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デザイナー採用は、他職種以上に難易度が高い領域です。背景には人材不足や専門性の多様さ、即戦力志向の強まりなど、企業が直面する複数の課題があります。
ミスマッチや早期離職といったリスクも生じやすく、採用活動は長期化・高コスト化しがちです。本記事では、デザイナー採用が難しい理由を具体的に整理するとともに、成功のためのポイントや有効な手法を解説します。
自社の採用戦略を見直し、実践的な改善策を得られる内容となっているのでぜひ参考にしてください。

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デザイナー採用が難しい6つの理由
デザイナーの採用は、他職種と比較しても独特の困難を伴います。背景にある具体的な6つの要因を、視点ごとに分けて解説します。
デザイナー人材そのものが希少である
デザイナーという職業は、他の専門職と比べて人材の絶対数が少なく、求人市場でも常に奪い合いが起きている状態にあります。しかも、企業が求めるスキルセットを満たす経験者層はさらに限られ、採用のハードルが上がりがちです。
特にWeb領域では求人倍率が著しく高く、1人のデザイナーに対して複数の企業が競合する構図が一般化しています。需給の不均衡により、デザイナー採用は恒常的な難易度を伴う領域となっています。
業務内容が多様で要件の整理が難しい
デザイナーの業務は想像以上に幅広く、求める人材像を明確に定義することが困難な場合が多く見られます。例えば、以下のような職種ごとに必要なスキルや経験は大きく異なります。
職種 | 主な求められるスキル・知識 |
---|---|
UI/UXデザイナー | ユーザー体験設計/ツール操作/論理的設計力 |
グラフィックデザイナー | ビジュアル表現力/印刷知識/ブランド理解 |
キャラクターデザイナー | 世界観構築力/イラストスキル/ゲーム理解 |
Webデザイナー | HTML・CSS知識/情報設計/SEO視点 |
専門性の違いに加え、業務範囲がプロダクト開発やマーケティング支援、組織ブランディングなどにまたがるため、企業側が求人票で必要要件を定義しきれない事態が発生しがちです。
即戦力志向が強く未経験者が敬遠されがち
多くの企業が即時に業務を任せられる人材を必要としており、育成前提の採用を避ける傾向が強まっています。特に中小企業やスタートアップでは、教育リソースの不足から、未経験者や新卒者の採用は後回しにされやすい状況にあるのです。
実務経験のない候補者は、ポートフォリオの質や職務理解の浅さにより、選考にすら進めないケースが増加しています。即戦力の基準も企業ごとに異なり、基準を明示せずに「即戦力」を求める求人が散見されるため、応募者とのギャップも発生しやすいでしょう。
相互理解不足によるミスマッチがある
採用プロセスにおいて、企業と候補者双方の理解が十分でないまま入社に至るケースは後を絶ちません。企業側は、応募者の人物像やスキルを面接やポートフォリオのみで判断しようとすることが多く、実務での適応力やコミュニケーション能力の見極めに限界があります。
一方で候補者も、職場環境やチーム構成、業務フローに対する理解が乏しいまま意思決定を行うことがあり、入社後に期待との乖離を感じて早期離職に至る事例が目立ちます。ミスマッチは、採用コストだけでなく、既存メンバーの業務負担やモチベーションにも悪影響を与える要因となるでしょう。
フリーランス志向・多様な働き方が定着している
デザイナーという職種は自立的かつ創造性を重視する傾向から、企業に属さない働き方を選ぶ人が多く見られます。実際、フリーランスや副業、パラレルキャリアを志向する人が一定数存在しており、企業が提示する雇用条件だけでは惹きつけられないこともあるでしょう。
さらに、クラウドソーシングやSNSでの案件獲得が一般化したことにより、採用市場に出てこない人材が増えています。従来の求人広告や人材紹介に依存した手法では、求職者との接点を持つことが難しくなり、採用チャネルの限界が顕在化しています。柔軟性を求める働き手との接点を増やすためには、採用側の意識改革と手法のアップデートが不可欠です。
ポートフォリオやスキルの見極めが難しい
デザイナー採用における最終判断の多くは、ポートフォリオに依存しています。しかし、ポートフォリオの情報だけでは全体像を把握しきれないのも実情です。
見た目のクオリティが高くても、実際のプロジェクトでどう立ち回れるか、コミュニケーションや納期遵守といった非デザイン領域での適性は測れません。また、選考者側にデザインの専門知識が不足している場合、評価が主観的になりやすく、結果として有力な人材を見落とすリスクが高まります。
デザイナー採用でよくある失敗パターン
デザイナー採用においては特有の難しさがあり、計画段階から定着支援まで注意を怠るとミスマッチや早期離職につながります。以下では、代表的な失敗例をまとめました。
求める人物像や要件が曖昧なまま採用する
採用の初期段階で人物像を明確にせず進めると、入社後に必要な能力を持たない人材を迎える危険性が高まります。
デザイン職にはUI/UX、グラフィック、3DCGなど多様な専門分野が存在し、それぞれ異なるスキルや経験が求められます。求める役割や成果を数値や行動レベルで定義しなければ、抽象的な基準だけで選考が行われ、社内での活躍につながらない場合が多いでしょう。
採用段階で期待する役割を精緻に整理し、具体的な要件を言語化することが重要です。要件定義を徹底することで入社後に齟齬が生まれず、適材適所の採用が実現できます。
選考プロセスが他職種と同じ
一般職と同様の面接や書類審査だけでデザイナーを判断すると、実力や適性を見誤る危険があります。デザイン職には審美眼や構造的な思考力に加え、現場での協働力や時間管理能力が不可欠です。
短時間の面接では見抜きにくく、結果として評価が抽象化しがちです。実務課題を用いた検証や現場デザイナーによる評価を取り入れることで、スキル面や仕事への取り組み方を具体的に把握できます。
さらに、候補者の過去の成果物やプロジェクト参加経験を確認すれば、採用側の判断は格段に精度を増します。
カルチャーフィットを見極められない
スキルが優秀でも組織文化に適応できない場合、早期離職の可能性が高まります。口頭説明だけでは社内の価値観や働き方を伝えきれず、候補者が入社後にギャップを感じる事例も少なくありません。
- 社内見学や社員交流会を設ける
- トライアル業務を短期間依頼する
- アセスメントツールで行動特性を確認する
上記を通じて応募者の行動特性や価値観を事前に把握すれば、チーム適合性を見極めやすくなります。
内定後〜入社前のフォローが不足する
採用のゴールは内定承諾ではなく、入社後に定着し活躍してもらうことにあります。ところが内定通知後に接点が減ると、候補者が不安を抱き、辞退につながる場合があります。
特に競合からの引き抜きが活発な市場では、入社までの期間が気持ちの揺らぎを生みやすいでしょう。人事や現場担当者が定期的に連絡を取り、業務や職場環境について具体的に説明することが有効です。
さらに、入社後の初期段階でメンターを配置すれば相談できる場が生まれ、心理的安全性が高まります。
採用コストが高すぎて長期化する
デザイナー採用は市場競争が激しく、費用や期間が過剰になると現場の負担を増やす結果を招きます。求人媒体費や紹介料、面接調整の人件費まで含めると支出は膨らみやすく、特に即戦力を狙うと条件面で競合に負ける恐れもあります。
採用活動が長期化すれば既存メンバーの業務過多につながり、離職リスクを高める悪循環も生じるでしょう。書類選考の効率化や面接回数の統合などで、リードタイムを短縮することが重要です。
さらに、ポテンシャル人材を育成対象として取り込む視点を持てば、将来的なリソース不足を回避できます。

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デザイナー採用を成功させる5つのポイント
採用市場で競争が激しいデザイナーを迎えるためには、一般職とは異なる戦略が必要です。以下では、成功につながる重要な観点を具体的に解説します。
スキルだけでなく適性や特性も見極める
デザイナー採用では、実務スキルのみを評価すると入社後に文化的な齟齬が生じやすいでしょう。特に、ポートフォリオや短時間の面接だけでは人柄や働き方の傾向を見抜きにくいため、ミスマッチの要因となります。
採用成功のためには、特性診断やコミュニケーション力の確認など、多角的な手段を組み合わせる必要があります。さらに、短期的な試用やプロジェクト参加を通じて観察すれば、数字や作品では把握できない部分が明らかになるでしょう。
柔軟な働き方を提示する
デザイナーは自由度の高い環境で創造力を発揮しやすいため、雇用条件に柔軟性を持たせることが効果的です。リモートワークや副業可の制度は魅力的な選択肢となり、候補者の幅を広げる要因になります。独立志向の強い人材や、家庭と両立したい人材に響きやすい点も特徴です。
- 自宅作業を認めるリモート制度
- 勤務時間を調整できるフレックス制度
- スキルに応じた副業や業務委託の活用
上記を組み合わせることで多様な人材を呼び込みやすくなり、採用競争力が強化されます。
自社の魅力を「ビジュアル」でも伝える
デザインに関わる人材は視覚的な要素に敏感であるため、企業紹介においても言葉だけでなく視覚表現が大切です。魅力的なオウンドメディアやSNSで、社内環境や制作実績を分かりやすく発信すれば、応募者の興味を引きつけられます。
具体的なプロジェクト規模や成長の機会を画像や動画で提示すると、キャリア形成への期待も高まります。また、実際のデザインチームの働く様子をコンテンツ化することで、職場の雰囲気が直感的に伝わります。
評価基準をデザイン職特化型にカスタマイズする
デザイナー採用では、一般的な評価指標だけでは適切な判断が困難です。特に人事担当が専門知識を持たない場合、選考が感覚的になりやすく、現場のニーズとずれが生じます。
改善のためには、使用ツールや求める成果物を明確に言語化し、評価フローを標準化することが求められます。
- 色彩感覚
- 情報設計力
- 共同作業スキル
上記を評価項目に組み込み、全関係者が理解できる形に落とし込むと公平性が高まります。
選考に現場デザイナーを巻き込む
専門職の実力や適性を正しく見極めるには、現場の知見を反映することが欠かせません。人事担当だけで面接を進めると、成果物の質や作業プロセスの理解が不十分になる恐れがあります。
現場のデザイナーを面接や選考プロセスに同席させると、候補者の技術力や思考方法を具体的に評価できます。また、短期課題や実務試験を導入することで、チームとの相性や作業スピードも確認可能です。
現場の声を反映することで、採用の透明性と精度が高まり、入社後の定着にもつながります。
知っておきたいデザイナー採用の手法4選
ここでは、デザイナー採用に効果的な4つの方法を紹介します。
ダイレクトリクルーティング
企業側が候補者に直接働きかける方法は、潜在的な転職希望者やハイレベルな人材にリーチできるメリットがあります。SNSでの発信やポートフォリオサイトの活用は、知名度が低い企業でもデザイナーからの注目を集めやすいでしょう。
一方で、文面作成や継続運用には手間がかかり、炎上リスクも伴います。積極的な情報発信を継続することで、自社に関心を持つ層を増やすことが可能です。
手法別の強みや注意点は、以下を参考にしてください。
手法 | 強み | 注意点 |
---|---|---|
SNS | 拡散力があり若手層に強い | 運用の継続と炎上対策が必須 |
ポートフォリオサイト | 作品を事前確認でき効率的 | 自社情報発信の質が問われる |
デザイン職専門の人材紹介・派遣会社の活用
短期間で採用を進めたい企業にとって、専門エージェントや派遣会社の支援は有効です。市場や職種に詳しい担当者が候補者を選定するため、質の高い人材紹介を受けられます。
また、紹介予定派遣を利用すれば、実際の働きぶりを確認した後に本採用へ移行できる点もメリットです。ただし採用単価は高めであり、依存しすぎると社内にノウハウが蓄積しにくい課題があります。
コンテストやイベントからのスカウト
学生や若手デザイナーの発掘には、作品展示会や逆求人イベントを活用する方法が効果的です。会場で直接ポートフォリオを確認できるため、技術力だけでなく制作姿勢や熱意まで把握できます。
意欲的に参加している人材と早期に接触できる点も強みです。一方で、イベントの開催時期や地域に依存するため、継続的な採用には不向きな面があります。採用活動を補完する施策として活用すれば、将来性のある人材との出会いにつながります。
副業から社員への登用
フリーランスや副業デザイナーを契約から社員へ移行する方法は、実務を通じて能力やカルチャーフィットを確認できる点で効果的です。短期的な関わりから始めれば、双方が安心して雇用関係を築けます。
コストを抑えながら多様なスキルを導入できる利点がある一方、情報管理や契約終了後のノウハウ蓄積には注意が必要です。段階的に社員化を進めることで、即戦力確保と定着率向上を両立できます。

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成功事例に学ぶデザイナー採用のヒント
デザイナー採用の難易度は高く、抽象的な理論よりも現場での成功事例から学ぶ方が実践的です。以下では、成果につながった具体的な取り組みを紹介します。
ポテンシャル重視の採用が功を奏した中小企業の事例
経験豊富な人材が不足する環境では、潜在能力を見抜いた採用が成果を生みます。営業職からキャリアチェンジを希望する20代人材を、紹介予定派遣として迎え入れた事例があります。
当初はツール操作や理解度に不安がありましたが、学習意欲と向上心が強く、教育担当者との協働で急速に成長しました。結果として正社員登用につながり、企業の課題であった若手確保も実現しました。
働き方改革を進めて離職率を下げた事例
多様な働き方を認める仕組みは、応募増加と定着率向上の両方に貢献します。例えば、女性の採用を強化する目的で募集広告に以下のような勤務条件を明示した事例があります。
- リモート勤務の選択肢を提示
- 家庭と仕事を両立しやすい点を強調
- 実際の環境改善を丁寧に説明
上記を実施することで女性人材を採用でき、かつ長期的な活躍にもつなげられるでしょう。
ビジュアルやUIを訴求して採用ブランディングに成功した事例
デザイナーは視覚的表現の品質を敏感に評価するため、採用広報におけるデザインの質が応募意欲に直結します。
求人広告のメインビジュアルを明るくポップな色調で構成し、若手層に強い印象を与えた事例があります。応募数の増加や、ターゲット人材へのリーチに成功しやすくなるでしょう。
また、自社サイトやオウンドメディアでも統一感のあるデザインを打ち出せば、ブランド力を高める効果を得られます。
まとめ
デザイナーの採用は、専門領域ごとに求められるスキルが多岐にわたり、ポートフォリオの評価やカルチャーフィットの見極めが難しいことから、他職種以上に難易度が高いとされています。さらに市場での人材不足が続く中、採用活動の長期化やミスマッチによる早期離職といったリスクも企業にとって大きな課題となっています。
デザイナー採用の課題を状況を解決するためには、求人手法の見直しや候補者に響く情報発信、さらには外部の専門的な支援を取り入れることが有効です。まるごと人事ではデザイナー採用をはじめとする幅広い職種の採用課題に伴走し、戦略設計から実務代行まで一貫して支援しているのでぜひ一度ご相談ください。

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