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近年、採用活動で「エンゲージメント」という言葉が頻繁に使われるようになりました。しかし、このエンゲージメントが具体的に何を指すのか分からず、戸惑った経験はないでしょうか。エンゲージメントは、企業の生産性や人材の定着率に大きく関わるため、近年特に注目されています。
そこでこの記事では、採用におけるエンゲージメントについて詳しく解説します。

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目次
人事・採用における「エンゲージメント」の定義
まずは、人事・採用分野におけるエンゲージメントがどのようなものかを見ていきましょう。
企業と社員が深く信頼し合う状態
「エンゲージメント」は、もともと「約束」「契約」「雇用」といった意味を持つ言葉です。しかし、人事・採用分野では「企業と従業員が深く結びついている状態」を指します。具体的には、従業員が企業を信頼し、互いに貢献し合える関係性のことです。このエンゲージメントが高ければ、従業員は会社に愛着を持つため、積極的に企業利益へ貢献してくれるでしょう。
優秀な人材の流出を防ぐ効果に注目
エンゲージメントが高いことでもたらされる効果は、従業員の生産性向上に留まりません。従業員自身が勤務する企業に愛着を持っている状態であるため、優秀な人材の流出を防ぐことができます。
近年は終身雇用が当たり前ではなくなり、労働人口も減少しています。その結果、人材不足に悩む企業が増えているのが現状です。ただでさえ人手不足の中、会社の戦力となる人材に辞められてしまうと、企業にとって大きな打撃となるでしょう。
そこで、企業と従業員の関係を良好に保ち、人材を確保することが重視されるようになり、「エンゲージメント」という言葉が広く使われるようになりました。
「ロイヤルティ」との違い
エンゲージメントと似た言葉に「ロイヤルティ」があります。ロイヤルティは、従業員が組織に対して忠誠心を持って行動することを指す言葉です。一方、エンゲージメントは、企業と従業員が相互の関係性の中で結びつきを強めていくことを指します。どちらも企業と従業員の関係性を表す言葉ですが、意味合いは大きく異なるため、使用する際は注意が必要です。
エンゲージメント採用とは
近年、キャリアアップのための転職が一般的になり、採用した人材の早期離職に悩む企業が増えています。 そんな中で注目されているのが、長期的な活躍を促すための「エンゲージメント採用」です。
人事部門におけるエンゲージメントとは、「社員の会社に対する愛着心や愛社精神、思い入れ」を表します。これは、従業員が企業を信頼し、自社のファンになっている状態とも言えるでしょう。
つまり、エンゲージメント採用とは、単にスキルだけでなく、自社と文化的にマッチした人材を採用する手法を指します。
なぜ採用にエンゲージメントが必要なのか?
そもそもエンゲージメントとは、マーケティング分野で使われる言葉で、企業と消費者の深いつながりや関係性を強める手法を指します。情報が溢れる現代では、商品自体の差別化が難しくなっていますが、消費者に愛着を持ってもらうことで、一度きりではない継続的な購入へとつながります。
この考え方は採用活動でも同じです。採用の段階で、自社とのマッチ度を深く見極め、候補者に企業への愛着や信頼感を抱いてもらえれば、長期的に活躍してくれる人材を確保できます。これにより、入社後のミスマッチによる人材の流出を防ぐことが可能です。
特に、社員の紹介や推薦によるリファラル採用では、エンゲージメント採用が重要な鍵となります。自社をよく理解している社員が推薦するため、企業に最適な人材を確保しやすく、入社後のギャップによる早期離職を未然に防ぐことにもつながるでしょう。
エンゲージメント採用の特徴
従来の採用では「能力が高く、バランスの取れた優秀な人材」の獲得が主流でしたが、エンゲージメント採用はこれとは異なる特徴を持っています。
スキルよりも「フィット」を重視する採用基準
エンゲージメント採用において重視されるのは、単なる即戦力や高い能力を持つ人材だけではありません。
- 働きがいを求める人材
- 仕事や会社に愛着を持つ人材
- 長期的に能力を伸ばせるポテンシャルを秘めた人材
上記のように、「自社の文化にどれだけマッチしているか」「入社後にどれほど成長できる可能性を秘めているか」といった点を重視して採用する点が、このアプローチの最大の特徴と言えるでしょう。そのため、選考時には「自社の文化にどれだけ深く共感してくれているか」をしっかり見極めることが非常に大切になります。
社員が主役!現場を巻き込む採用活動
ただ求人サイトに情報を掲載するだけでなく、現場の社員による協力が非常に重要です。具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。
- 現場社員による説明会への登壇
- SNSなどを活用した口コミの創出
- リファラル採用(社員による人材紹介)
特に新卒採用では、面接官や採用イベントに関わる社員の行動や雰囲気が、求職者が企業へのエンゲージメントを測る重要な指標となります。
中途採用においても、エンゲージメントの高い社員によるリファラル採用は、近年その比重を高めています。自社に誇りを持って働いている社員は、自社に合った知人や優秀な後輩を紹介するなど、採用活動に積極的に協力してくれるでしょう。

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エンゲージメント採用で得られるメリット
エンゲージメント採用を導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
1.定着率の高い人材を獲得
近年、年功序列から成果主義への移行が進み、キャリアアップのための転職が一般的になったことで、企業の離職率は高まる傾向にあります。スキル重視の採用だけでは、より良い報酬を提示する企業が現れた際に、人材が流出する可能性が高くなります。
しかし、エンゲージメント採用では、会社への愛着心を持ち、将来的に成長が見込める人材を採用するため、仕事へのモチベーションも高く、離職のリスクを低減できます。
2.自社に最適な人材を見極める分析
エンゲージメント採用を進めるにあたって、社員へのアンケートなどを通じて自社にマッチする人材の基準を詳細に分析することになります。このプロセスで、社員の特徴や共通点が洗い出され、改めて自社の文化や社員の考えを深く理解し、把握することが可能です。
その結果、採用時にその共通点に合った人材を選べるため、離職率を低く抑えられ、長期的な視点で見ても頼れる戦力となる社員を獲得できるでしょう。
3.社員が採用活動の強力なサポーターに
エンゲージメントの高い社員は、愛社精神が強く、会社への貢献意欲も高まります。そのため、会社説明会への参加や、専門性の高い職種の採用面接など、複数の部署の社員に協力を依頼しやすくなり、結果として効率的な採用活動が可能になります。
エンゲージメント採用のデメリット
次に、エンゲージメント採用を行う上でのデメリットをご紹介します。
1.人材育成に時間を要する可能性
企業への愛着心やマッチ度、将来性を見込んで人材を採用するため、即戦力となるまでに時間がかかることを念頭に置く必要があります。そのため、社内の教育体制が十分に整っていない場合、人材がなかなか育たないという課題が生じる可能性があります。
2.長期的な視点での採用戦略
エンゲージメント採用は、あくまでスキルにとらわれず、自社と本質的にマッチした人材を採用する手法です。このため、すぐに活躍できる即戦力の人材獲得は期待しにくいでしょう。
また、自社に合った人材が応募してきた場合に選考を進める形になるため、全体の採用期間が長期化する可能性が高い点も考慮しておく必要があります。
採用エンゲージメントを高める方法
エンゲージメント採用の重要性を理解した上で、実際にどのように活用し、高めていくべきかを考えていく必要があります。
社員の「本音」から採用ヒントを得る
エンゲージメント採用を高めるには、まず、自社の社員が何を感じているのかを把握する必要があります。
アンケートを活用することで、仕事内容、企業の雰囲気、キャリア制度、対人関係など、社員が抱いている考えを把握できます。これにより、採用時に自社とマッチする人材の基準を明確にできるでしょう。
ただし、アンケートを作成する際は、「社員の感情や価値観」に焦点を当てるよう心がけることが大事です。どんなに高い報酬を与えても人材が離職する現代において、「ここで働き続けたい」という愛着を抱いてもらうためには、社員が会社に対してどのような感情を持っているかを把握することが不可欠です。
どのような仕組みにポジティブな感情を抱き、また何に対してネガティブな感情を抱いているのか。このように、社員一人ひとりの声に真摯に向き合うことが大切です。
就職サイトや会社説明会での共感と魅力づけ
就職サイトや自社開催の説明会を通じて、エンゲージメント採用を高めることは十分に可能です。
これまでお伝えしてきたように、会社の理念や想い、ビジョンを明確に伝えることで、それに共感する求職者との接点が生まれます。自社の魅力や他社との違いを明確にし、「どんな人材を求めているのか」を具体的に示すことで、求職者に好感や信頼感を抱かせ、「この会社で働きたい」と思ってもらえるような説明会を企画していく必要があります。
そして、説明会に登壇する社員は、いわば会社の象徴です。一人ひとりの行動や言葉が、求職者が会社を選ぶ大きな理由になります。だからこそ、日頃から社内でのエンゲージメントを高めておくことが大事です。
また、会社説明会のような正式な場だけでなく、お茶会や社員との懇談会など、気軽に参加できる機会を設けることも有効です。これにより、求職者とより深い接点を持つことができ、相互理解を深めることにつながるでしょう。
選考時には、グループディスカッションなど実施
求職者の仕事への価値観やポテンシャルを深く理解するために、面接だけでなく多様な選考方法を取り入れることが効果的です。具体的には、グループディスカッションや、実務体験を主とするジョブ型インターンシップなどを実施することで、その有無をより的確に判断できます。
エンゲージメント採用を成功させるポイント
エンゲージメントを重視した採用施策には、どのような成功のポイントがあるのでしょうか。以下で、その具体的なポイントを4つお伝えします。
企業理念・文化を前面に出す
自社の理念やバリューを明確に打ち出すことは、エンゲージメント採用の第一歩となります。たとえば、パタゴニア社は環境保護という理念を前面に掲げ、これに共感する人材を引き寄せていますよね。求職者に企業の独自性を印象づけ、「この会社で働きたい」という共感を得ることがポイントです。社員一人ひとりが体現する価値観を、採用活動で存分にアピールしていきましょう。
社員の生の声を発信
社員の声は、求職者に最も響くコンテンツです。そのため、社員インタビューやオフィス紹介の動画、座談会の記事など、社員の生の声を伝える多様な施策を展開しましょう。例えば、イノーバでは社員がブログで日常的な社内の様子を発信し、求職者が「この会社で働く」イメージを膨らませられるようにしています。このように、求職者の共感を呼ぶリアルな社員の声を届けることが大事なポイントになります。
候補者と信頼関係を築く密なコミュニケーション
採用プロセスでは、候補者と密なコミュニケーションをとりましょう。候補者の関心事や不安な点に丁寧に耳を傾け、適切なフィードバックを行いましょう。このように双方向のコミュニケーションを通じて、候補者との信頼関係を築くことができます。
具体的なキャリアパスで入社意欲を高める
優秀な人材を惹きつけるためには、入社後のキャリアパスを具体的にイメージさせることが重要です。候補者には、その企業で働くことでどのようなスキルが身につき、どんなキャリアを描けるのかを具体的に伝えましょう。豊富な成長機会をアピールすることで、候補者の入社意欲をさらに高められるはずです。

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エンゲージメント採用の課題と解決策
エンゲージメント採用を実践する上で、どのような課題が考えられるでしょうか。その解決策と合わせてお伝えします。
社員を巻き込むエンゲージメント採用の推進
エンゲージメント採用では、人事部門だけでなく、社員一人ひとりが重要な役割を担います。 全社的な採用協力体制を構築し、社員が自主的に採用活動へ参画するよう促すことが欠かせません。そのためには、エンゲージメント採用の意義を全社で共有し、日常的な社内コミュニケーションの中で採用への問題意識を持つことを心がけましょう。
採用と現場の連携強化がカギ
エンゲージメント採用を進めるには、採用部門と現場社員の密接な連携が欠かせません。採用部門は、現場の知見を活かした採用活動を進めると同時に、社員へ積極的に情報共有や意見交換を行っていく必要があります。社内SNSなどのツールを使い、社員と採用部門間のコミュニケーションを活性化することも効果的でしょう。
採用効果を最大化するPDCA
エンゲージメント採用は、試行錯誤を重ねる中で育まれていくものです。採用活動の結果を数値で評価・分析し、より効果的な施策へとつなげるPDCAサイクルを確立させましょう。採用部門は、現場の声に耳を傾けながら、柔軟に採用手法を見直し、組織全体を巻き込んでいく必要があります。
エンゲージメント採用を導入すべき企業とは
エンゲージメント採用は、企業への愛着心が高い従業員を採用していく手法です。エンゲージメントの高い社員は愛社精神も強く、会社への貢献度も高まる傾向にあります。
そのため、単に能力の高さだけでなく、長い期間にわたって共に働き、会社を支えてくれる人材を求めている企業に特におすすめできる採用戦略と言えるでしょう。
まとめ
エンゲージメント採用は、企業の成長を支える優秀な人材の獲得に直結します。自社の個性や魅力を明確に伝え、社員一人ひとりが発信者となって求職者に届けていく。そうした継続的な努力の積み重ねが、求職者との強固な信頼関係を築き、採用競争力の源泉となるのです。
社員のエンゲージメントを採用における強力な武器とするためには、組織全体で知恵を出し合い、試行錯誤を繰り返すことが非常に大切です。採用における新たな挑戦を恐れない姿勢こそが、激化する採用競争を勝ち抜く原動力となるでしょう。

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