
女性活躍推進に取り組むことで、企業イメージの向上による採用力強化、既存社員の満足度向上による離職率低下、さらには資本市場や行政からの評価向上といった、具体的なメリットが得られます。
株式会社ぐるなびや日産自動車株式会社の事例が示すように、専門部署の設置や具体的な育成プログラムの実施により、着実に成果を上げることが可能です。
自社の規模や業界特性に合わせて、できることから始めてみましょう。

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