お役立ち情報
社員の退職手続きは、人事労務担当者にとって非常に煩雑な業務です。社会保険や雇用保険など、各種手続きには期限が定められており、迅速かつ正確な処理が求められます。この記事では、労務担当者が把握すべき退職手続きの流れと、それぞれの手続きが何日以内に行う必要があるかを詳しく解説します。
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目次
会社側の退職手続きチェックリスト13項目
社員の退職手続きに必要な13項目は以下の通りです。それぞれに定められた手続き期限がありますのでご確認ください。
【会社側で行う退職手続きチェックリスト13】
No | 項目名称 | 期限 | チェック欄 |
1 | 退職届の受理 | 退職日の14日前まで | □ |
2 | 退職の手続き説明 | 退職日まで | □ |
3 | 健康保険証の回収 | 退職日まで | □ |
4 | 貸与品(パソコン、社員証、名刺、入館証)の回収 | 退職日まで | □ |
5 | 年金手帳の返却 | 退職日まで | □ |
6 | 社会保険脱退手続き | 退職日から5日以内 | □ |
7 | 雇用保険脱退手続き | 退職日から10日以内 | □ |
8 | 住民税の手続き | 退職月の翌月10日まで | □ |
9 | 健康保険資格喪失証明書送付 | 退職日からおよそ5日後~ | □ |
10 | 離職票送付 | 退職日からおよそ10日後~ | □ |
11 | 雇用保険被保険者証送付 | 退職日からおよそ10日後~ | □ |
12 | 退職証明書送付 | 退職日からおよそ10日後~ | □ |
13 | 源泉徴収票送付 | 退職日から1か月以内 | □ |
会社の退職手続き|退職日までにやるべき5項目
まず最初に、退職日までに行うべき5つの手続きを紹介します。
退職届の受理
労働者の権利として、民法627条に基づき、退職は原則として退職日の2週間前までに届け出ることで成立します。ただし、多くの企業では就業規則で1カ月前など、より早いタイミングで退職届提出を求めていることが一般的です。退職届を受理したら、速やかに退職日を確認し、必要な手続きを進めましょう。
退職の手続き説明
退職手続きを進めるにあたり、退職日までに退職者の意思を正確に確認します。以下の項目について丁寧に確認を行いましょう。
健康保険の任意継続の意思確認
再就職がすぐに決まっていない場合、退職後の健康保険について任意継続被保険者制度の利用意思を確認します。退職者は最長2年間、退職時と同じ条件で健康保険に加入し続けることが可能ですが、保険料は全額自己負担となります。この点を説明し、利用するかどうかを確認しましょう。
住民税の徴収方法の確認
退職後の住民税の納付方法について確認します。再就職先が決まっている場合は特別徴収(給与天引き)となりますが、再就職が未定の場合は本人が直接納付(普通徴収)する必要があります。必要に応じて市区町村への届出を行います。
退職証明書・離職証明書の必要有無の確認
退職者の次の就職先や失業保険の手続きに必要な書類について確認します。退職証明書は労働基準法に基づき、請求があれば遅滞なく交付する義務があります。離職証明書はハローワークでの手続きに必要となります。
退職所得の受給に関する申告書への記入
退職金を支給する場合、「退職所得の受給に関する申告書」の記入が必要です。この申告書は退職金に対する所得税の源泉徴収額を計算するために使用されます。退職者に記入方法を説明し、正確に記入されているか確認しましょう。
健康保険証の回収
退職日までに、健康保険証の回収を行います。退職者本人のものだけでなく、扶養家族分の保険証も含めて回収しましょう。健康保険・厚生年金保険資格喪失届を提出する際には、回収した保険証を添付する必要があります。
貸与品(パソコン、社員証、名刺、入館証)の回収
貸与品の回収も退職日までに行い、貸与リストと照合して漏れがないか確認しましょう。これは顧客情報や個人情報の漏洩、セキュリティリスクの防止にも役立ちます。退職者には、情報の持ち出しが法的問題を引き起こす可能性があることを明確に伝えることが重要です。また、社内で使用しているメール、クラウドストレージ、プロジェクト管理ツール、顧客管理システムなどについては、IT部門と連携し、退職後すみやかにアクセス権限を削除または変更する必要があります。
年金手帳の返却
企業の中には、入社時に年金手帳を預かり、会社側で保管している場合もあります。退職の際には、年金手帳を退職者に返却しましょう。年金手帳には基礎年金番号が記載されており、新しい職場での社会保険手続きや、国民年金への切り替えに必要となります。
会社の退職手続き|退職後に行う3つの手続き
次に、退職後に行うべき3つの手続きについて紹介します。
社会保険脱退手続き
社会保険脱退手続きは、退職翌日から5日以内に行う必要があります。「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を、事業所を管轄する年金事務所に提出し、回収した健康保険証も添付します。期限内に提出することで、退職者の保険料負担が終了します。
雇用保険脱退手続き
雇用保険脱退手続きは、退職日の翌日から10日以内に行います。「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」をハローワークに提出します。後日交付される「離職票」により退職者は失業給付手続きが可能となります。
住民税の手続き
住民税の手続きは、特別徴収(給与天引き)の場合、退職月の翌月10日までに「給与支払報告に係る給与所得異動届」を退職者の住所がある市区町村に提出しなければなりません。退職時期によって徴収方法が異なるため、注意が必要です。
- 1月から4月に退職した場合:退職月~5月分までを最後に支給される給与から一括徴収
- 5月に退職した場合:6月分までは特別徴収、7月以降は普通徴収
- 6月から12月に退職した場合:退職月分までは特別徴収、残りの税額は一括で特別徴収するか、普通徴収に切り替えるかを退職者が選択可能
また、退職前に再就職先が決まっている場合、転職先で特別徴収を継続するため、転職先との事務手続きを行う必要があります。
会社の退職手続き|退職後に渡す5つの書類
退職後に社員に渡す5つの書類について説明します。
健康保険資格喪失証明書送付
健康保険資格喪失証明書は、年金事務所に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を提出した後に交付されます。一般的には、会社が年金事務所から受け取り次第、退職者に送付します。健康保険資格喪失証明書は、退職者が国民健康保険に加入する際に必要となります。
離職票送付
離職票は、会社がハローワークに「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を提出した後に交付されます。退職者がハローワークで求職申込みをする際や、失業給付を受ける際に必要となります。
雇用保険被保険者証送付
雇用保険被保険者証は、退職者が雇用保険給付の手続きを行う際に必要な書類です。通常、入社時に会社が預かっていることが多いため、退職時に返却します。証明書には、退職者の雇用保険の加入履歴や被保険者番号が記載されており、失業給付を受ける際に必要となります。多くの場合、雇用保険被保険者証は「離職票」と一緒に退職者に送付されます。
退職証明書送付
退職証明書は、退職者からの請求があった場合に発行する義務があり、これは労働基準法で定められています。退職者にとって、次の就職先や行政手続きで必要となる場合があります。
退職証明書には、以下の項目を記載します:
- 氏名
- 使用期間
- 業務の種類
- その事業における地位
- 賃金
- 退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む)
源泉徴収票送付
源泉徴収票は、退職日から1ヶ月以内に発行され、その年の給与所得と源泉徴収税額を証明します。退職者が年内に再就職した場合、源泉徴収票は新しい勤務先での年末調整に必要です。年内に再就職しない場合は、確定申告を行うための重要な書類となります。
会社の退職手続き|よくある質問7選
会社の退職手続きの際によくある質問に関しては以下のようなものがあります。
1:ストックオプションを付与している場合はどうする?
スタートアップやベンチャーなどでよくあるケースですが、ストックオプションを付与されている社員が退職する場合、一般的にはストックオプションは退職時に失効します。しかし、退職後に一定期間内に権利行使が可能な場合もあるため、具体的に条件を確認する必要があります。また、権利行使時の税務上の影響についても、退職者に事前に説明しておくことが望ましいでしょう。
2:財形貯蓄をしている場合はどうする?
財形貯蓄を利用している社員が退職する場合、勤務先を通じた積立は不可能になります。転職先に財形貯蓄制度がない場合、継続を希望する社員には個人での継続方法を説明します。また、解約を選択する場合には、金融機関への手続き方法を案内します。特に、財形年金や財形住宅貯蓄の場合、解約時に税制上の優遇措置が受けられなくなる可能性があるため、その点についても説明する必要があるでしょう。
3:社内融資制度を利用しているときはどうする?
通常、一括返済が求められますが、状況によっては分割返済の選択肢も検討されます。一括返済が困難な場合は、退職金や未払い給与との相殺も可能です。ただし、労働基準法に基づき、相殺には退職者の同意が必要です。返済方法や期限については、合意書を取り交わすことが重要です。
4:外国籍の退職者の場合はどうする?
日本人社員と同様に雇用保険や社会保険の資格喪失届の手続きを行い、最終給与の支払いや退職証明書、源泉徴収票の発行を行います。退職者本人には、入国管理局へ契約機関に関する届出を14日以内に行うよう案内します。
5:従業員から有給休暇の申請があった場合はどうする?
残りの有給休暇日数を確認し、退職日までに消化可能か検討します。有給休暇の取得は労働者の権利であり、合理的な理由がない限り拒否することはできません。ただし、退職後に有給休暇を消化することはできないため、必要に応じて退職日を延長する対応も考えられます。
6:住民税の異動手続きが遅れた場合はどうなる?
まずは速やかに手続きを完了させることが最優先です。その後、該当する市町村に連絡し、遅延への対応法を確認します。特別徴収手続きが遅れても、通常は遡って住民税の差額調整が可能です。しかし、遅延が続くと、退職者が二重課税されたり、課税漏れが発生するリスクがあります。また、会社側が法定期限内に手続きを完了しない場合、行政から指導や罰則を受ける可能性もあります。人事担当者は、住民税異動手続きを迅速かつ確実に行うことが重要です。
7:退職者の個人情報はどうすればよい?
労働基準法では、賃金台帳や労働者名簿などは5年間の保存が義務付けられています。また、雇用保険関連書類は4年間、健康保険・厚生年金保険関連書類は2年間、源泉徴収票等は7年間の保存が必要です。個人情報保護法に基づき、適切な管理と利用目的の範囲内での取り扱いを徹底しましょう。これらの法定保存期間を遵守し、不要となった個人情報は速やかに廃棄します。
退職手続きは期限内に進めよう
社員の退職手続きは、期限を守って適切に処理することが重要です。労務担当者は多くの項目を速やかに対応しなければならず、業務負荷が大きくなります。退職処理のミスや手続き遅れの不安がある場合は、「まるごと労務」にお気軽にご相談ください。
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