採用・労務・経理に関するお役立ち情報

2025.06.12 更新日:2025.07.18
この記事の監修者:今 啓亮

この記事の監修者:今 啓亮

第3回 中小建設企業が直面する「母集団形成」の壁【特別企画:建設業界採用ガイドブック解説】

応募が集まらない、が当たり前?

中小建設企業の採用において、最も多く聞かれる悩みのひとつが「そもそも応募が来ない」というものです。

実際、厚生労働省の有効求人倍率(2024年2月時点)では、建設・採掘業は4.62倍と全業種中でも突出して高く、地域によっては10倍を超えるエリアもあります。これは、1人の求職者を10社以上で取り合っている状況を意味します。

特に地方や専門特化型の企業においては、「採用活動しても反応ゼロ」という事態が慢性化しており、それ自体を受け入れてしまっているケースすらあります。しかし本来は、「応募が来ない」のは構造の問題であり、改善可能な余地があります。

求人チャネルの使い分けが鍵

現在、建設業における求人チャネルは多様化しています。以下のような種類があります:

  • ハローワーク
  • 求人サイト(無料・有料)
  • 人材紹介会社
  • スカウト(ダイレクトリクルーティング)
  • 自社サイト・採用ページ
  • SNS(Instagram、Xなど)
  • リファラル(社員紹介)
  • 職業訓練校・高校・専門学校との連携

実際には「ハローワークだけで運用」「紹介会社に任せきり」といった偏りが多く、母集団形成に広がりが出ないのが現状です。

また、チャネルごとに適したターゲット像が異なるにもかかわらず、訴求内容を一律にしてしまうことも失敗要因です。たとえば「未経験者歓迎」と書きながら、熟練技能者の写真ばかりでは、求職者の心理的ハードルが上がってしまいます。

若手・女性・未経験者…新しい母集団のつくり方

応募数が伸びない背景には、採用ターゲットを自社都合で決めすぎているという点もあります。

これからは下記のような層の検討が不可欠です:

  • 未経験・異業種からの転職者
  • 育児がひと段落した主婦層
  • ITや設計志向の強い若手
  • 外国人材(特定技能・実習制度)

これらをターゲットにするなら、発信内容や使うチャネルも変える必要があります。

例えば、SNSでは「仕事と家庭の両立」「現場のやりがい」「人間関係のよさ」などが響きます。また、“ハードルを下げた導線設計”(現場見学歓迎/簡単応募フォーム)も重要です。

“量”よりも“濃さ”を重視した採用戦略へ

限られたリソースの中で最も効果的なのは、「マッチする人材」と出会う確率を高めることです。

そのためには、自社の強みや価値観を明確に打ち出す必要があります:

  • 「手刻み技術が残る唯一の工務店」
  • 「地域に根ざしたインフラ維持の仕事」
  • 「社長と距離が近く、若手にもチャンスがある」

これらは、テキストだけでなく写真・動画・社員インタビューで伝えると効果的です。

「求人票=会社案内」という意識をもつことで、応募率は確実に変わってきます。

次回予告

次回は、応募してきた求職者に“選ばれる”ために不可欠な「求人設計・情報発信の技術」について解説します。

募集要項・写真・採用サイトなど、具体的な改善ポイントをお伝えしていきます。

この記事の監修者:今 啓亮
この記事の監修者:今 啓亮

まるごと人事として550社以上の企業の採用支援
書籍『「本当にほしい人材」が集まる中途採用の定石』好評発売中

2015年に東京でマルゴト株式会社(旧社名:株式会社ビーグローバル)を創業。
スタートアップから大手企業まで幅広く採用関連のプロジェクトに携わった後、2017年に月額制の採用代行”まるごと人事”の提供を開始。
2021年にバックオフィス代行”まるごと労務””まるごと経理”も開始。
「理想のサービスと理想の職場を同時実現する」を経営理念に掲げ、全員がフルリモートで働くユニークな組織運営を行う。
2022年に本社住所を東京から札幌に移転し、自身も関東から札幌に移住。

出演イメージ

2024年11月、ABEMAの報道番組「ABEMA Prime」に
採用のプロフェッショナルとして出演。
> 出演した番組はこちら

  • X(Twitter)
  • facebook
  • note
  • YouTube

関連記事

新着記事