採用・労務・経理に関するお役立ち情報

2025.06.16 更新日:2025.07.18
この記事の監修者:今 啓亮

この記事の監修者:今 啓亮

第6回 現場で育ち、辞めない仕組みづくり【特別企画:建設業界採用ガイドブック解説】

「定着」は採用の成果である

せっかく時間と費用をかけて採用しても、早期離職が続けばその努力は無駄になってしまいます。特に建設業界では、現場に慣れるまでに一定の時間がかかるため、「3ヶ月以内」「1年以内」の離職率を下げることが、企業の安定成長に直結します。

定着率が高い企業には、次のような共通点があります:

  • 入社初日〜1週間の「迎え方」が丁寧
  • OJTとOFF-JTのバランスが取れている
  • 初期段階の業務が明確に定義されている
  • 困ったときの相談先が明文化されている

定着とは、制度や施策ではなく「文化」として根付くべきものです。そのためには、現場の理解と協力が欠かせません。

「放置しない」オンボーディング

「放置しない」オンボーディング

中途社員や若手社員が入社してまず直面するのは、「何をすればいいか分からない」という不安です。

このタイミングで放置されてしまうと、「歓迎されていない」「成長できなさそう」という印象を与えてしまい、離職リスクが一気に高まります。

そのために必要なのが、明文化されたオンボーディング(初期育成設計)です。たとえば:

  • 1週間目:社内ルールと安全教育/現場見学
  • 2〜3週間目:先輩同行による現場補助
  • 1ヶ月後:一部業務の単独対応開始
  • 3ヶ月後:現場責任者との振り返り面談

このような道筋があるだけで、新人は安心して業務に向き合えます。

また、オンボーディング責任者を決めて、進捗をチェックする仕組みを設けると、育成の属人化を防ぐことができます。

「育つ現場」にはルールと対話がある

定着と育成のカギを握るのは、現場の風土です。なんでも現場任せ、あとは本人のやる気次第という状況では、人は育ちません。

育つ現場には、以下のような仕組みがあります:

  • 新人への声かけを習慣化(毎朝「困ってることある?」)
  • ミスやトラブルがあったときの共有ルール(怒らない・責めない)
  • 週1回の簡単な振り返りミーティング
  • ベテラン社員への「育成役割」の明示

こうした文化を「当たり前」として根付かせるには、会社としての姿勢が問われます。

現場リーダーに対して「技術だけでなく、人を育てることも役割」だと伝えることが第一歩です。

離職予兆の早期発見と対応

どんなに丁寧に育成していても、離職はゼロにはなりません。だからこそ、辞める前のサインを察知し、先手を打つことが重要です。

たとえば:

  • 以前よりも挨拶が少なくなる
  • 報連相が減る/雑談がなくなる
  • 無断欠勤や遅刻が出始める

こうした兆候が見えたら、上司や人事が早めに声をかけ、面談を行うことが大切です。その際、「辞めるな」と説得するのではなく、「不満や不安」を拾い上げるスタンスが信頼関係につながります。

また、第三者的な立場(例:外部の育成コンサル、信頼できる先輩社員など)を活用してヒアリングすることで、より率直な意見が聞けることもあります。

育成の文化は「評価制度」に表れる

最後に重要なのが、人を育てた人がきちんと報われる仕組みです。

  • 若手の定着率が高いリーダーは高評価
  • OJT担当には毎月の「育成振り返りシート」を提出してもらう
  • 現場の新人教育状況を経営会議で共有

こうした取り組みを通じて、「人を育てることが大切だ」という価値観を組織全体で共有できます。

育成文化のある会社は、次第に「辞めない会社」「人が集まる会社」へと変化していきます。

次回予告

次回は、「人事評価とキャリア支援」をテーマに、成長を可視化し、個人と組織がともに伸びる仕組みづくりについて解説します。

この記事の監修者:今 啓亮
この記事の監修者:今 啓亮

まるごと人事として550社以上の企業の採用支援
書籍『「本当にほしい人材」が集まる中途採用の定石』好評発売中

2015年に東京でマルゴト株式会社(旧社名:株式会社ビーグローバル)を創業。
スタートアップから大手企業まで幅広く採用関連のプロジェクトに携わった後、2017年に月額制の採用代行”まるごと人事”の提供を開始。
2021年にバックオフィス代行”まるごと労務””まるごと経理”も開始。
「理想のサービスと理想の職場を同時実現する」を経営理念に掲げ、全員がフルリモートで働くユニークな組織運営を行う。
2022年に本社住所を東京から札幌に移転し、自身も関東から札幌に移住。

出演イメージ

2024年11月、ABEMAの報道番組「ABEMA Prime」に
採用のプロフェッショナルとして出演。
> 出演した番組はこちら

  • X(Twitter)
  • facebook
  • note
  • YouTube

関連記事

新着記事