採用・労務・経理に関するお役立ち情報
「スカウトを送っても返信がない」「カジュアル面談までは進むのに、応募につながらない」「最終面接のあとに内定を辞退される」
候補者が離れていくタイミングは、会社によって違います。それなのに、どこで離れているのかを確かめないまま、求人媒体を増やしたり面接の進め方を変えたりしている企業は少なくありません。
採用カスタマージャーニーは、候補者が自社を知ってから入社して定着するまでの道のりを6つのフェーズに分け、それぞれで候補者が何を考え、どこで自社と接し、何が足りずに離れていくのかを1枚にまとめる考え方です。すべてのフェーズを一度に直す必要はありません。離れているフェーズを見つけてそこから手を入れるほうが、少ない工数で数字が動きます。
この記事では、6つのフェーズごとの候補者の心理、マップの作り方5ステップ、中途採用のマップの具体例とテンプレート、まるごと人事の支援先4社の事例までを1ページにまとめました。

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目次
カスタマージャーニーとは

カスタマージャーニーとは、マーケティングにおけるフレームワークのひとつです。自社の顧客となる架空のユーザーをペルソナと呼び、自社の商品・サービスを認知してから購入に至るまでの流れを表したものをカスタマージャーニーといいます。
企業は、カスタマージャーニーを設定することで、ペルソナの行動プロセスや心理状況などを理解でき、適切なタイミングで顧客に対して商品・サービスの情報提供を行えるようになります。
これにより顧客に対して、自社の商品・サービスに対する認知向上、購買促進に繋げられるため、カスタマージャーニーは多くの企業におけるマーケティング施策として導入されているフレームワークとなっています。
採用ファネル・採用CXとの違い
3つとも候補者の動きを扱いますが、見ているものが違います。
見ているもの | わかること | 例 | |
|---|---|---|---|
採用ファネル | 各段階に残っている人数 | どこで何人減ったか | 応募100人→面接30人→内定5人 |
採用カスタマージャーニー | 候補者の心理と接点 | なぜ減ったか、何を伝えれば次に進むか | 「現場の雰囲気がわからない」まま面接に進み、辞退した |
採用CX(候補者体験) | 接点ひとつひとつの体験の質 | 候補者がその接点をどう感じたか | 日程調整の返信が遅く、会社の印象が下がった |
採用ファネルで「どこで」減っているかを見つけ、採用カスタマージャーニーで「なぜ」と「何を伝えるか」を決め、採用CXで接点ごとの質を上げる、という関係です。
採用にカスタマージャーニーが必要とされる理由
候補者が1社だけを見て入社を決めることは少なくなり、応募から入社までのあいだに、何度も他社と比べられるようになったためです。
求人媒体・スカウト・口コミサイト・SNS・社員のnoteと、候補者が企業の情報に触れる場所は増えました。求人票は知ってもらうきっかけにすぎず、候補者はその後もカジュアル面談や面接、口コミを通じて「ここで働いて大丈夫か」を確かめ続けます。
どの接点で何を伝えるかを決めていないと、面接官ごとに話す内容が違ったり、候補者が一番知りたい情報が最後まで出てこなかったりします。候補者はその途中で、ほかの会社を選びます。
採用活動におけるカスタマージャーニー
採用活動における「求職者視点」に立ったカスタマージャーニーのことを、キャンディデイト・ジャーニーと呼びます。採用活動では、ペルソナを「求職者(自社の求める人物像)」に置き換え、自社の商品・サービスを「自社の存在そのもの」に置き換えることで、採用活動にカスタマージャーニーのフレームワークを取り入れることが可能です。
採用活動でカスタマージャーニーを導入することで、自社の認知から採用までの各プロセスにおける求職者の行動プロセスや心理状況などを理解し、採用活動のフェーズに合わせた適切な情報提供を行えるようになります。
具体的には、「求職者との接点が持てるのはどのタイミングなのか」「情報提供のベストなタイミングはいつなのか」「どういう情報が求職者に魅力に感じてもらえるのか」というように、採用活動の流れや提示すべき情報を見極めることができます。
企業は、求める人材の獲得や採用活動のさらなる効率化を目的にカスタマージャーニーの導入に注目しています。

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採用カスタマージャーニーの6つのフェーズ

採用カスタマージャーニーは、認知・興味関心・理解・比較検討・意思決定・入社定着の6つのフェーズで考えます。
内定承諾で終わらせず、入社後の定着までを含めるのがポイントです。入社してすぐに「聞いていた話と違う」と辞められてしまえば、ジャーニーの途中で離れられたのと変わりません。
1. 認知|ペルソナがいる場所にだけ出る
認知フェーズで考えるべきなのは、知ってもらう人数ではなく、知ってもらう相手です。
採用したい人が使っていない媒体に出稿しても、表示回数が増えるだけで応募にはつながりません。出稿先はペルソナの情報収集チャネルから決め、スカウト媒体なら、データベースにペルソナに近い人がどれくらい登録しているかを先に確かめてください。
離脱のサイン:求人の表示回数に対して閲覧が少ない/スカウトの開封率が低い
測る数字:求人ページの閲覧数、スカウトの開封率
2. 興味・関心|「なぜあなたに声をかけたのか」を先頭に置く
候補者は求人票やスカウトを開いた最初の数行で、「自分に関係のある話か」を判断します。
会社紹介から始まる文面は、候補者にとってまだ自分の話ではないため、読み飛ばされがちです。候補者の経歴のどこを見て声をかけたのか、入社すると何ができるのかを先頭に置きましょう。スカウト文の組み立て方はスカウトメールの書き方にまとめています。
興味を持った候補者に、いきなり書類選考を求めるのもハードルになります。「まずは話を聞いてみませんか」とカジュアル面談の入口を用意しておくと、次のフェーズに進んでもらいやすくなります。
離脱のサイン:スカウトの返信率が低い/求人ページは読まれているのに応募が少ない
測る数字:スカウト返信率、求人ページからの応募率
3. 理解|面談の前に会社の説明を済ませておく
理解フェーズの候補者は、求人票には書ききれない情報を探しています。どんな人と働くのか、1日の仕事はどう進むのか、評価はどう決まるのか、といった情報です。
これをカジュアル面談の場で毎回口頭で説明していると、面談の時間が会社説明で終わってしまいます。採用ピッチ資料や社員インタビューを面談の前に渡しておけば、面談では候補者の疑問に答えることに時間を使えます。候補者から毎回聞かれる質問は、資料に先に載せておきましょう。面談で聞くことの準備には、カジュアル面談の質問例も使えます。
離脱のサイン:カジュアル面談のあとに応募しない/面談で毎回同じ質問を受ける
測る数字:カジュアル面談から応募への移行率
4. 比較・検討|懸念は聞かれる前に出す
このフェーズの候補者は、他社の選考や、今の会社に残る選択肢と並べて考えています。
残業時間、評価の決まり方、入社後のギャップなど、候補者が気にしていても面接では聞きにくいことがあります。こうした点を企業側から先に伝えると、候補者は判断材料がそろい、会社への信頼にもつながります。
もう一つ見落とされやすいのが、連絡のスピードです。日程調整の返信が遅れているあいだに、候補者の予定には他社の面接が入ります。応募者への連絡の型を決めておくと、担当者が忙しい時期でも返信が止まりません。連絡文面は応募者対応メールのテンプレート集が参考になります。
離脱のサイン:日程調整に時間がかかる/二次面接以降で辞退が増える
測る数字:選考辞退率、応募から内定までの日数
5. 意思決定|選考で評価した点を言葉にして渡す
内定を受け取った候補者は、「本当にここでいいのか」を最後に確かめています。
オファー面談を条件の説明だけで終わらせず、選考のどの場面で何を評価したのか、入社後にどんな役割を期待しているのかを具体的に伝えてください。条件の近い会社どうしで迷っている候補者にとって、自分をよく見てくれていたという実感は、決め手の一つになります。
配偶者や家族の意向が決断に影響する候補者には、働き方や休暇の制度を家族に説明しやすい資料を渡すのも一つの方法です。
離脱のサイン:内定から回答までの期間が長い/オファー面談が条件交渉だけで終わる
測る数字:内定承諾率
6. 入社・定着|入社初月の予定を先に見せる
内定承諾は、ジャーニーのゴールではありません。
内定から入社までのあいだに連絡が途絶えると、候補者の不安が大きくなり、入社前の辞退につながります。入社後も、選考で聞いていた仕事と実際の仕事がずれていれば、早い時期に次の転職を考え始めます。
入社までに一度は面談や連絡の機会をつくり、入社初月にやることと、困ったときに相談できる相手を先に伝えておくと、入社後のギャップを小さくできます。ここで聞いた入社者の声は、次の採用で認知や理解のフェーズの伝え方を直す材料になります。
離脱のサイン:入社前の辞退/入社3か月以内の離職
測る数字:入社前辞退の件数、早期離職率
採用カスタマージャーニーマップの作り方5ステップ
採用カスタマージャーニーマップは、目的を決める→人物像を決める→心理と行動を書く→接点と伝える情報を並べる→離れているフェーズから直す、の5ステップで作ります。
最初から全ポジション分を完璧に作る必要はありません。まずは採用に一番苦戦しているポジション1つで作ってみてください。
目標・ゴールの設定
まずは、自社の採用活動における目標やゴールを設定します。目標やゴールを明確化することで、目的達成に必要なプロセスや施策を具体的に検討、考案することができ、効果的な採用活動の実現に繋がります。
ペルソナの設定
採用活動におけるペルソナには、自社の求める人材となる年齢・性別・価値観・ライフスタイルなどを細かく設定したものをいいます。採用活動における目標・ゴールと同時に、ペルソナを設定することで、社内の求める人材への認識のずれがなくなり、目標・ゴールに向かった採用施策の構築が期待できます。
情報収集
カスタマージャーニーマップの作成において、採用活動に関連する情報の収集は欠かせないプロセスです。近年の採用市場、求職者の傾向、自社の採用に関するデータの調査、ペルソナに近しい自社社員へのヒアリングなど、採用活動に関連する情報はひとつでも多く収集しましょう。
多角的に情報収集することで、ペルソナの行動指針や興味関心などを推測できるようになります。「ペルソナ設定した人物が、自社の何に魅力を感じるのか」という仮説を立てたうえで採用活動を進めることが、求める人材の採用へと繋がります。
「基本構造」に落とし込む
採用活動における目標・ゴール・ペルソナを設定したら、カスタマージャーニーマップの基本構造(横軸に「フェーズ」、縦軸に「各項目」)に落とし込みましょう。以下で具体的な例を挙げます。
心理状態・行動
各フェーズにおける、ペルソナの心理状況・行動について推測します。
- 認知フェーズ:求人サイトを見ていた、今の会社を辞めたい、やりたいことがある
- 応募フェーズ:年収アップを目指したい、理想のキャリアパスがある、勤務地が近い場所がいい
- 選考フェーズ:良い条件で転職をしたい、良い企業か見極めたい
- 内定出しフェーズ:オファーが全て出たら優先順位を決めたい
タッチポイント
タッチポイントとは、ペルソナが自社のことを認知、接触する機会のことをいいます。
- 認知フェーズ:自社のホームページ、求人サイト、SNS、インターンシップ
- 応募フェーズ:自社のホームページ、求人サイト、SNS、企業説明会、インターンシップ
- 選考フェーズ:面接・面談、自社のホームページ、求人サイト、SNS、インターンシップ
- 内定出しフェーズ:電話、メール、自社のホームページ、求人サイト、SNS
課題・障壁
各フェーズにおける自社の採用課題や障壁になるものを推測します。
- 認知フェーズ:認知度、知名度、他社との差別化、業界での立ち位置
- 応募フェーズ:他社と労働条件や待遇などの条件負けへの懸念、求職者の自社への理解・期待度
- 選考フェーズ:求職者の自社への理解・期待度の調整、面接官の力量
- 内定出しフェーズ:内定辞退、他社とのオファー競争、待遇条件の魅力、内定者フォローの不足
自社の採用戦略
課題解決に向けた採用戦略を策定します。
- 認知フェーズ:求人掲載、SNS運用、企業説明会、各メディア露出、自社製品・サービスの紹介
- 応募フェーズ:魅力的な求人、他社よりも高待遇な労働条件、採用母集団の形成、企業説明会
- 選考フェーズ:カジュアル面談の実施、スキルチェック、フィット感の確認、面接プロセスの改善、候補者体験の向上
- 内定出しフェーズ:オファーレターの作成、内定者フォローアップ、入社準備の支援、内定者向けイベントの実施

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採用活動でカスタマージャーニーを導入するメリット

採用活動でカスタマージャーニーを導入するメリットを解説します。
求める人材への効果的なアプローチ
カスタマージャーニーを採用活動に導入することで、ペルソナへの効果的な施策を立案できるようになります。各フェーズにおいて適切なアプローチに取り組むことでき、効率的な採用活動の実施に繋がります。
採用ミスマッチの防止
カスタマージャーニーマップは自社の求める人物像の行動プロセスや心理状態に沿って作成されます。そのため、カスタマージャーニーマップを用いて採用に成功した人材は、適切なアプローチのもと採用されており、自社への理解やエンゲージメントなどが高い状態にあるといえます。自社への理解やエンゲージメントが高い状態で入社してもらうことは、採用後のミスマッチや早期離職の防止に繋がります。
採用施策の立案・改善
採用活動における課題や戦略を具体化、可視化できるため、自社の取り組む採用施策をより良いものへとアップデートすることができます。立案と改善を繰り返すことで、より精度の高いカスタマージャーニーマップが出来上がり、求める人材の獲得が期待できます。
採用担当者間の認識のズレ防止
企業内で複数の採用担当者が稼働している場合には、カスタマージャーニーマップをもとに採用活動に取り組むことで、どのような人材に、どのような目的で採用活動を実施しているかが明確になり、担当者間の認識のズレを防止できます。
採用コストの削減
カスタマージャーニーを活用することで、フェーズごとのタッチポイントが把握できるように、過去に実施したけれどあまり効果のなかった施策などを見直すきっかけになります。不要な施策を省くことでより効率的な採用活動に取り組めるほか、採用コスト削減にも効果が期待できるでしょう。

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カスタマージャーニーマップを作成する際の注意点

カスタマージャーニーを運用する際の注意点を解説します。
求職者の目線で考える
目標やゴール、ペルソナなどの設定を考える際に、あれもこれもとカスタマージャーニーマップに企業側の理想や主観を入れてしまいがちです。カスタマージャーニーマップは、あくまでもペルソナ(求職者)目線の施策であることを念頭に置きましょう。
最初から細部にこだわらない
最初から完璧なカスタマージャーニーマップを作るのは難しいものです。カスタマージャーニーマップを構成する最低限の項目や条件を設定できたら、あとは実践と改善を繰り返し、ブラッシュアップしていくのもひとつの方法です。反対にうまくカスタマージャーニーマップが出来上がったと思っても、実践と結果を見て適宜変更や改善、修正を行なっていくことが重要です。
カスタマージャーニーを導入して効果的な採用活動を!

採用におけるカスタマージャーニーとは、ペルソナ(求職者)が、自社を認知してから採用決定に至るまでの流れを表したものです。カスタマージャーニーのフレームワークを採用活動に導入することで、求める人材へ「どのタイミングで」「どのように魅力づけすべきか」の理解が深まり、効果的なアプローチが可能となります。
自社の採用活動の効果を最大限に引き出すためにも、カスタマージャーニーを導入してみてはいかがでしょうか。

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