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2025.08.18 更新日:2025.08.15
この記事の監修者:今 啓亮

この記事の監修者:今 啓亮

医療業界の人手不足問題とは|原因と6つの改善策を徹底解説

全産業の中でも医療業界の人手不足は深刻な課題です。人手不足への対策はもちろん、離職率を踏まえた戦略的な人員確保が医療機関に求められています。

実際、コロナ禍を機に働き方を見直し、転職や医療業界から離れた医療従事者は少なくありません。

本記事では、医療業界の人手不足における現状を掘り下げ、原因や対策について解説します。

また、人手不足問題に対する5つの改善策についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

採用計画や採用のためのポイントについては以下の記事で解説しています。

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医療における人手不足の現状|厚生労働省データから解説

医療における人手不足の現状|厚生労働省データから解説

パーソル総合研究所による労働市場の未来推進2030によると、2030年には全産業において644万人もの人手不足が予測されています。その中でも医療・福祉では187万人の不足が見込まれており、経営者や採用担当者の方にとっては、早急な対策が求められる喫緊の課題です。
まずは人手不足による影響や実態をみていきましょう。

少子高齢化がもたらす医療業界の人手不足における影響

2025年から2040年にかけて、75歳以上の後期高齢者人口は緩やかに増加する見込みです。 しかし、以下の厚生労働省のデータが示すように、都道府県によっては75歳以上の人口が減少すると予測されている地域もあります。

出典:https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/21/dl/1-02.pdf

高齢者の減少に伴い医療・介護ニーズも縮小されるため、地域によっては一時的な人材確保についての課題は緩和されるともいえます。
ですが平均寿命の延伸に伴い、介護度も上がる場合があるため医療現場でのスタッフ一人あたりの業務負担は増えるといってもいいでしょう。

厚生労働省が重要課題とする職種の人手不足の実態

厚生労働省では以下の職種の人員確保を重要課題としています。

  • 医師
  • 看護職員
  • 薬剤師
  • 理学療法士
  • 作業療法士
  • 管理栄養士

地域差はあるものの「薬剤師」「理学・作業療法士」「管理栄養士」の人員不足は逼迫しているとまでは言えない状況です。

そのため、ここでは医師と看護職員の人手不足の実態を解説します。

医師は、毎年約3,500~4,000人ずつ増加していますが、「産科・小児科」における医師不足が課題です。医師がいないため出産に対応できない地域もあり、少子高齢化を後押しする要因の一つになるといえます。

また、看護職員(保健師・助産師・看護師および准看護師)における、2022年度の有効求人倍率は2.20倍と高い水準を示しています。看護師の働くニーズの多様化により人材確保が難しいといった採用課題があります。

コロナ禍での給付金や賃上げはされたものの、転職や看護師自体を辞めた人も少なくありません。

参考:https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001140978.pdf

実際の離職率をみると、2022 年度の正規雇用看護職員の離職率は 11.8%、新卒採用者は 10.2%、既卒採用者は 16.6%と、いずれも昨年調査とほぼ同水準で推移しています。

人手不足において、現在だけでなく将来を見据えた抜本的な対策が必要不可欠でしょう。

医療業界の人手不足の原因と問題点

ここでは医療業界の人手不足の原因から問題点を抽出しています。原因を深掘りし適切な対策を講じましょう。

メンタル不調による離職が多い

労働環境や人間関係の悩み、責任の多さや自分のケアに対する不安が要因で、精神的に不調をきたして離職する職員が後を断ちません。

傷病による連続休暇を取得する看護職員のうち、メンタル不調による休暇をとる人は74.3%にものぼります

参考:https://www.nurse.or.jp/home/assets/20240329_nl04.pdf

看護師以外にも、看護補助員の離職率は正規雇用 13.6%、非正規雇用 25.5%と比較的高い水準となっています。

看護補助員はコロナ禍で一時的に人数が増加していますが、その理由として、仕事を失った人や夫の収入が減ったことが挙げられます。
しかし、今すぐ働きたい気持ちはあっても、志望度は低く働くイメージも湧かずに就職したため、理想とのギャップが大きく離職につながっていると考えられます。

また、メンタルに不調をきたす原因には、慢性的な人員不足が挙げられます。業務負担だけでなくスタッフ一人ひとりの心の余裕すら奪われてしまうことで、職場での人間関係への問題にも発展し、悪循環に陥っているといえるでしょう。

長時間労働や残業が多い

医療従事者にとって、長時間労働や過度な残業は心身の疲弊を招き、離職に直結しやすい大きな要因です。特に、医師では病院常勤勤務医の約4割が年960時間超、約1割が年1,860時間超の時間外・休日労働を行っています。

医師の超過勤務が問題視され、2024年4月より働き方改革が開始されものの、救急・産婦人科・外科は緊急手術が多く時間外労働が多い傾向にあります。

また、若手の医師は超過勤務の割合が多いことも特徴ですが、近年ハラスメントについて認識が強いことから、若手医師への対応には配慮される場面が増えています。

参考:https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001129457.pdf

看護職員の場合、離職率が高くなりがちな規模の大きい病院では、新卒には残業をさせない取り組みを徹底している部署もあります。
多様な働き方を受け入れている一方で、育児中のスタッフの残業は考慮しても独身者やフルタイムで働くスタッフへの取り組みが追いついておらず、負担が偏っているのが現状の課題です。

さらに、コロナ禍をきっかけに一般企業ではオンラインMTGや在宅ワークが普及したにも関わらず、会議も研修も全て現場に出向かなければならない病院が多く見受けられます。職場での拘束時間が長くなると、プライベートが充実しづらく、ワークライフバランスを重視するスタッフにとっては離職の要因となるでしょう。

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医療業界の人手不足に対する6つの解決策

医療業界の人手不足に対する6つの解決策

職場が人手不足に陥ると、以下のような影響がでるといえます。

  • 一人当たりの業務量が増え精神的な負担が増える
  • 必要な医療・ケアの質が低下する
  • 人間関係が悪化する

職場の雰囲気が悪くケアの質も低ければ、採用の段階で実際にアピールすることも難しく人が集まらないでしょう。

次に紹介する6つの対策を講じ、人手不足問題に戦略的に取り組みましょう。

1.IT導入・活用で業務負担を軽減

業務負担を減らすには、IT導入・活用をしましょう。電子カルテは導入しているものの、書類は紙ベースの施設も多くみられます。

説明書や同意書など、直接タブレットなどの端末へ書き込みできれば手間を省き、また患者間違いを防ぐことにもつながるため、大きなメリットと言えるでしょう。

他にも問診票や予約管理、自動清算システムなどを導入することで、看護師や医師だけでなく病院職員の業務量軽減につながります

労務業務、管理を効率化するためのサービスについては以下の記事で解説しています。

2.外部コンサルティングサービスの導入

クリニック規模であれば、外部のコンサルティングサービスの導入を検討がおすすめです。コンサルティングを受けると下記の内容が改善できます。

  • 戦略立案、資金調達の最適化
  • 採用戦略の策定・教育体制の構築
  • 経費削減、稼働率の改善
  • 経営全般に関する専門的なアドバイス

単に人員を増やすだけでなく、どのような経験を持つ人を採用したいのかを明らかにすべきです。

人を増やすよりITを導入した方が長期的にみてコストを削減できるケースもあるため、経営に強いコンサルサービスの導入を検討しましょう。

デジタル技術を駆使し、採用活動を革新する取り組みである採用DXについては以下の記事で解説しています。

3.国や地方自治体が提供する施策を確認

厚生労働省は、以下6つの医療施設等経営強化緊急支援事業の施策を発表しています。

  • 生産性向上・職場環境整備等支援事業
  • 病床数適正化支援事業
  • 施設整備促進支援事業
  • 分娩取扱施設支援事業・小児医療施設支援事業
  • 地域連携周産期支援事業(分娩取扱施設)
  • 地域連携周産期支援事業(産科施設)

参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_51451.html

他にも「キャリアアップ助成金」「人材開発支援助成金」など助成金が利用できるか確認しましょう。

4.良好な人間関係を築く

他職種の連携がスムーズにできるような取り組みは、医療現場における喫緊の課題です。特に規模の大きい病院では、威圧的な態度や慎重さに欠ける指示を出す医師に対して、看護師が不満を抱くケースが少なくありません。

また、一部の職場では、仕事に慣れていないスタッフに対して、声をかけにくい雰囲気やきつめの言葉がけが見られるケースがまだ残っていたりもします。看護師間でも気持ちの良いコミュニケーションが取れない結果、精神的に不安定になり休職や離職する人も少なくありません。

離職理由の1位が精神疾患を含む心身の不調であることからも、良好な人間関係は定着率向上のために欠かせない要素です。

5.ワークライフバランスを考慮する

育児をするスタッフの配慮に重きをおきがちですが、フルタイムで働くスタッフへの取り組みも忘れてはいけません。時短で帰った後の残務を全て引き受け残業するのはフルタイムのスタッフであり、夜勤回数やが比較的多くなりがちになるでしょう。

時短スタッフは働く時間や休みに目が向きがちですが、精神的なフォローが第一です。仕事との両立ができるか不安を抱いていたり、育児中の場合は子どもの体調に左右される生活へのストレス、職場に迷惑をかけているといった後ろめたさから精神的なダメージが大きいケースが多くみられます。

一方でフルタイムで働くスタッフは休みが少ないと感じ、残業や夜勤回数の多さから不調をきたす場合も珍しくありません。希望に応じ連休をつけるなどの策を講じ、負担が偏らないよう柔軟な働き方を検討するようにしましょう。

6.定期的な面談

上司との定期的な面談により、スタッフの不満や悩みを把握することも大切です。不安や悩みを抱えていても、多忙な業務中に上司に直接相談する機会を設けることは難しい場合もあります。

小さな不満や悩みであれば一時的に気にならなくなることもありますが、積もり積もってそれが大きな問題へ発展し、突然の離職につながるケースもあると認識すべきです。

そのため、定期的な面談を実施し、スタッフ一人ひとりの状況を丁寧に把握しましょう。

医療業界の人手不足に対策を講じて欲しい人材を獲得しよう

医療における人手不足の現状|厚生労働省データから解説

医療業界の人手不足は地域や規模により深刻度は異なります。だからといって、採用ターゲットを明確化せずに人材確保を進めるとミスマッチが生じ、かえって職場環境が悪化する危険性もあります。

まずは人手不足に陥っている原因分析を行い適切な対策を講じましょう。持続可能な医療提供体制の構築が、人手不足を改善するはずです。

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この記事の監修者:今 啓亮
この記事の監修者:今 啓亮

まるごと人事として560社以上の企業の採用支援
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2015年に東京でマルゴト株式会社(旧社名:株式会社ビーグローバル)を創業。
スタートアップから大手企業まで幅広く採用関連のプロジェクトに携わった後、2017年に月額制の採用代行”まるごと人事”の提供を開始。
2021年にバックオフィス代行”まるごと労務””まるごと経理”も開始。
「理想のサービスと理想の職場を同時実現する」を経営理念に掲げ、全員がフルリモートで働くユニークな組織運営を行う。
2022年に本社住所を東京から札幌に移転し、自身も関東から札幌に移住。

出演イメージ

2024年11月、ABEMAの報道番組「ABEMA Prime」に
採用のプロフェッショナルとして出演。
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