採用・労務・経理に関するお役立ち情報

2024.11.29 更新日:2025.06.13
この記事の監修者:小林 美希

この記事の監修者:小林 美希

【新入社員の入社手続き完全解説】会社側でやるべき22のチェックリスト

新入社員の入社手続きは、企業の第一印象を左右するため、非常に重要なプロセスです。

しかし、手続きは多岐にわたり、中には複雑なものも含まれるため、人事労務担当者にとっては大きな負担となりがちです。

この記事では、会社側が行うべき新入社員の入社手続きの流れと、それぞれのチェックリストを紹介します。

改善できる業務がわかる

入社手続きチェックリスト

入社前の準備から入社後のフォローアップまで、手続きの全体像をわかりやすく解説!効率化のためのポイントや実務に役立つ情報を紹介

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目次

会社側が対応する入社手続きの基本とは?

会社側が対応する入社手続きの基本とは?

企業が新しく従業員を迎える際には、適切な入社手続きを行うことが重要です。入社手続きは、単に書類を提出・回収するだけでなく、労務管理や社会保険手続き、社内環境へのスムーズな適応を支援するための重要なプロセスです。

入社手続きの目的と重要性

1. 法的義務の履行

企業は労働基準法や各種社会保険制度に基づき、従業員を適切に管理する責任があります。入社手続きでは、以下のような法的義務を果たすことが求められます。

  • 雇用契約の締結(労働条件通知書の交付)
  • 社会保険(健康保険・厚生年金)および雇用保険の加入
  • 税務手続き(源泉徴収・扶養控除申告書の提出)

これらを適切に行わないと、行政指導や罰則の対象となる可能性があります。

2. 労働環境の整備とスムーズな業務開始

新入社員が安心して業務に取り組めるよう、企業は必要な情報を提供し、環境を整えることが求められます。例えば、

  • 社内ルールや就業規則の説明
  • IDや社内システムの発行
  • 必要な研修の実施

これにより、新入社員が早期に職場に馴染み、生産性を高めることができます。

3. 労使トラブルの防止

入社時に労働条件や待遇について明確に説明し、書面で確認しておくことで、後のトラブルを防ぐことができます。

  • 賃金や勤務時間の誤解を防ぐ
  • 業務範囲や評価制度を明確にする

特に、労働条件通知書の不備や説明不足は、退職時のトラブルにつながることがあるため、慎重に対応する必要があります。

入社手続きは、企業にとって単なる形式的な作業ではなく、法的義務の履行、新入社員のスムーズな業務開始、労使トラブルの防止といった重要な役割を担っています。適切な手続きを行うことで、新入社員の定着率向上や企業の信頼性向上にもつながります。

新入社員手続きに必要なチェックリスト22項目

新入社員手続きに必要なチェックリスト22項目

会社側が対応する新入社員の手続きに必要な22項目は、以下のとおりです。各項目の手続きタイミングが異なりますので、ご確認ください。

【新入社員手続き・会社側でやるべきチェックリスト22】

No項目名称必要なタイミングチェック欄
1採用通知書(内定通知書)採用内定後すみやかに
2入社誓約書初出社までに渡す書類
3労働条件通知書
4雇用契約書
5年金手帳初出社時に提出が必要な書類
6マイナンバー
7給与振込先申請書
8給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
9源泉徴収票
10雇用保険被保険者証(雇用保険被保険者証番号)
11健康保険被扶養者異動届・国民年金第3号被保険者届
12健康診断書
13各種手当支給申請書
14社会保険の加入手続き入社後に行う行政手続き
15雇用保険の加入手続き
16労災保険の適用
17所得税に関する手続き
18住民税に関する手続き
19労働者名簿の作成入社後に行う社内手続き
20賃金台帳の作成
21出勤簿の作成
22執務環境・貸与品・備品の提供
企業が知るべき必須手続き

入社手続き完全ガイド

採用から配属まで、トラブル防止と効率化のための重要ポイントをまとめたチェックリストです

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入社手続き|新入社員の初出社までに渡しておく4つの書類

新入社員の初出社までに渡しておく4つの書類

まず最初に、新入社員の入社初日までに配布すべき4つの書類について、紹介します。

採用通知書(内定通知書)

採用通知書(内定通知書)を作成する際は、以下の項目を含めましょう。

  • 新入社員の氏名
  • 企業名および代表者氏名
  • 入社日
  • 入社までに準備する物
  • 内定取り消し事由
  • 人事連絡先

入社誓約書

入社誓約書は、入社前に配布し、署名・捺印の上、入社当日に提出してもらいましょう。

作成時には、以下の項目を含めましょう。

  • 誓約内容(就業規則の遵守や倫理規定に関する同意)
  • 日付
  • 署名・捺印

労働条件通知書

労働条件通知書を作成する際は、以下の項目等法令で定められた項目を必ず記載しましょう。

  • 労働契約の期間
  • 就業場所
  • 業務内容
  • 始業終業時刻
  • 所定時間外労働の有無
  • 休憩時間/休暇
  • 賃金の決定、計算および支払いの方法
  • 賃金の締め日と支払いの時期
  • 退職に関する事項

雇用契約書

雇用契約書は、入社前に配布し、署名・捺印の上、入社当日に提出してもらいましょう。

作成時には、以下の項目を含めましょう。

  • 契約期間(入社日)
  • 就業場所
  • 賃金
  • 想定残業時間
  • 休日
必須書類の準備を見逃さない

入社手続きチェックリスト

初出社までに渡すべき重要書類の作成・管理方法を詳しく紹介。手続きの効率化とミス防止に役立ちます。

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入社手続き|新入社員の初出社時に提出してもらう8つの書類

入社手続き|新入社員の初出社時に提出してもらう9つの書類

次に、新入社員が初出社時に提出する8つの書類についてご説明します。

基礎年金番号

基礎年金番号は、社会保険の手続きに必要です。

提出された年金手帳を、会社で一括保管し、退職時に返却するケースもあります。

2022年4月以降は年金手帳が廃止された為、年金手帳の提出を不要とする会社もあり、マイナンバーのみで社会保険手続きを行うことが可能です。

マイナンバー

マイナンバーは、年末調整などの税金手続きや、社会保険の手続きで必要となります。

収集する際は、利用用途を伝えることが求められます。

給与振込先申請書

給与振込先申請書(給与振込先の口座情報)は、指定の口座に給与を振り込むために必要です。

提示方法は、企業側で自由に指定できます。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、社会保険や各種控除を受けるために必要な書類です。

毎月の所得税額を適切に控除するためにも、必ず提出する必要があります。

源泉徴収票

源泉徴収票は、転職者が対象となり、退職と入社が同じ年の場合、年末調整の税務処理に必要です。

雇用保険被保険者証(雇用保険被保険者証番号)

雇用保険被保険者証(または雇用保険被保険者番号)は、転職者に必要な書類で、前職での雇用保険加入状況を確認する際に使用します。

健康保険被扶養者異動届・国民年金第3号被保険者届

健康保険被扶養者異動届および国民年金第3号被保険者届は、扶養者がいる場合に提出し、社会保険手続きに必要な書類です。

健康診断書

健康診断書は、事前に準備してもらうか、入社後3カ月以内に提出してもらいます。

企業は、労働安全衛生法に基づき、一定の健康診断を実施する義務があります。

各種手当支給申請書

手当支給申請書には、通勤手当や住宅手当などが含まれます。

入社手続き|新入社員の入社後に行う5つの行政手続き

入社手続き|新入社員の入社後に行う5つの行政手続き

社員入社後に必要な手続きとして、5つの行政手続きについて説明します。社会保険や雇用保険の加入手続きには法定期限が設けられています。手続きに遅延・ミスがあると罰金・罰則が発生するものもありますので、確実に対応しましょう。

社会保険の加入手続き

社会保険加入手続き(健康保険・厚生年金保険)は、雇用開始から5日以内に、所管の年金事務所や健康保険組合に対して行う必要があります。

2024年10月からは、従業員数51人以上の企業で働くパート・アルバイトも、新たに社会保険の適用を受けることになります。

詳しくは、厚生労働省の公式サイトをご確認ください。

厚生労働省公式サイト:社会保険適用対象となる加入条件

雇用保険の加入手続き

雇用保険の加入手続きは、雇用開始の翌月10日までに、所管の公共職業安定所(ハローワーク)に対して行います。

労災保険の適用

労災保険は、職業の種類を問わず、賃金を支払われる従業員(労働者)に対して必ず適用されます。業務上の事故や病気に対して保障し、各事業所の加入手続きは、所管の労働基準監督署で行います。

所得税に関する手続き

所得税に関する手続きは、入社時に提出された「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」をもとに、源泉徴収簿を作成します。

住民税に関する手続き

住民税に関する手続きは、特別徴収の場合に必要です。

特別徴収とは、事業主が従業員の代わりに毎月の給与から住民税を天引きし、従業員が住民登録している市町村に納税することを指します。

各市町村によって書類提出の期限が異なるため、注意が必要です。

入社手続き|新入社員の入社後に行う4つの社内手続き

新入社員の入社後に行う4つの社内手続き

社員入社後に必要な社内手続きを、4つご紹介します。

労働者名簿の作成

労働者名簿は、労働基準法に基づき、保存期間が5年と定められています。

名簿には「労働者の氏名」「生年月日」「性別」「雇用年月日」「退職や死亡年月日とその理由・原因」を記載する必要があります。

賃金台帳の作成

賃金台帳は、労働基準法に基づき、保存期間が5年と定められています。

「労働者の氏名」「性別」「賃金計算期間」「労働日数」「労働時間数」「休日労働時間数」「基本賃金や手当、賞与額」などを記載する必要があります。

出勤簿の作成

出勤簿は、労働基準法に基づき、保存期間が5年と定められています。

「労働日数」「日別の労働時間数」「始業・終業時刻」「時間外労働や深夜残業時間」などを記録する必要があります。

執務環境・貸与品・備品の提供

社員がスムーズに業務を開始するためには、パソコンや電話などの貸与品を準備することも重要です。また、配属先の部署への申し送りが十分であれば受け入れ側の用意もできるでしょう。

会社によっては、給与計算システムや人事システムへの情報入力が必要になる場合もあります。

これらの入社手続きは膨大な業務量を伴うため、迅速に進めると同時に、ミスがないよう慎重に業務管理を行うことが求められます。

重要書類をしっかり把握

提出書類の把握もバッチリ!
入社手続きチェックリスト

初出社時に必要な書類と行政手続きを網羅。手続きミスを防ぐためのポイントをわかりやすく解説!

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【初めての労務担当者向け】よくある質問6選

【初めての労務担当者向け】よくある質問

ここからは、よくあるご質問にお答えします。

1:雇用保険被保険者証書を紛失したときはどうする?

雇用保険被保険者証を紛失し、被保険者番号がわからない場合は、社員本人が公共職業安定所(ハローワーク)の窓口で再発行を申請することができます。

ハローワーク公式サイト:雇用保険被保険者証再交付申請書について

2:年金手帳・基礎年金番号通知書を紛失したときはどうする?

年金手帳を紛失し、基礎年金番号がわからない場合は、社員本人が手続きを行うことで、基礎年金番号通知書の再交付を受けることができます。

日本年金機構公式サイト:「基礎年金番号通知書再交付申請書」はどうしたら手に入れられますか。

3:新しい健康保険証の交付が遅いときはどうする?

病院によっては、一時的に診療費を全額自己負担する場合がありますが、保険証が交付された後に保険適用分を返金してもらうことが可能です。

社員が全額立て替えた場合も、保険証交付後に保険組合で払い戻しの手続きを行うことができます。この際、領収書を必ず保管するように指示しましょう。

また、健康保険被保険者資格証明書を発行することで、一時的に保険証の代わりとして使用することも可能です。

日本年金機構公式サイト:従業員に健康保険被保険者資格証明書を交付するときの手続き

4:派遣社員を雇用するときはどうする?

新入社員が派遣社員の場合、社会保険などの入社手続きは必要ありません。

受け入れの準備は、派遣元との労働者派遣基本契約書に基づいて進めましょう。

5:外国人を雇用するときはどうする?

外国人を雇用する場合は、在留カードや旅券(パスポート)の確認が必要です。

詳しくは、厚生労働省の公式サイトをご確認ください。

厚生労働省公式サイト:外国人の雇用

6:マイナンバーの取り扱いはどうする?

マイナンバーは特定個人情報に該当するため、社員からの収集方法や社内での扱いには細心の注意が求められます。マイナンバーを取り扱う担当者が個人番号を不正に利用したり、第三者に提供したりした場合、最大で4年以下の懲役または200万円以下の罰金が科される可能性があります。社内でのマイナンバー取扱担当者の限定や管理システムの導入などにより、情報漏えいを防ぐための適切な管理を徹底しましょう。

情報漏洩を防ぐために、「給与計算や社会保険手続きなど、法令で定められた範囲内でのみ利用する」「厳重な保管」「アクセスできる者を制限する」等、利用規約を作成しておきましょう。

会社側の入社手続きでよくあるトラブル

会社側の入社手続きでよくあるトラブル

会社側で行うべき入社手続き業務が効率化されていなかったり、理解が浅い社員が対応することによって、トラブルが発生してしまうこともあります。ここでは、入社手続き業務においてよくあるトラブルとその回避方法を解説します。

1. 労働条件の食い違い

入社手続きで最も多いトラブルのひとつが、「事前に聞いていた労働条件と実際の条件が違う」というケースです。たとえば、面接時に「残業はほとんどない」と説明されていたのに、実際は毎日のように残業が発生したり、提示された給与額が基本給と手当を含めた合計額であることが後から分かり、不信感を招くことがあります。

こうしたトラブルを防ぐには、口頭で伝えた内容を明文化し、労働条件通知書または雇用契約書に正確に記載することが重要です。特に、給与の内訳(基本給・手当・残業代など)、勤務時間、休日、勤務地、試用期間の有無や条件などは、具体的に記載する必要があります。口頭説明と書類の内容が一致しているかを必ず確認し、入社前に本人の了承を得ることで、トラブルを未然に防ぐことができます。

2. 入社前の連絡不足

採用が決定した後、入社までの間に連絡が途絶えてしまうと、新入社員は「本当に自分を歓迎しているのだろうか」「業務内容はどうなっているのだろうか」と不安を感じ、最悪の場合、入社を辞退されてしまうこともあります。特に、内定から入社までの期間が長い場合は、情報が何も届かない状態が続くことで、気持ちが離れてしまうリスクが高まります。

こうした事態を防ぐには、入社前に定期的な連絡を行い、安心感を持ってもらうことが大切です。具体的には、入社手続きに必要な書類やスケジュールの案内、初日の持ち物や集合時間の連絡、あるいは簡単な会社紹介資料の送付などが効果的です。また、可能であれば入社前オリエンテーションや懇親会を実施することで、職場に対する親近感を持ってもらいやすくなります。

3. オリエンテーションや備品の準備不足

新入社員が初出勤した際に、PCが用意されていなかったり、メールアカウントが発行されていなかったりすることは意外と多く、それが企業への不信感につながる場合もあります。初日からスムーズに業務が始められないと、本人のモチベーションが下がるだけでなく、受け入れ側の準備不足として印象を損ねる原因にもなります。

これを防ぐためには、入社日より前に、PCやアカウント、入館証、業務マニュアルなどをしっかりと準備しておく必要があります。また、初日には会社の概要説明や就業ルール、部署紹介、業務フローのオリエンテーションを実施することで、新入社員が組織の一員としてスムーズに馴染むことができます。できるだけ余裕をもって段取りを整え、受け入れの体制を整備することが、良いスタートを切るための鍵となります。

入社の手続きは迅速かつ丁寧に進めよう

入社の手続きは迅速かつ丁寧に進めよう

新入社員の入社手続きは、会社の信用に直結するため、丁寧かつ迅速な対応が求められます。また手続きに不備が生じると、行政指導が入る可能性もあります。

作業ミスを防ぎ、スムーズに手続きを完了させるためには、人事労務担当者間の連携が重要です。ぜひこの記事にあるチェックリストを活用し、業務の参考にしていただければと思います。

また、他社の入社・退職手続きの実態については、株式会社メタップスホールディングスの記事も参考にご覧ください。

入社手続きに関する不安やお悩みがある場合は、「まるごと労務」にお気軽にご相談ください。

この記事の監修者:小林 美希
この記事の監修者:小林 美希

マルゴト株式会社まるごと管理部 マネージャー
新卒で地方自治体向けのSIerに入社し、主に営業SEや校正を担当。その後福祉系ITベンチャー企業にて、一人目人事・広報として部署立ち上げに携わる。
2021年にマルゴトに入社し、まるごと人事事業部にてプロジェクトリーダー、マネージャーを経て、現在はまるごと管理部事業部のマネージャーとして従事。
事業拡大を推進し、より良いサービス提供に努めています。

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